記事

「雨傘運動」のXデーに近づいた香港デモ、市民の支援広がる現地のムード - ふるまいよしこ

1/2
AP

70日を越えても勢いが衰えない抗議行動

今年の9月28日、香港は2014年の雨傘運動発動から5周年を迎える。雨傘運動は同年12月15日に強制排除を受けるまで79日間、主要道路をデモ隊が占拠し続けた。

一方、今年の6月9日に100万人の市民が街に繰り出し、「逃亡犯条例改訂草案」への反対を表明してから、8月18日はちょうど71日目を迎えた。この日、香港では主催者発表で170万人の市民が「改訂案の撤回」などを叫んで街を練り歩いた。すでにこの抗議活動があの雨傘運動を上回り、歴史的大事件として記録されることはほぼ間違いない。

だが、70日目に入ったとき、雨傘運動の現場には濃い疲労感が漂っていた。政府は市民の要求(「直接選挙の不公平細則の撤回」、「足枷のない直接選挙の導入」)に対して耳を貸す姿勢すらまったく見せなくなり、運動はほぼ、出口を失っていた。路上占拠をいつまで、そしてどうやって維持するのかばかりが話題になり始め、現場は精神的にも肉体的にも疲弊していた。

そしてその焦燥感は、当初は抗議者に催涙弾を放った警察や政府に怒りを表明した市民の中にも広がった。同時に路上占拠支持が弱体化し始めたのを見計らい、親中勢力に後押しされたグループの反撃が始まり、警察が強制排除に乗り出したのだった。

だが、この「逃亡犯条例改訂草案」反対デモ(以下、反対デモ)は18日、土砂降りの中、170万人もの市民が街に繰り出し、「草案撤回」のほか、「抗議活動に対する暴乱の定義撤回」「拘束者への起訴撤回」「独立調査委員会の設置」「足枷のない普通選挙の実施」といういわゆる「五大要求」を叫んだ。

AP

日本のメディアが報道しなくても、また毎日のように警察と激しい衝突を繰り返すデモ隊がほぼ若者一色のように見えても、そして2日間も続いた国際空港の機能マヒという事態を経ても、香港市民の抗議の姿勢はまったく衰えていないことを証明した。

すでに林鄭月娥行政長官は、逃亡犯条例改訂案が「寿命を終えた」と宣言し、議会での討論スケジュールには上がっていないことを明言した。いったい、何が市民をここまでつなぎとめているのか。

警察への対応押し付けで事態がエスカレート

こうなった原因の一つ、そして最大の理由は、政府つまり行政長官が完全にその対応を間違ったことである。

林鄭月娥行政長官は「逃亡犯条例改訂案」に対して、市民が求める「撤回」という言葉を完全に無視し、「寿終正寝」というもって回ったような言い方を使った。これに対して、市民は「なぜ言葉をすり替えるのか? 誠意がない」と感じた。

AP

だいたい、同改訂案はまだ可決されておらず「寿命」すら与えられていなかったのに、この言い方はふさわしくないという批判もある。香港には寿命を終えて埋葬された死体が邪悪なキョンシーとなって生き返るという民間伝承があることを考えると、この言い方は逆に市民に「復活するのでは」と猜疑心をもたらす結果にもなった。

だが、彼女はその後一切、同改訂案の処遇について論じようとはせず、市民の要求に応えない政府に対して激化し始めた抗議活動への対応を、すべて警察、つまり司法に任せてしまった。

警察にできることは「取り締まり」だけだ。これが街で抗議行動を行う市民と警察を直接対峙させ、力で押し切ろうとする警察に対して抗議側も対抗策を講じるようになり、事態はエスカレート、つまり過激化の一途をたどることになり、その抗議活動は政府庁舎や警察本部があるアドミラルティを離れ、香港各地の市街地や住宅地でも展開されるようになった。

共同通信社

その結果、逮捕者やけが人が続出し、また警察が催涙弾、ゴム弾、ペッパー弾、ビーンバック弾(小さな麻袋に鉄球を詰めたもの)を撃ち込むのが日常化する。そうするうちに一部の知識人から「政治問題は警察では解決できない」という声が起き始め、そうした議論も進むかと思われた7月21日に、大事件が起きたのである。

白Tシャツ男の無差別襲撃事件に絡む疑念

この日、香港ではデモに絡み、大きな事件が2つ起きた。

一つは、日本メディアも大きく伝えた、中国政府香港出張事務所前の衝突。デモ隊が事務所前に掛かっている中国の徽章に黒いスプレーを吹き付けたことを、林鄭月娥行政長官は翌日の記者会見で真っ先に非難した。

だが、香港社会に激震を引き起こしたのは、そこから約30キロ離れた郊外の元朗地下鉄駅で起きた無差別襲撃事件である。正体不明の白いTシャツ姿で統一した男たち数百人が手に武器を握り、地下鉄にいた人たちを襲ったのである。同地で行われたデモ帰りの若者や駅に居合わせた人、そしてちょうどホームに停まっていた乗客、また駆けつけた区議会議員らが襲われ、妊婦を含む45人が病院に送られた。

市民が襲われている間、警察は姿を見せなかった。いや、後でわかったことだが、実際には通報を受けて警官2人がやってきたのだが多勢に無勢と悟り、「応援を呼ぶため」に現場に背を向け去っていく様子が市民のスマホに撮られていた。約40分間まったくの警備空白に置かれ、放って置かれた市民は抵抗を試みつつ恐怖でパニック状態になった。

後の記者会見で警察は、「中国政府出張所前に警察力を集中させていて初動が遅れた」と言い訳した。しかしその一方で、現場の指揮官が白いTシャツ男たちと談笑する様子、さらには事前に噂を聞きつけて通報した人が「対応済みだ」と警察が答えたといった証言が上がり始める。警察と入れ替わるように白Tシャツ男たちが2回も現場に姿を現したのもおかしい…「次に標的になるのは自分や家族かも」と怯える市民たちは警察に怒りをぶつけ始めた。

実際に事件から1ヶ月経った現在も逮捕された白Tシャツグループは30人弱。現場にいた人たちが撮った写真や動画ではっきりと顔がわかる人たちも逮捕されていない。デモ拘束者は大量にその翌日には起訴されるのに、一般市民を無差別に襲った男たちに対応はあまり格差がある…そこから「警察は市民を見殺しにするつもりだったのではないか」という声すら市民の間で流れた。

あわせて読みたい

「香港デモ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    小島慶子氏の旭日旗批判は筋違い

    和田政宗

  2. 2

    舛添氏 小泉環境相の発言に懸念

    舛添要一

  3. 3

    iPhone8~11 今買うべきはどれか

    S-MAX

  4. 4

    真実知らされぬ韓国国民を心配

    小林よしのり

  5. 5

    日本車が変えたスリランカ象文化

    にしゃんた

  6. 6

    元イクメン議員が進次郎氏に苦言

    AbemaTIMES

  7. 7

    菅長官 国民の「当たり前」重視

    菅義偉

  8. 8

    大田区の海外視察費が1800万円超

    大田区議会議員奈須りえ

  9. 9

    韓国でK-POPファンに売春を強要

    文春オンライン

  10. 10

    北の日本製レーダー 韓国に疑念

    NEWSポストセブン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。