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「無期転換認定第1号」事案から考えさせられること。

長らく「2018年問題」として業界の一部では話題になっていた話ではあったのだが、まさかこんな時期に、こんな形で「認定第1号」事案が世に公表されるとは・・・。

「契約社員だった客室乗務員(CA)の女性3人が、労働契約法上の「無期転換ルール」に基づき、無期雇用契約に転換するとの申し入れを拒否され雇い止めにあったのは無効として、KLMオランダ航空に職場復帰を求めた労働審判で、東京地裁が無期転換の成立と雇用継続を認める判断をしたことが、21日までに分かった。3人が加入する労働組合が明らかにした。言い渡しは19日付。」(日本経済新聞2019年8月21日付夕刊第12面)

「政権交代」前の平成24年8月に成立した改正労働契約法によって導入された「無期労働契約転換ルール」*1

このルールを定めた労働契約法18条の施行日が平成25年4月1日で、よくある「1年単位の有期契約の更新」の場合、淡々と平成30年まで契約を更新し、さらに漫然と「平成30年4月1日から1年の有期雇用契約」を締結してしまうと、その時点で有期契約労働者の側に無期転換を申し込むことができる権利が発生する、ということで、出てきたのが「2018年問題」というフレーズだった。

もちろん、大手企業の人事労務系の世界の人々が、そんな”漫然”とした対応をするはずはない*2、加えてここ数年は労働契約法改正時の世相とはうって変わっての好景気。
人手不足のリスクを恐れた企業サイドが「優秀な契約社員の囲い込み」に走ったこともあって、(少なくとも大手企業においては)「2018年問題」は幻に終わった・・・というのが巷の評価だったように思われるのだが*3、そこで出てきた「2019年認定第1号事件」

記事によれば、KLMオランダ航空が申込権を行使した契約社員と締結していたキャビンアテンダントとしての契約は、あくまで「2年+3年」だったようだが、それに先行する「約2か月」の訓練期間の契約との間に「有期労働契約」としての連続性を認めるかどうかについての会社側と契約社員側との評価の違いが、上記のようなドラスティックな結論を招く原因になったのだろうと思われる。

認められた法律構成によれば、2016年5月の契約更新の時点から行うことができたはずの「無期転換申し込み」が「今年1月」というタイミングになった背景に何があるのか、等々、気になるところはいろいろあるし、今回の結論はあくまで「労働審判」として出されたものであって、判決ではないので、会社からの異議申立て一本でリセットされる可能性は極めて高いだろう。

ただ、CAの社員たちが採用された2014年とはうって変わって、景気の波に乗って日本便の需要好調、というのはKLM航空とて同じようで*4、そのような状況で「5年の経験を積んだCAを雇止めする」というのは、(いかなる理由があったとしても)会社にとってはそれなりに痛手だったはず。

需要の繁閑が大きく、過去には路線撤退による整理解雇事件(ヴァリグ航空など)が起きたこともあるシビアな外資系航空会社の世界だけに、会社側にもそれなりの算段があってのことなのかもしれないけれど、今回の労働審判廷の判断の(法的観点からの)最終的な決着とともに、この判断を会社がどう消化するのか?ということにも目を向けられれば、と思っている。

*1:労働契約法の改正について~有期労働契約の新しいルールができました~参照。その後、現政権下で制定された特別措置法により、一部例外が設けられたが、労働契約法上の原則的な規定は現在に至るまで維持されている。

*2:施行直後の企業サイドの動きに関しては以下参照。k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

  また、経営法曹側からもたびたび警鐘はならされていた。k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

*3:もちろん、経営者側が弁護士どころか社労士のまっとうなアドバイスすら受けられる環境になく、労働者側にも十分知識が浸透していないような状況にある中小企業等で、契約が”漫然”と更新されていたり、「気付かれるまで放っておこう」的な発想で5年超の契約更新が引き続きなされていたりする事例があることも否定するつもりは全くない。そもそも「会社にとって欠かせない存在になっている有期雇用契約の社員」と、「one of them の存在に過ぎず紙一枚でどこで何をやらされるか分からない無期雇用契約の社員」のどちらが幸福なのか?という議論はかねてからあるところだし。

*4:成田-アムステルダム便を夏季ダイヤで週10便に増便する、というニュースも。KLMオランダ航空、2019年夏期スケジュールで成田 - アムステルダム路線を週7便から10便に増便 - SankeiBiz(サンケイビズ)

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