- 2019年08月22日 14:47
データが示す!テレビ朝日の“看板報道番組”はもはや『報ステ』ではなく『モーニングショー』

7月21日に投票票が行われた2019参議院議員選挙。テレビ報道は明らかに盛り上がりに欠けた。同時期にニュース番組もワイドショーがさかんに報道した参院選以外のテーマが多かったという理由はある。日韓摩擦、京アニ、吉本、ジャニーズetc・・・・。
それらの話題の方に関心を奪われてしまったとしても、それにしてもこの低調ぶりは何だろうかと疑問に思わざるをえない。
筆者は研究者として、また放送批評誌の編集長として、最近の国政選挙におけるテレビ報道についてウォッチしてきた。
その上で、今回の参院選報道で改めて気がついたことがある。
それは長らくテレビ報道の代表的な「顔」であり、なおかつ、テレビ朝日という会社の「看板」の報道番組であった『報道ステーション』(『報ステ』)がもはや、実態としてそうした内容を伴わなくなってしまった現状があることだ。
そして、ニュース番組である『報ステ』に替わって、ワイドショーに位置づけられる『羽鳥慎一モーニングショー』がその立場を完全に奪った印象がある。
以下、株式会社エム・データの協力を得て提供されたTVメタデータ(=いつ、どの局の、どの番組で、誰が出演して、どのような内容を、どれだけ放送したのかを記録したデータ)を集計した情報を元に、筆者が独自に分析した結果を加えて紹介したい。
まず選挙の公示から投票前日までの「選挙期間中」(2019参院選は7月4日(木)から7月20日(土)まで)における月~金までの「夕方ニュース」と「夜ニュース」の放送での参院選の放送回を筆者が独自に集計した【表1】である。2016年は13回中、2019年は12回中に何回参院選を扱ったのか数えた。

テレビ朝日の『報道ステーション』に注目すると、前回の2016参院選では、13日中12日は選挙について報道していたのに、2019参院選での選挙の報道(網かけ部分)は12日中7日という扱いになっている。
明らかにニュース番組として、選挙に対する「こだわり」や「熱意」が大きく減少したと評価するしかない。夕方ニュースの『スーパーJチャンネル』も、選挙の扱いは減少している。
選挙期間中も、あるいは選挙後も、有権者の低い投票率、とりわけ若い世代での関心の低さについて、各テレビ番組のキャスターたちは眉をひそめて「問題だ」という認識を示した。
だが、実際にはそれぞれのテレビ番組そのものが選挙について、詳しく放送していなかった実態がある。キャスターたちは自分で自分に唾するような姿勢を示したことになる。
『スーパーJチャンネル』に至って争点ごとの2~3分程度で各党の公約を紹介する程度の「シリーズ」を放送する回もあった。テレビ朝日では夕方と夜の「ニュース・報道番組」で顕著な扱いの減少が見てとれる。
これに比べると、「情報番組・ワイドショー」に分類される『羽鳥慎一モーニングショー』は9回を数え、かつ、内容も30分~50分程度、「憲法改正で9条に自衛隊明記すべきか」「憲法改正で緊急事態条項を入れるべきか」「消費増税」「年金の無駄遣い」「地方議員の年金」「皇位継承」などの争点について、憲法学者らの専門家が解説していた。しかも東京、大阪、山形などの「注目の選挙区」のVTR報道の後にその日の「争点」について深掘りするなどの報道を展開した。
(このうち「年金の無駄遣い」については、参院選シリーズと銘打った放送ではなかったが、テーマが選挙の争点にもなった年金問題につながるため、この原稿では入れることにする。)
『報ステ』の淡泊さに比べて『モーニングショー』の参院選へのこだわりは特筆に値する。その内容も見てほしい。

2度にわたる「憲法改正」の特集でスタジオの中で生放送の解説をしたのは首都大学東京の木村草太教授だ。かつて『報ステ』で古館伊知郎がメインキャスターだった時期には頻繁に同番組に出演して解説していた憲法学者だが、キャスター交代後は同番組ではあまり見なくなった。
さて、エム・データ社のメタ・データを使って分析してみよう。選挙期間中に参院選についての放送時間が多かった番組を多い順に並べたのが、以下の【グラフ3】である。
NHKの特番の放送を含めても、圧倒的に多いのが『羽鳥慎一モーニングショー』だ。

データの上でも同番組の健闘ぶりが突出している。
【グラフ4】はエム・データ社のデータを使って過去4回の参議院議員選挙について、選挙期間中の放送量を比較したグラフだ。「ニュース・報道番組」と「情報番組・ワイドショー・その他」を分けているが、2019年に「ニュース・報道番組」が大きく減っているのがわかる。

一方で「情報番組・ワイドショー・その他」の全体では2019年の参議院選挙で増加している。ところが『羽鳥慎一モーニングショー』を除いてしまうとこの番組ジャンル全体では2016年を下回ってしまい、過去最低の放送量になってしまう。
つまりデータ上も『羽鳥慎一モーニングショー』を除けば、この4回の参議院選挙で最低になってしまう。それだけ同番組が健闘したということが言える。
報道局の記者や記者経験者などが中心になって放送される「ニュース・報道番組」が参院選について「こだわり」や「使命感」を失っていると評価されるなか、一般的には「情報番組・ワイドショー」に分類される『羽鳥慎一モーニングショー』の健闘ぶりがデータの上でも明らかになった。
対照的なのが『報道ステーション』で、2016年には「ドイツ・ワイマール憲法の『教訓』」の特集などでギャラクシー大賞を受賞している。
その頃の憲法への「こだわり」はいったいどこに行ってしまったのだろう。政権党の党首である首相が「憲法改正」を争点と明言して臨んだ今回の国政選挙では、かつてのこだわりは発揮されなかったと言っていい。だが、選挙報道で「本気」で力を発揮せずして、テレビジャーナリズムとして力を発揮すべきときが他にあるのだろうか。少なくともテレビ報道を専門とする筆者としては首を傾げざるをえない。
2019年参院選におけるテレビ朝日の2つの番組の報道姿勢の変化は、テレビ報道全体を見渡しても大きな曲がり角として注目すべきものといえる。
なお、2019年参院選のテレビ報道については放送批評懇談会が発行する放送批評誌「GALAC」10月号(9月上旬発行)でも特集する予定なので関心ある方はそちらを参照してほしい。(放送批評誌「GALAC」については→ https://houkon.jp/galac-post/)
※Yahoo!ニュースからの転載


