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米国版「働き方改革」で求められるのは、請負労働者の待遇改善


By 2027, More Than Half Of Americans Could Be Contractors, How Would The Law Protect You?

日本でもすっかりお馴染みのレストラン料理宅配サービス。アメリカでもウーバーイーツをはじめドアダッシュ、グラブハブ・シームレス、インスタカートなど、レストランの料理を配達する企業が続々登場し、人々の間で幅広く浸透しています。

この料理配達サービスにおける日米の大きな違いは、チップ文化です。米国でレストランに勤務していれば、バイトでも“従業員”として全額、あるいはその日のチップ代全体からの分配を受け取ることが可能です。しかし料理配達サービスの労働者は、米労働省が配車サービスのウーバーのドライバーに対し4月にまとめたメモに当てはめれば、“請負労働者”に分類される公算が大きい。1935年成立の全国労働関係法(ワグナー法)によれば、請負労働者は「独立した契約」に基づくため、労働組合を組織できず、法的保護の対象外となります。従って、最低賃金が保証されないのは当然で、さらにチップを受け取る権利すら有していないと解釈されかねません。

この盲点を突いたのが、料理配達サービス業のドアダッシュという企業です。料理配達サービスはアプリを通じて注文し、登録したクレジットカードで支払うのが主流で、クレジットカードにはチップ記入欄が存在します。従って、企業側がチップの受取額を把握できるわけですが、これまでドアダッシュの配達員は「チップを支払われない場合の不平等に備えて」、時給6.85ドル(約740円)のみ受け取っていました。しかし同社のTony Xu最高経営責任者(CEO)は7月23日、チップを請負労働者である配達員に100%還元すると表明し、180度方向転換を図ったのです。

賃金など格差問題に配慮し競合各社が配達員へのチップ100%還元に動くなか、ソーシャルネットワーク(SNS)を通じた世間からの圧力もあり、変更せざるを得なかったのでしょう。

今回はチップの支払い方法にとどまりましたが、請負労働者の存在感が高まる環境下、企業は対応を迫られてもおかしくありません。金融危機後、従業員や設備投資、在庫などに縛られず、アプリでビジネスが展開できる事業モデルが急速に発展しました。これを「空いた時間に手軽にお小遣い稼ぎ」と捉え、就業の時間・規則に縛られない自分らしい働き方と称賛する声もあったかと存じます。

しかし、その裏にある負の側面は解消に程遠い。配車サービス会社のウーバーやリフトの請負労働者にあたる運転手は5月8日、テイク・レート(運賃に対する企業の取り分、平均20~25%)の改善を求め、一致団結し世界中でストライキを起こしました。ストだけでなく、運転手は従業員として認めるよう訴訟にも踏み切り、英仏ではこれを受け入れるような判断が出てきています。米国での訴訟の行方はというと、ウーバーは新規株式公開(IPO)前の3月、カリフォルニア州とマサチューセッツ州の運転手と2,000万ドルの支払いで和解に漕ぎつけました。その代わり、運転手を労働者と認めず、実質企業側の勝利と捉えられます。

その米国では請負労働者を始めフリーランサーが増加中で、PRコンサル会社エデルマンの調査によれば、2018年に5,730万人と労働人口の35.8%を占めていたところ、2027年には8,650万人へ増加し正規を含めた労働者の8,340万人を初めて上回る見通しです。

(作成:My Big Apple NY)

請負労働者が増加しつつある現状を見据え、民主党の急進左派(プログレッシブ)を中心に格差解消の輪が広がり、2020年の同党大統領候補のサンダース上院議員など、その旗印の下で支持が広げる状況。政治への影響力を踏まえると、米国版「働き方改革」として、フリーランサーを含めた請負労働者の待遇改善が急務と言わざるを得ません。

なお日本では、既に損保ジャパンがフリーランサーが抱える報酬トラブルに対し保険提供を発表しました。フリーランサーがシェアを広げつつある米国でも、同様の流れが起こるのでしょうか?

(カバー写真:Mapbox/Flickr)

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