- 2019年08月21日 17:42
国際金融市場の悲鳴はGOOD NEWS
1/2日欧では銀行ビジネスが成り立たなくなった
米中貿易戦争だけなら世界経済はリセッションに陥らないだろう。Brexitや香港での抗議活動も最後は経済合理的な帰結に落ち着くと思われる。習近平氏は混乱を長期化させ、香港経済の疲弊を狙い、香港の経済機能を深圳に移そうとするのではないか。武力制圧はしないだろう。
真の危険は国際金融市場の機能不全であろう。様々なネガティブイベントをきっかけとして(口実として)金融悪循環が起きれば、事態は最悪に向かう可能性が出てくる。その危険性はどれほどあるのだろうか。
図表1, 3に見るようにいつの間にか日本、欧州は長短ともにゼロ金利に陥り、長短金利差がなくなり、銀行の利ザヤは完全にフラット化or逆転し、銀行ビジネスは預貸業務においても、債券分野でも収益があげられなくなった。銀行はリスクテイクどころが、完全にリスク回避者となっている。銀行株式が、特に欧州と日本で最悪のパフォーマンス、リーマンショック時の最安値すら下回っていることが事態の深刻さを示している。
唯一米国だけは金利が正常に機能しており、今のところ銀行収益は健全である。しかし、米国が日欧化しゼロ金利に陥るのか、回避できるのか、ここ数週間の世界的長期金利の崩落、米国での逆イールド化により、米国の日欧化(Japanification, Europification )の危険が意識され始めた。それこそが現在の焦点であり、来るべきジャクソンホール会議の最大テーマになっている。

ギャンブル的債券高騰は大規模政策出動を正当化する
いうまでもなく、この不思議の国のアリス状態は、長らく金融の中枢にあった銀行の死を意味し、放置されれば大恐慌は必至であるが、放置できるわけはない。いかにして危機の深化を回避するか。
ドイツ10年国債利回りは -0.7%まで低下した。満期まで保有すれば確実に損失になるこうした投資は、為替ヘッジコストの格差などを利用した短期プレーまたはさらなる金利低下を期待した投機プレーと考えるほかはない。FT紙は8月17日付の社説で、あるデンマーク銀行が世界初のネガティブモーゲッジ(返済元本が減額される)を開始したと報じ、借り手と貸し手、投資家と企業の関係が転倒している現実を紹介し、これは危機の予兆だと論じている。もはや金融政策でできることはなく、財政出動の緊急性を主張している。
極めつけは、超長期債の異常な値上がり(金利低下)である。WSJ紙は年初来のドル建てトータルリターンは、オーストリア100年国債68%、日本40年国債28%、ドイツ30国債28%、米国30年国債27%、英国50年国債18%、とギャンブル化していることを紹介している(8月16日付、図表4)。
ギャンブル化といえば、金価格もそうかもしれない。過去の金の大相場(1980年、2011年)は、ドル下落、米国長期金利上昇とともに進行した。現在は真逆であり、金が代替通貨として有用性を強める時に起きるドル信認の低下は全く起きていないのである。

こうした債券市場発の市場急変、債券急騰・株価急落・金急騰がパニックによる(または投機筋の売り仕掛けによる)ものだとすれば、ちょっとした不安を解消させるニュース、特に政策発動で市場の大反転を引き起こす可能性がある。以下4つの問いが重要であろう。