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GO LOCAL 〜行ってわかった、地方のいま〜
テレビや雑誌など、メディアを通じて目にする地方に関するニュースたち。でも、本当にまだ見ぬ土地について知ろうと思うなら、現地に行ってみるしかない!そこで今月は、これからの「地方」の担い手たちをBLOGOS編集部が取材、さまざまな声を集めました。あらたなチャレンジを知れば、きっとあなたも出かけてみたくなるはずです。

「二度と行かない」から「離れられない場所」に 移住者を変えた福岡の魅力

  • 2019年08月22日 07:07
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BLOGOS編集部

「地方」の多くが人口減に頭を抱えるなか、毎年1万人ペースで人口が増え続けている地方都市がある。福岡市だ。

「なんで福岡ば選んだと?」。東京、地方、そして海外から福岡市に移住した人たちにその魅力と生活実態を聞いてみた。

「福岡なんて早く出て行ってやる」

福岡市で会社を立ち上げて3年。東京都など県外から、移住希望のビジネス人材を、福岡の企業に紹介する"移住×転職サービス"企業「YOUTURN」のサイト登録者が年々、増加しているという。代表取締役の中村義之さん(35)自身が福岡-東京間のUターン経験者だ。

「ステレオタイプかもしれませんが、福岡の人間には"地元大好きでずっと住んでいたいタイプ"と"早く出て行きたいタイプ"の2種類がいます」

中村さんは後者だった。「福岡は小さい町。大きな仕事がしたいし、優秀な人たちと働いて自分を成長させたい」。高校生の中村さんの胸には「こんな町早く出て行ってやる」という想いがあった。

中村さんは高校卒業後、福岡を飛び出し、関東の大学に入学。在学中からスタートアップでインターンを経験後、新卒でIT大手ディー・エヌ・エー(DeNA・東京都)に入社し、2年後には同社から分社化したベンチャー企業の経営に携わるなど、東京で精力的に活動した。

「福岡に帰るなんて1ミリも思っていませんでした」と話す中村さんだが、ハードワークがたたって体調を崩し、療養を余儀なくされた。「体調を崩し退任。自分の人生といろいろ向き合いました」。次は何をしようか。考え抜いた中村さんは「起業したい」という結論に至った。

「療養中に旅行にいろいろ行って、地方の魅力を再発見しました。IT企業を起こそうと思った時、場所なんて関係ないと考えるようになった。コストが高く生活環境も悪い東京で起業する理由はないなという思いを抱くようになりました」。

自己資金でやっていくと決めていた中村さんの目には、地方の生活費の安さも魅力的に映った。

日本の課題が最も早く訪れる場所が「地方」

起業家を歓迎する風土が整う福岡市(上)だが、県内には田園風景も広がり、地方としての課題も山積している/写真AC

中村さんが起業場所に選んだのは、少年時代を過ごした福岡市。2012年に高島宗一郎市長が「スタートアップ都市宣言」を行うなど、起業家を歓迎する風土ができあがりつつあった。一方、情報収集を進めるなかで、地方に社会問題が山積みになっている現状にも気が付いた。

「地方って課題先進国の日本でも、課題が最も早く訪れる場所ですよね。介護や医療、超高齢化社会による人口減少の問題だったり、伝統産業の衰退やシャッター商店街だったり、いろんな問題が地方にはあります。福岡市も政令指定都市ですけど、車で少し都心部から出れば目の前に田んぼが広がります。日本の9割はこういう風景だって思った時に、こっちのほうがリアルだなと思って。課題を解決する方法をサスティナブル(持続可能)な形で、事業で取り組んでいないと日本がやばいんじゃないかと思いました。それも福岡市でやる意味だと感じています」。

スタートアップで盛り上がる福岡 足りないのは"人材"だった

中村さんは福岡市の起業家が集まる場所やベンチャーキャピタルに話を聞いてまわった。「福岡市で起業する際の課題」を尋ねると、「採用」との返事が。ベンチャーやスタートアップ企業の多くが東京に集中する現状で、ローカルの転職市場に「ゼロから事業を急成長させる経験をした人材」が流動していなかった。

「どうせ人材がボトルネックになるのなら、移住したい人やUターンしたい人たちと、地方で即戦力の人材を受け入れたがっている企業をマッチングすることで、地方の発展に貢献できるんじゃないか」。そう考えた中村さんは「YOUTURN」を立ち上げた。

「地方=都落ち」は昭和・平成の発想 20〜50代の幅広い年代が地方移住を希望する時代に

会社を立ち上げた最初の1年は、サイトの開発などに費やした。2年目でようやく事業をスタート。3年目となる今年、月間で百数十人が登録してくれるまでに成長した。福岡市への移住、転職を希望する年齢層は20代の第二新卒から50代のベテランに至るまで幅広い。中村さんは「かつては『定年後のスローライフのために地方へ移住する』という考え方が多かったが、最近はより考え方がカジュアルになった。若い方のほうが地方移住に関する抵抗が少ないという印象です」と話す。

「『地方で働く=都落ち』っていう考え方って、昭和・平成までの価値観だなと思うんですよ。いまのミレニアル世代はそういう考え方から脱却しているような気がします。昔は、『自己の成長』がまずあって、次に『社会のために』だったのが、今の若い人って、最初から『社会のために』という姿勢の人も多いと思う。昔の地方はインターネットも通じない田舎という感じで、住みたくないという声も多かったでしょうが、今は4G、5Gの時代。どこに行っても仕事ができるとなると、経済的成功だけじゃなくて、地方で社会のために働くという考え方が生まれているように感じます」。

20~40代の働き盛りの世代が、地方の課題解決の現場で、力をつけ、キャリアアップしていく。中村さんは「チャレンジ精神に溢れた」移住の場を目指している。現在、YOUTURNが扱う転職先のほとんどが福岡県内の企業。「まずは福岡のような地方都市で移住、転職を体験してみる。そこから、もっとローカルな場所でチャレンジするといった横への展開を広げていきたい」と語る中村さん。血液が心臓から毛細血管を通して全身に運ばれていくように、優秀な人材が東京から福岡、大阪、札幌などの地方都市、そこからさらにローカルな現場に広がり、社会課題解決の力となるような未来を描いて事業に臨んでいる。

「すべてが一か所で済む」コンパクトな地方都市、福岡

利便性の高い都市機能と自然が両立していることが福岡の魅力だと移住者は話す(写真AC)

実際に移住した人たちはどう思っているのか。

「福岡への異動を上司に告げられたときは、ただただ驚くばかりでした」と話すのは包装資材メーカーの営業として働く森川峻輔さん(28)だ。2年前、地元の愛媛県四国中央市から福岡市に転勤した。同じ愛媛県出身の女性と結婚したばかりだった森川さんは戸惑うばかり。「旅行で福岡市を訪れたことはありましたが、実際住むことに関しては、なんの感情も湧きませんでした」。

辞令がでた当初は戸惑った森川さんだが、次第に福岡市の「コンパクトさ」に魅力を感じるように。愛媛に住んでいたころは、映画館、ボウリング場などの娯楽施設や買い物のために、隣の市や県外まで足を運ぶこともあったが、現在は、「自宅から車で30分圏内の範囲で済ませることができる」と笑顔を浮かべる。

さらに「自宅からライブ会場まで近いこともうれしいですね」と話す森川さん。福岡市には全国5大ドームの1つである福岡ヤフオク!ドーム(同市中央区)をはじめ、マリンメッセ福岡(博多区)、Zepp Fukuoka(中央区)、福岡サンパレス(博多区)などのライブ会場が複数存在する。「愛媛に住んでいたころは隣の市にライブハウスがありましたが、人気歌手やメジャーなバンドはほとんど来ず、高速で1時間程度かけて松山市や香川県、岡山県のライブハウスに行っていました。それでも、大きなライブがあるのは東京、札幌、名古屋、大阪、福岡。これまでは全国ツアーにならないとなかなか行けなかったので、福岡に来てライブによく行くようになりました」。

「二度と行かない」から「離れられない」へ

現在、LINE Fukuoka株式会社(福岡市)で働くアメリカ人のシムズ・ブランドンさん(28)は、2年前、福岡市への移住を決めた。理由を「憧れだった翻訳の仕事に就くため」と話すブランドンさん。当初は「旅行で訪れて、二度と行かない」と思うほど、福岡市の印象は悪かったという。

ブランドンさんが来日したのは2012年。静岡県浜松市で4年、愛知県名古屋市で1年、英会話教師として働いた。ブランドンさんが東京を選ばなかったのは「人が多すぎて落ち着かなかったから」だ。

福岡市を訪れたのは、3年前。友人との九州旅行がきっかけだった。旅行前にネットで情報を調べたブランドンさんが抱いた福岡市のイメージは、「バスや地下鉄などの交通網が充実していて、洗練された都市」。しかし、実際に訪れて戸惑いを覚えた。

「中心部の天神地区へ行って都会らしい景色をみたり、買い物をしたりしたかったけれど、案内板が不十分でわかりにくかった。結局、天神や福岡タワーなど、本来行きたかった観光地へ行くことができず残念だった」と話す。市内に充満するとんこつラーメンのにおいも、福岡市の印象を悪くした。

旅行を終えるころには「二度と行かない」と幻滅するほどだったという。

においが苦手だったが…(写真AC)

しかし、幼いころからの夢だった翻訳の仕事を日本で探し続けていたブランドンさんが見つけたのは、福岡市にオフィスを構える企業だった。翻訳の仕事は名古屋市や浜松市にもあったが、規模の大きさや、やりたい方向性にぴったりな仕事内容に「運命を感じた」ブランドンさんは、良い印象がなかった福岡市での就職を決意した。

就職するにあたり、福岡県内の環境を一から調べなおしたブランドンさんの目に映ったのは、第一印象とは違った福岡の姿だった。

「地下鉄などの交通の便利さ、とんこつラーメンやもつ鍋などの食文化、歴史ある太宰府天満宮の存在などに魅力を感じるようになりました」。

博多名物のもつ鍋に「日本食のなかで1番美味しいものに出会えた!」とブランドンさん(写真AC)

幅広い交友関係を持てる点にも満足している。ブランドンさんは、マッチングアプリを利用し、料理教室や日・英・韓の3か国語を学べる語学教室、ボウリングなど様々なイベントを毎週末開催。国籍に関わらず多くの人が参加する。「別の土地で同じようなイベントをしても、あまり人が集まりませんでした。福岡では国籍に関わらず多くの人が参加してくれるし、気さくな人が多い。会社以外でもたくさんの友人ができました」。

「仕事はもちろんだけど、離れられない理由は友人関係。こんなに多くの人とフランクに語り合える場所は他にないです」。

福岡の魅力は実際に住んでみないとわからない

アウトドアや運動が好きなブランドンさんは、自然と都市が隣接する「地方都市」ならではの環境を活かし、登山やジム通いなどの趣味を充実させているという。

博多名物のとんこつラーメンやもつ鍋も実際に食べてみて、虜になった。

「においがきつく、苦手に思えたとんこつラーメンでしたが、食べてみるとすごく美味しくて。最初に福岡市を訪れたときには食べずに帰ったので、もったいなかったなと思いました。もつ鍋もホルモンが好きではないので苦手でしたが、初めて食べた時は、日本食のなかで一番美味しいものに出会えた!と驚きました(笑)」。

仕事もプライベートも充実していると笑顔で語るブランドンさん。

「福岡の魅力は、観光するより実際に住んでみないとわからないことが多いです。」

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