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「香港大規模デモから透けて見える中共の独裁政治」 ―香港問題は台湾問題に直結― - 屋山太郎

 香港のデモ騒動は「1国2制度」の内容がどうなるかで、様変わりする。当初、中国政府は「吸収合併」の趣だった。香港では、議員に立候補するのもお上の承認がいった。行政長官も中国政府の〝意中〟の人物があてられ、仮に言うことを聞かなかったら即クビだろう。かつて学生たちが政治的に束縛されていることに反発し、雨傘運動が行われたが、コテンパンに叩き潰された。

 林鄭月蛾現長官は200万人の大デモの後、弾圧にかかる姿勢を見せたが、踏みとどまったのは、背後の習近平最高指導者の意を受けたからだろう。

 大衆運動の方もケチな雨傘とは違って、200万人の大デモで、いかにも体を張っている気運が分かる。習氏のほうは拘束した参加者を本国に送る条令を確定すれば、香港市民への威圧となる。次々に本国に通じる〝非常時条令〟を連発して行けば、中国本土並みの治安が確立されるだろう。香港が歩まされている道は1国1制度の道に他ならない。

 一方で中国は最近、ウイグル自治区で80~200万人規模の「職業技能教育訓練」を行った白書を発表した。政府はこれによって「テロの土壌を最大限除去した」と強弁しウイグル族への人権弾圧だとする国際世論に反論している。ペンス米副大統領も7月、施設で「思想改造」が行われていると批判した。

 中国内のキリスト教徒は全体で8,000万人いるとされるが、このうち3分の1が地下教会の信徒であるという。地下教徒はローマのバチカンの信者だが、中国政府は承認していない。ところが、最近、中国政府はバチカンとこっそり和解し地下のバチカン真正派を弾圧しているという。キリスト教の〝中国化〟と呼ばれているが、宗教の許容範囲を政府が決められることこそ独裁政治というべきだ。

 ひと頃、法輪功が市民の間で大流行(おおはやり)した。一見、健康体操に似た、日本で言えば朝のラジオ体操のようなものだった。1990年代後半から中国全土に広がったことから、政府が反体制運動に結び付きかねないと恐れた。「邪教」「異端宗教」の汚名を着せて禁止された。法輪功と判明すると虐待されて、生きたまま臓器を取り出し売られるという。そのおぞましい大量の写真を見たことだけ報告しておく。

 香港問題の処理は台湾問題に直結する。

 中国政府が香港を力でねじ伏せると決心すれば可能だろう。しかし世界中に反中国の機運が盛り上がるだろう。もちろん台湾は武力に訴えてでも独立を守るはずだ。台湾の強みは強固な軍隊を持っていることと、米国との間に軍事を含んだ「台湾関係法」という同盟条約を持っていることだ。トランプ大統領はできることなら中国を叩き潰したいと思っているから、台湾には手を出させない。その意気を込めて即座に台湾にF16を66機売却した。

 日本もまた尖閣諸島という領土を持っている。それをまたいで台湾進攻など許されない。

(令和元年8月21日付静岡新聞『論壇』より転載)

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屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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