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横浜市がカジノ誘致で「ハマのドン」と真っ向対決か

Photo by Nagatoshi Shimamura on Unsplash

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を誘致する動きが全国各地で加速する中で、首都圏の有力候補地として注目の集まっていた横浜市が、これまでの「白紙状態」を「誘致する」方針に転換した。

IRは、カジノやMICE(国際会議や展示場などの総称)、さらにはホテルなどが一体となった施設で、昨年6月に実施法が可決された。政府はIR整備を「成長戦略の柱」として位置付けており、東京五輪後の経済振興につなげていきたいとしている。

今後の予定としては、近々「カジノ管理委員会」を決めて本格的にスタートする方向で、来年には全国の候補地の中から「3ヶ所」を決め、2025年の「大阪万博」を前に開業したいとしているが、現状を見る限り、その雲行きは怪しい。

立ちはだかる「ハマのドン」の壁

現時点で候補地として手を挙げているのは大阪、愛知、和歌山、長崎、北海道などだが、本命地の一つとされていた横浜市は、冒頭でも記したように「白紙状態」と繰り返し、林文子市長(73)も誘致には消極的な姿勢を見せていた。

理由は一つ。〝ハマのドン〟との異名を持つ「横浜港運協会」の藤木幸夫氏(89)が誘致に大反対しているからである。

藤木氏は、同協会の会長を務める傍ら、地元のFMラジオ局である「FMヨコハマ」社長や「横浜スタジアム」会長、そして「横浜体育協会」名誉会長などの要職に就くなど、政財界からは〝港湾のドン〟〝ハマのドン〟と呼ばれている。政界にも顔が広く、自民党の二階俊博幹事長(80)とも親交があり、菅義偉官房長官(70)の後ろ盾とも言われている。

その藤木氏は、これまで、よほどのことがない限り表舞台には出て来ることはなかった。ところが、横浜へのカジノ誘致問題に関しては表舞台に積極的に登場、「俺の目の黒いうちはカジノを作らせない!」と言い出したのである。

「俺を殺すか、拉致するか、あるいは俺が死ぬか」

Getty Images

もちろん反対するのには理由がある。カジノの誘致先が山下公園の東側に位置する「山下埠頭」だからだ。東京ドーム10個分とも言われる広大な場所で、横浜市はそこに「山下埠頭再開発」としてカジノを誘致したいと考えていたことから、いわば〝反撃〟に出た格好だ。

同市の関係者は「2028年の完成を目指したい」と考えていた。が、藤木氏は

「カジノを作ると言うのなら、俺を殺すか、どこかに拉致するか、あるいは俺が死ぬかしか選択肢はない。俺が生きているうちは絶対に作らせない」。

とにかく吠えまくっている。

藤木氏が反対するのは、もちろん場所もあるが、「カジノを作れば家庭が崩壊する」とした上で「将来の横浜市民にカジノのような施設だけは残したくない」との持論もあった。

もっとも、その藤木氏も当初はカジノ誘致には積極的だったと言われる。それが反対に回った背景には、「想像していた」部分と、「現実の部分」に大きな隔たりがあったのかもしれない。

「横浜でのカジノ構想に最も積極的だったのはトランプ米大統領の有力支援者と言われる、米カジノ王のアデルソン会長率いる『ラスベガス・サンズ』だったそうです。しかし、進出の計画を聞いているうち、単に利用されるだけだと分かり嫌気がさしたのかもしれませんね」(事情筋)

と言う声もあったが、真意は謎である。

年間1400億円の増収か 背に腹は代えられぬ横浜市長

Getty Images

とはいえ、「国内初のカジノ解禁」の誘致先として横浜市が魅力的な場所であることは言うまでもない。

すでに香港のIR事業者メルコリゾーツ&エンターテインメントが食指を伸ばしている。同社のローレンス・ホー会長兼CEOは、「マカオのカジノ王」と称されるスタンレー・ホー氏の息子。すでに、Jリーグの横浜F・マリノスのスポンサーとして契約を結ぶなど、虎視眈々とその日を待っている。

「ホー会長は、横浜でのカジノ構想に興味を抱いている」そうで、周囲には「少なくとも100億ドル(日本円で約1兆1000億円)、場合によっては、それ以上の投資も考えている」と意欲を見せているというから、日本人の考えることとは、ちょっとケタが違っているようだ。

この「投資額」を聞かされたら、さすがの横浜市も「ウェルカム」だろう。いつまでも白紙状態なんて言っていられない。しかも、来年の候補地決定に間に合わせるためには、今が誘致を表明するタイムリミットだったのだ。

誘致したい裏事情としては「歳出はどんどん伸び続けるが、歳入は横ばい」と言った横浜市の財政状況がある。現時点での推計によると、8年後の2027年までに660億円もの収入不足が予想されている。

しかし、ここでカジノが誘致できれば、入場料収入や納付金収入などで年間600〜1400億円もの増収効果が見込めるという。まさに「一発逆転」だ。それだけに、横浜市の現場は「例え藤木氏が反対していても、背に腹は代えられない」と言うことだろう。

横浜市民の大多数も反対

写真AC

反対しているのは藤木氏だけではない。実は横浜市民の大多数が反対だと言われる。そのため横浜市では住民説明会を開催し、カジノによる経済的効果をアピールしていると言うのだが、さすがに茨の道は続いているようだ。

ただ、林市長も、当初は「補正予算案を市議会に提出する予定はない」と言い続けてきたが、ここにきて9月2日に開会の市会第3回定例会に、2億6000万円の一般会計補正予算案を提出することを固めた。今後、議会の承認を得られたら事業者の公募、選定に向けた準備に一刻も早く入りたいとしている。

いずれにしても、これまで横浜市民はもちろん藤木氏の猛反対もあって「立ち往生」していたカジノ誘致だったが、一気に突き進むことになるのか?

「カジノには夢がない」とする藤木氏は、カジノ抜きの再開発を提案する新たな組織として「横浜港ハーバーリゾート協会」を立ち上げ、対抗していく構えだ。その一つとして米ディズニーグループと組んでの新構想もあるようだが、カジノ誘致を進めたい林市長は、藤木氏の考えに対して反旗を翻した格好なだけに、なりゆきによっては意地と意地とのぶつかり合いに発展していきそうな気配もする。

ちなみに、IR整備法では、問題視されている「ギャンブル依存症対策」として、日本人からは入場料6000円を徴収し、入場回数も週3回、月10回までとする〝制限〟を設けていると言うのだが…。

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