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【読書感想】ふしぎな県境 - 歩ける、またげる、愉しめる

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カラー版 - ふしぎな県境 - 歩ける、またげる、愉しめる (中公新書)
作者: 西村まさゆき
出版社/メーカー: 中央公論新社
発売日: 2018/05/18
メディア: 新書
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カラー版 ふしぎな県境 歩ける、またげる、愉しめる (中公新書)
作者: 西村まさゆき
出版社/メーカー: 中央公論新社
発売日: 2019/08/09
メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
地図を詳しく見ていくと、日本各地に複雑怪奇な県境が存在する。ショッピングセンターの売り場を分断している、一つの村が丸ごと他県に囲まれている、盲腸県境が幅1メートル×長さ8キロにわたって細長く続く、実際の県境からだいぶ離れたところに「県境」バス停がある…。こんな県境が、なぜ生まれたのか?実際に行ってみると何があるのか?地元の人は不便ではないのか?県境マニアが全国13ヵ所の県境を検証。

 世の中には、多くの人が「なぜそれに?」と思うようなものに興味を持ったり、愛着を感じたりする人がいるのです。それも、少なからず。

 たとえば、県境マニア(そういうマニアがいるんです)が「三県境」と読んでいるポイントがある。その名のとおり三つの県が境目を接する場所のことで、日本全国に48か所あるといわれている(本書では都府県境も含め、県境と総称する)。

 三県境は、そのほとんどが水上や山の上にあるため、実際に行くことはもちろん、近づいて見るといったことも難しい。

 しかし、そんな三県境のなかでも、渡良瀬遊水池そばにある群馬、埼玉、栃木の三県境は、日本で唯一、鉄道駅から歩いて数分で行くことができるため「歩いて気軽に行ける三県境」として県境マニアの聖地になっている。

 群馬、埼玉、栃木の端っこが接する場所は、なんの変哲もないただの田んぼのあぜ道でしかないが、あぜ道をまたいで歩けば、たったの二歩で埼玉、栃木、群馬をわたり歩くことができる不思議な場所だ。
 ところが、県境マニアはそこで満足し「珍しい場所にきたな」では終わらない。

 なぜこんなヘンテコな境目が引かれるようになったのか? に思いをめぐらす。

 群馬、埼玉、栃木の三県境について言えば、そこはもともと川の上であった。しかし、あの有名な足尾銅山鉱毒事件で発生した鉱毒対策で設けられた渡良瀬遊水池が造成されるさい、もともと県境が引かれていた河川の流路が変わったため、田んぼの中に突然三県境が出現した。つまり県境が昔の河川の痕跡として存在していているのである。

 県境は一見、空間と空間を分け隔てているだけのように見えるが、なぜそこに県境が引かれるようになったのかを考えると、たちまち時間を背負った存在にもなり、深い意味が出てくる。

 県境マニアは、県の境界線の、この線からそれぞれの県の広大な県土が始まっていること、そしてその境界線の歴史、そこに関わる人々の営みに思いをはせ、ただの一筋の境界線を地理や歴史をも含めた、立体的な魅力を持った「境目」として見ている。

 「県境」と言っても、ふだんの生活で意識することがあるとすれば、車で移動していて、「○○県に、入りました」というカーナビのメッセージを聞いたときくらいなんですよね。場所によっては、一度県境をこえたあとに、元の県に一度戻ってくることもあって、ちょっと面白いな、と思うこともあります。

 この本のなかにも、県境が複雑に入り組んでいる道でカーナビはどれだけあわただしくアナウンスをするのか、を試す企画が出てきます。

 あとは、九州人的には、佐賀県から福岡県に入ると、急に道路が立派になったり、トンネル内が明るくなったりして、「やっぱり県の経済格差ってあるのだなあ」と思い知らされます。

 県境にしても国境にしても、基本的には人間が線引きしているものではあるのですが、その「あちら側とこちら側」で世界が変わってしまうこともあるのです。

 国境なんて、その線を超えてしまっただけで、命の危険にさらされることもあるわけですし。

 もちろん、日本の県境をこえたからといって、逮捕されたり撃たれたり、ということはないのですが、「境界の近く」で生活している人たちにとっては、いろんな面倒事があるみたいです。

 京都府木津川市と奈良県奈良市の境界線上に建てられており、建物のちょうど真ん中あたりが県境になっているという「イオンモール高の原」の話。

 この店内には県境を示す線がタイルで引かれているそうです。

 ところで、県境の上にあるショップで、もしなんらかの犯罪があった場合、駆けつけるのは奈良県警なのか京都府警なのか、気になるところだ。県境上にあるショップの店員さんに聞いてみた。

ぼく「すみません、このラインが県境だってのはご存じでしたか?」

店員さん「あ、はい、こっちが奈良県でこっちが京都府ですね」

ぼく「あの、たとえばなんですが、もし万引きなんかが起きたら奈良県警、京都府警、どちらの警官が駆けつけるんでしょうか?」

店員さん「んー、どうなんやろなぁ……ショッピングモールの住所は京都府になってるから、木津署に連絡するんやないですかね?」

ぼく「もし万引き犯が奈良県側にダーッと走っていったら、駅前の奈良県警の交番は見て見ぬふりしますかね?」

店員さん「いやーそれはないでしょう(笑)さすがに目の前犯人走ってたら捕まえると思いますよー」

ぼく「ですよねー(笑)」


 警官が犯罪者をみすみす見逃すわけがない。愚問だった。県境の興奮でどうかしていたのだ。県境は心を惑わせる。ぼくにとって県境は煩悩かもしれない。

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