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なぜLINEは「やめられないアプリ」になったのか

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自分だけ送らなければ「失礼」と感じて購入する

LINEでも、相手から有料のスタンプが送られてきたり、プレゼントされたりすれば、「知り合いのあの人が、私のために尽力・出費してくれたのだから、自分もすべきでは?」と考えやすい。しかも、やり取りするのがクローズドな環境なので、「周りのみんなが有料のスタンプを送り合っているのに、自分だけが送らなければ『失礼』だし『仲間はずれ』になるかもしれない」……。それぐらいならと、時として有料のスタンプも買うでしょう。

ちなみにこれは、デートでも同じ。男性に、「牛窪さん、初デートから公平にワリカンでいいですよね」と相談を受けることも多いのですが、私はよくこう答えます。

「うーん、悪くはないけど、次のデートにつながる可能性は低くなりますよ」

なぜなら、初デートで奢ってあげれば、返報性の原理によって、相手は少なからず「次は、私が奢るべきかな」と考えやすい。奢られた女性は、おのずと次のデートを「断りにくく」なるのです。

「既読」表示のせいでストレスがたまる

もっともLINEも、いいことずくめではありません。これまで、第三者にアカウントが「のっとられる」といった事件が起きたほか、クローズドなコミュニティならではの、いくつかの社会問題が指摘されてきました。たとえば、「LINEいじめ」や「既読スルー」です。

後者は2014年に流行語として広まり、女子中高生の間では「KS」の略称でも呼ばれました。「既読」は、LINEでメッセージを送信すると、相手に読まれた時点で送信者の画面に表示される「既読」の文字のこと。

他にも似た機能を持つアプリはありますが、LINEはとくに「チャット」感覚なので、送ったほうは「既読」表示後にしばらく返信が来ないと、ついイライラ。送られたほうも、「メッセージを読むと『既読』がつくから、早くレス(レスポンス)しなきゃ」と焦ります。

LINE上のグループでも同じ。みんながメッセージをやり取りするなかで、自分だけが「既読」と表示されながらレスしないままだと、どうもバツが悪い。でも常に「即レス(即時的にレスポンスする)」しようとして、メッセージの通知音をオンにしておくと、しょっちゅう「ピンポーン」などとスマホから鳴り響き、そのたびにドキッとして心臓に悪い。次第に「面倒」「ストレス」と感じる男女が増え、一時は「LINE疲れ」も流行語になりました。

「今さら止められない」状況になっている

そこで若者たちは、「裏ワザ」を編み出したのです。私も女子高生たちから、「知ってます?『機内モード』にしたまま読むと、その間は既読がつかないんですよ」や「送られたメッセージ画面を『長押し』したまま内容を読むと、既読がつかないみたい」など、あの手この手の裏ワザを聞かされました。ただし彼女たちは、裏でこうも嘆いていました。

「読む間、ずっと画面を押し続けてなきゃいけないから、腱鞘炎になりそう」
「『そこまでKSが怖いんだ、私』と思うと、気分が萎えちゃうときもあるんです」

私のようにLINEを利用しない人は、往々にして「だったら、止めればいいのでは?」と考えます。でも、若者たちは言うのです。

「今さら止められない」

止めてしまったら、グループの皆が当たり前のように得ている情報が、自分にだけ入ってこなくなる。これは若者に限りません。今や仕事上の飲み会や子どもの習い事、マンションの自治会連絡も、LINE経由でやり取りするケースが増えています。「当たり前」と思って享受してきたその情報を突然、自分だけが得られなくなれば、かなり渇望感を感じるでしょう。朝起きたらなぜか、自分の家だけ蛇口から水が出なくなっていた、というのと同じ。便利に慣れると、人はなかなか途中で止められないのです。

「八百屋」が「ショッピングモール」になった状態

近年は、さらに「LINEを止めにくい」状況が拡がりました。最大の理由は、2012年7月から始まった、LINEの「プラットフォーム化」。すなわち、LINEが単なるコミュニケーションアプリの枠を超え、外部のさまざまなコンテンツを展開する広場になったこと。

いわば、「八百屋」を本業としてスタートした小さな店が、やがて面積をドンと増やし、書店や衣料品店、雑貨店、飲食店など複数の業種が入居する「ショッピングモール」へと拡大したようなイメージです。アップルも、今や「App Store」や「iTunes」において、自社製品だけでなく他社のアプリやコンテンツ(音楽や動画など)を販売していますよね。

田中道昭・牛窪恵『なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか? アマゾンに勝つ! 日本企業のすごいマーケティング』(光文社新書)

LINEも同じ。2012年に「プラットフォーム宣言」をした後は、友達や知人同士で、ゲームや占い、音楽、クーポンなどのサービスをともに利用できるようにしたほか、アーティストのライブ配信を無料で視聴できる「LINE LIVE」やLINE経由でショッピングすることでポイントが貯まる「LINEショッピング」など、さまざまな外部パートナーとの提携を推進してきました。これらを日常的に利用していれば、ますますその「モール(LINE)」から離れられなくなるはずです。

さらに強力なサービスが、2014年12月にリリースした、モバイル送金・決済の「LINE Pay」。LINEのアプリを通じ、ユーザー間での送金・割り勘機能や、提携店舗などでの決済を簡単に行えるサービスです。18年12月の時点で、すでに国内登録ユーザーの数は3000万人を超えています。今後、日本でも急速に電子決済が進むなかで、LINE Payをより日常的に利用する男女が増えれば、従来以上に「今さらLINEを止められない」状況になるでしょう。

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牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター
1968年東京生まれ。マーケティング会社インフィニティ代表取締役。立教大学大学院にて、修士(経営管理学/MBA)取得。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。財務省・財政制度等審議会専門委員、内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)などがある。
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(マーケティングライター 牛窪 恵)

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