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5億円以上の別荘が飛ぶように売れる北海道ニセコ お金持ちの外国人激増の一方で日本人離れも

  • 2019年08月20日 07:13
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共同通信社

札幌から車で約2時間、人口1万人の小さな町に世界中の富裕層が熱視線を注いでいる。北海道の「ニセコ(NISEKO)」地区。良質なパウダースノー(新雪の粉雪)が海外から人気を集め、2000年代以降、日本屈指の国際リゾート地となった。

5億円以上する別荘がずらりと建ち並び、スーパーマーケットではウニやカニなどの高級食材が飛ぶように売れていくーー。バブルさながらの好景気だが、その買い主は外国の富裕層。外国籍の住民はこの10年間で約4倍に増え、「ゲレンデは外国人だらけで日本人の姿は見かけない」との声も上がる。現場を歩いた。【石川奈津美】

「交番」よりも大きな字で「KOBAN」と表示されていた(BLOGOS編集部)

「KOBAN」「FOR RENT」「JAPANESE RESTAURANT」――。

日本語よりも大きな字で英語が書かれた看板がいたるところに掲げられている。ここは北海道西部に位置する人口1万人の小さな町・北海道倶知安(くっちゃん)町のひらふ地区だ。2000年代以降、「NISEKO」として知られ世界中からの旅行客を集める国内屈指の高級スキーリゾート地になった。

ゲレンデへと続く目抜き通りに面するスポーツショップに入ると、スタッフからいきなり英語で話しかけられた。

ゲレンデへと続くひらふ地区の目抜き通り(BLOGOS編集部)

店頭に立つのは、スポーツショップを経営するオーストラリア人のジャスティン・グレィビスさん(47)。

アメリカやヨーロッパなど世界中の雪山を旅した後、バイクショップをニセコで経営する友人から現在の仕事を紹介されたといい、4年前に移住した。

オーストラリア人のジャスティンさん(BLOGOS編集部)

「数多くの雪山に旅行で訪れたが、どこもすでにホテルや観光施設などが開発されリゾートとして完成していた。ニセコのように開発が現在進行形で進んでいるリゾートは世界を見渡してもありません」と移住の決め手を語る。

ショップ利用客のうち日本人はほぼゼロ。ここでは英語が“公用語”だ。「日本語ができなくて困るのは、行政の手続きで英語の書類がない時くらい。それ以外は、買い物をするときも英語のまま生活できるので快適です」と話す。

10年間で外国人の住民は4倍に急増

町の人口1万6693人(2019年1月末時点)のうち、外国籍の住民は2048人と過去最高の12%となった。日本人は2009年からの10年間で、1万4968人から1万4645人へと微減しているが、外国人は449人から2048人へと約4倍の増加。いま日本の地方では人口減少が共通の課題となっている中、この町全体としては約1000人増えている。

BLOGOS編集部

同町観光課の沼田尚也さんによると、訪日・在住外国人の人口の増加はもともと町役場で働いていたオーストラリア人が「パウダースノー」の魅力を発信し、口コミで増え始めたことがきっかけだという。

倶知安町観光課の沼田尚也さん(BLOGOS編集部)

「当初は旅行者も移住者もオーストラリア人が圧倒的多数を占めていたが、現在は香港やシンガポール、タイなどアジアからの移住者や投資も高まってきています。外資ホテルの建築数は2006年から2019年までの間に約90倍にも増えました」(沼田さん)。

BLOGOS編集部

ゴミ捨てのマナー違反で地元住民とトラブルも

文化や言葉の違いで発生した諸問題にも町は細かな対応を重ねてきた。

たとえば、日常生活をする際に文化の違いが現れやすい「ゴミ」。

ひらふ地区では以前、「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」「産業廃棄物」などの区別がわからず、ゴミの日になると全く分別されていない様々なゴミが山のように回収場所に捨てられていたという。

日本人の住民の反発の声もあり、町はエリアごとに分けていたゴミ回収場所を撤廃。現在は、6ヶ月以上滞在する住民を対象に町営で戸別の回収を行うほか、ホテルなどの事業者には清掃センターに直接搬入や収集業者と委託契約するように指示している。

また、スキーやスノーボードなどでは転倒による怪我がつきものだ。緊急時に119番で呼ばれ救急車が出動したのはいいものの、現場でお互いの言葉が通じずコミュニケーションが図れないなど、命にかかわる重大な状況に陥る可能性もあった。

町は2006年に日英の通訳が可能な医療従事者配備に対する補助事業を開始。2018年からはスキー場がオープンする8~22時の間、4人の通訳が常駐する体制を組むほか、iPadを利用した通訳クラウドサービスの導入補助も行っている。

また、医師、看護師含めスタッフ全員が日英のバイリンガル対応可能な民間の医療機関「ニセコインターナショナルクリニック」が2017年にオープン。町だけではなく、民間でも外国人旅行者や移住者にとってのサービス充実が進んでいる。

5万円のウニ、1万円のいちごが飛ぶように売れる

こうした町を挙げた環境整備により、日本屈指の国際リゾート地となったニセコから学ぼうと、国内の自治体からも多くの視察団が訪れるようになった。

しかし、地元で長らく暮らしてきた日本人の生活の暮らしぶりに、影を落としている側面があることも事実。そのひとつが物価や不動産の高騰だ。

1万人規模の小さな町に大型スーパーマーケットが3店営業するという異例の事態となっているが、これらのスーパーは冬場になると超高級スーパーへと変貌。店頭には、「5万円のウニ」や「1万円のホワイトいちご」など高級品がずらりと並ぶという。

地元に長く住む50代の女性は「『こんな高いウニ、誰が買うんだろうね』と近所の人と話していたそばから、外国語を話している家族がさっと現れて、ほとんど値段も見ないで買い物カゴの中に入れていく姿を見たときは、初めはびっくりしました」と話す。

不動産価格も、ほとんどの日本人には憧れることすらできないほどの値段で販売されている。

ひらふ地区の不動産購入価格は、1980年代ごろはコンドミニアム1棟が2000万円ほどだったというが、現在はペントハウス1部屋で5〜8億円が平均だ。

ひらふ地区には高級コンドミニアムがずらりと立ち並ぶ(BLOGOS編集部)

短期滞在の場合でも、冬場は1泊40〜50万円で1週間以上からが相場だといい、同エリアで不動産販売を手がける男性は「今では、不動産の購入で連絡してくる中で日本人はまずいない。ゲレンデでは、日本人を探す方が難しいと言われているぐらい外国人だらけです」と話す。

また、ひらふ地区のようなリゾートエリアの不動産価格の高騰は、日本人の大半が暮らす市街地にも影響し始めている。市街地ではリゾートエリアのホテルで働くスタッフ向けの住宅需要が高まり、従業員宿舎の建設が急増。

それに伴い、市街地のアパートの月額平均賃貸は約5〜6万円と札幌の4万円を超えるまでになった。同町で約30年間カフェを経営する女性(59)は「日本人スタッフを採用するのが年々難しくなってきています」と話す。

パウダースノーはもうない?町は閑散期の観光客増狙う

今後、現在建設中の大型ホテルが次々に開業を迎えるほか、町内の「倶知安駅」は2030年には北海道新幹線の新駅の停車駅となる予定で、さらに観光客が増えることが予想される。

一方で、雪は自然の産物であり、雪山の広さには限りがあるのも事実だ。「ゲレンデはいつも人でごった返すようになり、パウダースノー(新雪の粉雪)はない」との声も上がり、リフトの待ち時間などによりユーザーの満足度が下がることで観光客離れが進むことも懸念される。

その打開策として町が狙うのは閑散期の観光客増だ。冬季(12~3月)に約半数の観光客が集中し、最も少ない秋(10~11月)は全体の約5%と大きな開きがある。

BLOGOS編集部

沼田さんは話す。「雪山を新たに切り拓き、スキー場を造成するという案も確かにあります。しかし、環境への配慮という観点からも慎重に検討されています。夏場にはラフティングや自転車イベントを実施するなどして集客に力を入れるなど、“オーバーツーリズム”にならないよう、バランスを見ながら持続的可能な観光を模索していきたいと思っています」。

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