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焦点:「劇薬」のマイナス金利、通貨高抑制で魅力感じる中銀も


[東京/ウェリントン 14日 ロイター] - マイナス金利政策は、欧州や日本など慢性的な物価低迷に苦しむ地域や国だけが採用する非伝統的な戦略だとみなされてきたが、足元では好ましくない通貨高への対応策として魅力を感じる中央銀行もいくつか出てきている。

アジアでは米中貿易摩擦の悪影響が拡大する中で、オーストラリアからインド、タイまで積極的な利下げに踏み切る動きが見受けられる。

特にニュージーランド準備銀行(RBNZ)は7日に50ベーシスポイント(bp)という予想外の大幅利下げに踏み切ってニュージーランドドルを3年半ぶりの安値に押し下げた後、オア総裁がマイナス金利導入の可能性に言及した。RBNZと言えば、約30年前に物価目標を採用したことで、先駆的な金融政策を打ち出す中央銀行として知られている。

副作用の大きさから否定的な意見もあるマイナス金利を検討する動きが広がっていることは、世界中の中銀が抱える悩みの深刻さを如実に物語る。世界的な景気減速に見舞われている以上、為替レートの上昇で自国経済が打撃を受けるのを防ぐためには「劇薬」にも頼らざるを得ないからだ。

米中摩擦による世界的なサプライチェーンと製造業活動の打撃を受けて、アジア諸国が依存する輸出の伸びは減速し、一部の中銀は通貨安を通じた輸出底上げを期待して利下げを実施。ただこうした措置は通貨切り下げ競争への懸念を生み出し、より過激な政策手段を考慮する当局者が出てきている。

OMファイナンシャルのウェリントン駐在通貨・債券ディーラー、スチュアート・イブ氏は「RBNZが積極的に行動しているのは明らかだ。金融政策は世界的に緩和サイクルに入っている。RBNZだけでなくだれもが同じこと(緩和)に目を向けている」と述べた。

もっともマイナス金利政策を実行している欧州と日本の状況を詳しく見れば、最大限に評価しても成功と失敗が相半ばといったところだ。

<効果に疑問>

つい最近まで、急成長を続けるアジア諸国のほとんどの中銀にとって、マイナス金利のような非伝統的政策は遠い世界の話だった。相対的に金利水準が高く、景気悪化時の利下げ余地が大きかったからだ。

実際、米連邦準備理事会(FRB)が昨年終盤にハト派姿勢に転じる前は、大規模な資金流出につながりかねない急ピッチの利下げでさえも危険だと考えられていた。

しかし貿易摩擦と市場の混乱により、アジアの一部、とりわけ貿易依存度が大きい国は、輸出を損なう為替レートの高騰を防ぐ方法に目を向けるようになっている。そうした目標達成には、米国との金利差を広げて自国通貨の上昇を抑えるマイナス金利は有効なように見える。

ウェリントンのエコノミストで元RBNZ高官のマイケル・レデル氏は「マイナス金利がもたらす大きな作用は、為替レートの(上昇)圧力を取り除くことにある」と指摘した。

この尺度を用いれば、欧州ではある程度の成功を収めたと言える。欧州中央銀行(ECB)が5年前にマイナス金利を採用して以来、ユーロ/ドルは17%ほど下落している。

半面、日銀のマイナス金利政策では別の結果が生じた。円安効果は長続きせず、過去5カ月間だけでも円はドルに対して20%近くも上昇した。

経済成長や物価に及ぼす影響となれば、効果はさらにあいまいになる。ユーロ圏で2014年6月のマイナス金利導入時に2.8%だった企業の平均借り入れコストは、今年6月に1.6%まで下がっている。しかし当初高まった経済成長率は今年4─6月で前期比0.2%とほぼ横ばい状態。物価上昇率はECBが目標とする2%弱に13年以降一度も達しておらず、7月は1.1%と17カ月ぶりの低い伸びになった。

日本でもマイナス金利が採用された16年1月に0.80%だった銀行の貸出金利は今年6月でも0.75%とそれほど低下していない。4─6月の成長率は前期比でわずか0.4%に低下し、6月の物価上昇率は0.6%と、日銀が目指す2%になお程遠い。

<副作用>

マイナス金利を採用しようとする場合、金融機関の収益に与える痛手が最大の妨げになってもおかしくない。

日本では銀行が伝統的な融資業務以外の分野にほとんど進出できていないため、マイナス金利による痛みは顕著だ。業界のプレーヤーが多過ぎて競争が激化し、多くの銀行は貸出金利をゼロ近くに引き下げることを余儀なくされている。

日銀も今年4月、企業による借り入れが現在のペースで減少し続ければ、地銀の60%近くは今後10年で決算が純損失に転落すると警鐘を鳴らした。

マイナス金利に対する政治的な反発も強いだろう。日銀は銀行業界だけでなく、預金にも手数料が課せられると誤解した家計からも批判を浴びている。

またFRBの当局者はマイナス金利について、政治面の人気のなさや効果が乏しい公算が大きい点を理由に挙げて、否定的な見解を示している。

日銀審議委員を務めた慶応大学の白井さゆり教授は「マイナス金利のような非伝統的政策を巡る中銀当局者間の賛否に関するコンセンサスは存在しない。マイナス金利と為替の動きの相関性も不明瞭だ。はっきりしているのは、マイナス金利の銀行セクターに対する負の影響が非常に大きい半面、総需要拡大効果は小さいとみられることだ」と説明した。

(Leika Kihara、Charlotte Greenfield記者)

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