- 2019年08月19日 15:15
女子高生監禁陵辱殺人「野獣に人権はない」
2/2「加害者の名前も公表せよ!」の意味
もちろん花田さんも少年法について学び、実名報道がどれだけハードルの高いことか充分に理解していた。その迷いが、「加害者の名前も公表せよ!」というタイトルに表れている。歯切れのよさで知られた花田さんのいつものタイトルなら、「加害少年の実名を公表する」とか「実名を明らかにする」と言い切るはずだ。「公表せよ!」では、誰に向かって言っているのか判然としない。
松井 清人『異端者たちが時代をつくる』プレジデント社
タイトルの校了は記事よりも先だから、記事で実名を報じても報じなくても通じるタイトルになっている。いま改めてこのタイトルを見ると、ギリギリまでゲラを目の前に広げて熟考していた花田さんの胸中が読み取れる思いがする。
<略>
読者はどう受け止めたか
実名報道から約1カ月後の5月18日号に、読者からの投稿を集めた「実名報道 私はこう考える」を掲載した。そのいくつかを紹介する。
〈私は大阪に住む27歳のOLで、被害者の女の子とは一面識もない人間です。立場も境遇も、何も共通点すらありません。それでもこの事件は、人間として絶対に許せない。激しい怒りを感じ続けてきました。
マスコミも誰も、善人ぶってはっきり言わないけど、奴らは全員40日かけてなぶり殺しにすべきです。これ以上ない地獄を味わわせてやるべきです。本当に悔しくて涙が出てきます。奴らにも、奴らを許す世間にも。
正直言って、こんな事を考えたりするのは好きじゃないです。夢を食べて生きていたいし、何も知らないで楽しく生きていけたらと思っていました。そんな私がこんなふうに手紙を書き、先週は「性暴力を許さない女たちの会」という集まりにも行ってきました。それほど大きなショックだったのです、この事件は。私は今、独身ですが、将来男の子を産むのが怖い。ちゃんと育てる自信がないのです。(大阪府)〉
全ての大人たちよ。もっと怒りましょう
〈犯人の実名報道、よくやってくださいました。
これがもし我が娘であったなら、私は必ず親としての弔い合戦をせずにはおきません。たとえ自分の命にかえてでも。そうでなければ、あの世で娘に合わす顔がないではありませんか。「かたきは取ってやったよ」と言えぬではありませんか。
国家がそれをどうしても禁ずると言うのなら、納得のいく刑罰が加えられねばなりません。少年法を改正すべきです。
全ての大人たちよ。もっと怒りましょう。真剣に。そうしないと私達は、自分たちの社会すら守れなくなるでしょう。(愛知県)〉
〈文春を見直しました。良識派ぶって実名を出さない朝日なんかよりよほど国民の正義感に応えているし、少年法で刑罰が軽くなってしまう今回の事件においては、実名を出してのキャンペーンはマスコミとしても義務だとさえ思います。
法律が少年の「保護」を言うのなら、せめてマスコミは声なき被害者と遺族の「声」になってあげてください。人権云々は事件を担当した弁護士や判事が言えばいいことです。
私はクリスチャンです。しかし、私なら家を売り払ってでも金を作り、計画を練り、人を頼んででも残りの人生を犯人への報復に賭けます。こればかりは許せません。紋切り型に「赦しましょう」という神父など、張り倒してやるでしょう。
週刊文春は、どうかこれからも被害者と遺族の「声」になってあげてください。「社会の歪み」がどうの、「人権」がどうのと御託をならべるより、「声」を奪われた被害者、何を言う気力も無くしているだろう遺族の「声」に。(茅ヶ崎市 会社員 28歳)〉
「野獣に人権はない」
花田編集長が覚悟を決め、「野獣に人権はない」と強い姿勢を貫いたことも、世論を喚起する一因となった。『朝日新聞』同年4月30日日曜版のインタビューで、花田さんはこう語っている。
〈もちろん悩んだというか、すぐには決めかねました。うちは2回記事を出したんですが、1回目は仮名にしました。が、第2弾の取材をしているうちに、いかにひどいかということがわかってきて、編集部の中で、これは実名にすべきじゃないかという声が出てきた。要するに、(中略)野獣に人権はない、と。(中略)
正直いって、反発の方が多いんじゃないかと予想してたんです。人権うんぬんでジャンジャン電話がかかってくるだろうと考えたんですが、意外にも実際には2件程度で。『よくぞやってくれた』という投書が何十通もきて(中略)。人権うんぬんという人にはね、『それじゃあ、殺されたE子さんの親御さんの前で、そのせりふが吐けますか』と問いたい気持ちです」〉
賛否両論を予想した『週刊文春』読者の反応は、おおむね好意的だった。編集部に寄せられた約50通の投書のうち、実名報道に反対する意見は4通だけ。
少年法改正への動きは、一気に加速するかに思えた。
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松井 清人(まつい・きよんど)
文藝春秋 前社長
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)卒業後、74年文藝春秋入社。『諸君!』『週刊文春』、月刊誌『文藝春秋』の編集長、第一編集局長などを経て、2013年に専務。14年社長に就任し、18年に退任した。
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