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「大阪には野党が学ぶべきモデルがある」気鋭の政治学者が語る“大阪維新の会”強さの秘密

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BLOGOS編集部

改選数4に対して12人が立候補する激戦となった参院選大阪選挙区。結果的に新人の梅村みずほ氏がトップ当選した日本維新の会が2議席を獲得し、次いで公明党、自民党が議席を獲得した。

立憲民主党など維新以外の野党は存在感を見せることができなかった形だが、大阪ではなぜこれほどに維新の会が強いのだろうか。現地の事情にも詳しい、関西大学法学部教授・坂本治也氏に聞いた。【取材:島村優】

維新への支持は大阪の実績によるもの

—参院選大阪選挙区の結果はどのように捉えていますか? 大方、予想どおりだと言えるのでしょうか。

まあ、予想どおりなんじゃないでしょうか。維新が強いということはわかっているけど、4月の統一地方選挙と今回の参院選の結果を見ると、どんどん強くなっているとすら思えます。

2016年の参院選は候補者が2人出馬して約139万票を獲得しました。今回は2人合わせて140万票弱ですが、前回に比べて投票率が少し下がっていることを考えると、維新の支持がより磐石になっていると見ることができます。

共同通信社

—坂本先生は2013年に「維新の会支持態度の分析」という共著論文を執筆しており、その中で「維新は多くの有権者に支持されているが支持強度は弱い」といった指摘をしています。当時と現在を比べると、どのような違いが見られますか?

「弱い形の支持」というのは現在もその通りで、維新の会に投票する人は多いけど、そうした有権者は橋下さんの熱狂的ファンではないし、維新以外には絶対投票しないような層でもない。他の党と維新の会を相対的に比較した場合、「維新が分かりやすいし、実績を上げてくれる」と感じている一般の人たちだと考えられます。

—実際に自分たちが恩恵を受けている層が多いから支持が広がる、と。

やっぱり、「維新の会が大阪の利益を代弁してくれる」というイメージ作りに成功していると思います。

何の実績がないのに集まった支持というのは、ブーム的な盛り上がりはあっても、それがそのまま持続するということはありません。だから「イメージ作りに成功」と言っても、やはり誕生から10年近くが経った今も維新の会が支持されているというのは、それに見合うだけの実績、市民への還元があったと考えるべきでしょう。

「維新は自分たちの生活を改善してくれる」

—大阪での地方政治の成功が、そのまま国政政党である日本維新の会の支持に結びついているのでしょうか?

それはもちろん地方で出している成果の賜物でしょう。地方政党「大阪維新の会」への支持を抜きに「日本維新の会」への支持は考えられません。

大阪では首長が維新で、議会も維新が多数派という状況だから、自分たちの進めたいことができています。ただ、国政で維新は与党ではないし、予算を動かせる立場でもない。

大阪では「地元で応援しているから国政でも」と維新を推す人は多くいるでしょうし、そうした人たちは国政選挙で維新が勝つのは、大阪で維新が勝つのと同じことだと思っているのではないでしょうか。

共同通信社

—具体的に、維新の会は大阪でのどのような市民への還元が評価されていますか?

「還元」と言っても予算の総額が増えない以上組み替えでしかないんですけど、ある予算を多くの市民にとってわかりやすい別のところに付け替えるということをやっています。ある予算を削ったり、競争的な仕組みを導入したりして、垂れ流し補助金だったものを見直すことで、浮いたお金を私立高校授業料無償化や市営地下鉄駅のトイレ改修、塾代助成事業、中学校給食の実施といった目的に使いました。

地下鉄のトイレは特にわかりやすいと思います。先鞭をつけたのは維新の前の平松市長の時代だったんですけど、全面的に展開したのは橋下市長の時代。それまで、大阪市営地下鉄はトイレがすごく汚かったのが、維新が予算をつけて取り組むことで非常に清潔になりました。

あるいは、中学校給食も維新が一層進めた事例でしょう。それまで大阪市内の中学校は給食がなかったんですけど、一部では批判があるにしても導入することで多くの共働きの人が助かった。仕事をしながら毎日お弁当を作るのはとても大変で、もし作れなければお金を渡してお弁当を買ってもらうことになります。素晴らしい給食とまではいかなくても、親御さんとしては安心できます。

—確かに、実際に自分たちへの恩恵が感じられそうな政策です。

市民全員にとって良いことは予算が増えない以上できません。予算を削られた立場の人は維新に対する批判を強めますが、こうした政策を目の当たりにした納税者、とりわけ維新登場以前は「受益」意識を持ちにくかった層は「維新の会が市政を運営していると自分にも返ってくる」という意識を持てるようになります。

こうした実績の積み重ねが、維新が与党だったら自分たちの生活を改善してくれるはずだ、という期待につながるんだと思います。それが国政選挙でも表れている、という。

全国的な勢力拡大には疑問符も

—そのように支持を集める維新の会ですが、大阪都構想の是非を問う住民投票は否決されています。

結果は僅差でしたが、住民の多くは都構想を本当に実現したいと思っていないんじゃないでしょうか。実際に行ったら何が起こるかは誰にもわからないし、「大阪市がなくなっていいのか」という不安から反対した人も多かったと思います。

—現職の知事と市長が辞職して4月に行われた「クロス選」への批判の声というのはなかったんでしょうか。

いや、クロス選については多くの人がそれほど問題だとは考えていないんじゃないかなと思います。実際にやる前は「問題だ」と言う人もいましたが、結局のところは合法な方法なので。個人的には選挙は公正に行われるべきもので、党利党略で選挙の時期が決まるのは良くないし、こういったウラの手が乱発されるのにはもちろん反対です。

共同通信社

ただ、大阪の野党が都構想に反対するから民意を問いたい、という理由付けでやった部分はあるのかなと。一時的にクロス選への批判は有識者やメディア関係者を中心にすごく高まっていましたが、有権者としては良く分からない話だったのではないでしょうか。実際、今や何とも思っていない人がほとんどだと思います。

—もう一度住民投票をやったら、都構想への賛成票・反対票が入れ替わる可能性もあると思いますか?

それは当然ありうると思います。本当にやってほしくなかったら、選挙でも振るわないはずですが、この間の地方選でも圧勝でした。維新としては「支持されている」と受け止めるし、野党が反対しても住民投票実施までは持っていくのではと考えています。

—国政政党である日本維新の会は、大阪以外では勢力を伸ばしていけるのでしょうか。

今後も強さを増していくであろう大阪維新の会と比べて、日本維新の会が全国的な支持を広げられるかについては疑問符がつきます。大阪では、地域政党である大阪維新の会とリンクして議席が取れているけど、他の地域ではそこまでの強さはありません。

参院選でも、東京で議席を獲得したのは音喜多駿さんで、神奈川では松沢成文さん。これは党が強いというより、個人で票を集めたと見ることができます。だから、大阪とリンクせずに日本維新の会が評価されるかといったら、それは難しいのではないかと。

やはり、日本維新の会が国政政党として支持されるためには、大阪以外の地方選挙や首長選に出馬して勝って、実績を出す必要があると思います。そこでの政策によって現状を改善して、初めて評価されて日本維新の会が支持されることにつながります。ただ大阪以外では支持を広げるのが難しいかもしれませんが、逆に言うと大阪ではよほど大きなミスをしない限り、今後も支持は続いていくことが予想できます。それくらい大阪では強固な根を張っていると言えるでしょう。

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