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【読書感想】むらさきのスカートの女

むらさきのスカートの女
作者: 今村夏子
出版社/メーカー: 朝日新聞出版
発売日: 2019/06/07
メディア: 単行本
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Kindle版もあります。

むらさきのスカートの女
作者: 今村 夏子
出版社/メーカー: 朝日新聞出版
発売日: 2019/06/07
メディア: Kindle版
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こちらの『文藝春秋』2019年9月号には芥川賞受賞作として全文掲載されています。

文藝春秋2019年9月号[雑誌] (―)
作者: 藤原正彦,塩野七生,天童荒太,杉本彩,佐藤優,黒田勝弘,羽田圭介,今村夏子,櫻井よしこ,高樹のぶ子,宮城谷昌光,浅田次郎
出版社/メーカー: 文藝春秋
発売日: 2019/08/10
メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない“わたし”は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。

 第161回芥川賞受賞作。
 今村夏子さんの小説は、これまで『星の子』しか読んだことがなかったのです。

fujipon.hatenadiary.com

『星の子』は、「新興宗教にハマってしまった家庭」を描いているということもあって、発表時からかなり話題になっており、芥川賞でも有力候補と目されていました。
 読んでみて感じたのは、多くの人が「異常だ」「間違っている」と思うような環境や状況に対して、今村さんはそれを断罪しようとするのではなく、「そういう状況で実際に生きている人もいる」ことを、ただ綴っている、ということでした。

 この『むらさきのスカートの女』は、なんだか不穏な感じがする小説なんですよ。

 うちの近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人がいる。いつもむらさき色のスカートを穿いているのでそう呼ばれているのだ。

 物語の「語り手」は、この「むらさきのスカートの女」に異常なこだわりをみせ、ストーカー的な「日常観察」を続けていくのです。
 読みはじめは観察者側からの視点なのですが、途中でそれが揺らぐというか、この観察者の「正体」が明かされることになります(といっても、それはそれで、なんだかスッキリしない謎解きなんですが)。

 一度読み終えたあと、一歩引いて読み直してみると「むらさきのスカートの女」って、「どこのコミュニティにもいるような、目立たず、状況に流されて生きている人」でしかない。
 むしろ、その「むらさきのスカートの女」に、「友達になりたい」と、強くこだわり、いろんな根回しをする観察者のほうが「おかしい」のではないか、という気がしてきます。
 
 そもそも、この「観察者」というのは、本当に存在しているのかどうかさえ、あやふやになってくるのです。
 自分自身のことはどうでもよくなって、ただ、「むらさきのスカートの女」に固執している人生。

 それも、「むらさきのスカートの女」に自分のことをアピールしたいのか、したくないのか、よくわからない。
 ネットストーカー的な存在として描いているのかとも思ったのですが、それにしては、「踊り子に手を触れすぎている」のです。
 もしかしたら、すべてが観察者の妄想なのだろうか。

 文章そのものは、すごく読みやすいんですよ。
 ストーリーも、これまでの芥川賞作品のなかでは、わかりやすい方だと思います。
 にもかかわらず、読み終えたあとは「なんなんだこれは……」と狐につままれたような気分になってしまう。

 僕はこれを『文藝春秋』の全文掲載で読んだのですが、同誌に掲載されていた、今村さんの受賞エッセイ「今日までのこと」が、すごく印象的だったのです。

 今村さんは19歳のときに摂食障害を患っていて、引きこもりがちな日々を過ごしていて、絵本作家や漫画家など「誰とも関わらなくてよさそうで、家の中でできる仕事」をしようとしていたそうです。
 それがなかなかうまくいかず、大学卒業後はいろんなアルバイトをして生活していたのですが、そのなかで一番長く続いたのがホテルの客室清掃だったのだとか。

 その経験が、おそらく、この作品に活かされているのだと思いますが、仕事の内容や職場の雰囲気などのリアルさと、「むらさきのスカートの女」自身の変化と、それに対する職場の人々の態度の変化の描写の鮮やかさに比べて、観察者は、終始ぼんやりとした存在でしかないのです。

 観察者は、ある事件をきっかけに、突如として「やる気」を見せ、生き返ったかのように動き出すことになるのですが。

 「ファン」とかではなくて、「他人と一体化することによってしか、自分を保てない存在」(それはものすごく、「SNS的」ではあります)を描いた作品のようにもみえるし、「ふつうの人の人生なんて、所詮こんなもの」という諦めのようにも思われる。
 でも、ここにあるのは、そういう存在への「問題提起」とかではなくて、「世の中には、そういう人もいる」という、ありのままのスケッチでしかない。
 
 正直、これが「良い小説」なのかどうか、僕にはよくわかりません。
 最後までノンストップで読んでしまい、なんだか心がざわつく話だったな、という「後味」が強く残りました。

こちらあみ子 (ちくま文庫)
作者: 今村夏子
出版社/メーカー: 筑摩書房
発売日: 2017/07/07
メディア: Kindle版
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あひる (角川文庫)
作者: 今村夏子
出版社/メーカー: KADOKAWA
発売日: 2019/01/24
メディア: Kindle版
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星の子
作者: 今村 夏子
出版社/メーカー: 朝日新聞出版
発売日: 2017/06/07
メディア: Kindle版
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