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「終戦記念日?わからへん」「嫌な気持ちになるから番組を見たくない」戦争を知らない若者たちにメディアが語り継ぐためには

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 74回目の終戦記念日を迎えた15日。安倍総理は全国戦没者追悼式で「戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この誓いは昭和、平成、令和の時代でも決して変わることはありません」と述べた。

 日本人にとっては特別なはずの一日。しかし、渋谷を行く若者たちに聞いてみると、「8月15日?分からない。山の日?違う!」(16歳男性、高校生)、「海の日とか?祝日系じゃない?」(26歳女性、会社員)、「アホやから、わからへん。」(20歳女性、会社員)と、正解率はまさかの3割程度。終戦記念日であることを伝えても、「ちょっとした喧嘩みたいな?」といった答えも返ってきた。

 戦争体験者は年々減少し、今や戦争を知らない世代が国民の8割以上になった。8月に入るとメディアも関連番組を放送してはいるが、その記憶を次世代の若者に伝えることは難しくなってきている。実際、「あんまり見たくない。悲しくなるから」(27歳男性)、「爆弾が投下されるシーンとか見ると嫌な気持ちになる」(15歳女性、高校生)、「そういうもの自体に興味がない。言い方アレかもしれないけど、関係ない」(26歳女性、会社員)と、ほとんど届いていないのが実情のようだ。

 実際、「視聴率が取れない(若者視聴が少ない)」「予算がかかる」「誰も知らない話がほとんど残っていない」「証言者がいないとVTRを作るのが難しい」などを理由に、戦争を伝える番組は減少している。終戦の日のAbemaTV『AbemaPrime』では、この問題について議論した。

■一水会の木村氏「背景を教えていかないと分からない」、若新雄純氏「まだ"歴史"になっていない」


 慶応大学特任教授の若新雄純氏は「例えば関ヶ原の戦いや西南戦争についてのノンフィクションや映画を見て"面白いよね"と言っても"不謹慎だ"とは言われないが、太平洋戦争のものに対して興味深く見ていても、"面白いよね"は言えない雰囲気があると思う。それは、今が太平洋戦争を経験していた人も行きているし、まだ完全な"歴史"として扱えるものではないからだと思う」との見方を示す。


 愛国者団体「一水会」代表の木村三浩氏は「映像を見るのが辛いという感覚も分かる。しかし現実に大変なことが起きているわけだし、なぜ戦争になるのか。その背景は何だったのだろうか”、いうことには思いをはせてもらいたい。つまり、原爆による悲惨さだけでなく、なぜ落とされたのか、という背景を教えていかないと分からないと思う。しかし、マスコミは体制に馴らされていると思う」と話す。

 「今の日本は平和で、戦後74年間、直接的に戦争をすることはなかった。しかし国内には米軍基地があって、その周りでは大変なことが起きてきたし、そこから米軍が戦争に出ていっていたことも事実だ。自衛隊は戦後ずっと叩かれ、苦労してきたが、安倍さんみたいに自衛隊を憲法に明記するというのには反対だ。アメリカの"2軍"にされて、またホルムズ海峡に行かされるからだ。ただ、やはり自衛隊が国を守っていて、その任務に就いている人たちがいるということもリアリティを持って伝えることが必要だと思う。

かつて、赤木智弘さんが書いた『「丸山眞男」をひっぱたきたい--31歳、フリーター。希望は、戦争。』という論文が話題になったが、"上級国民"という言葉に対して"下級"だと思っている人が戦争をすれば支配階級は困るだろうという、そういう抵抗も出てくる。小林よしのりさんの『戦争論』や百田尚樹さんの『海賊とよばれた男』など、戦後ずっと続いてきた自虐的ではない側面についてみんなが関心を持ち、そして本が売れた。ただ、これらもやはり一方的な価値観や視点しかないし、バランスを取るかが重要だ。そこは教育になってくると思う。やはり我々は権力者をチェックすべきだし、それが戦争を止めさせることにもなる。一市民は無力ではなく、知識と行動、意識があれば、止めることはできる」。

■"もしドラ"岩崎夏海氏「"終戦"という言い方は良くない」


 "もしドラ"の作者の岩崎夏海氏は、木村氏の話を受け、「戦争を起こすのはやはり為政者ではなく民衆だと思う。色んな証言によると、東條英機は戦争にずっと反対していたので、"腰抜け"というような内容の手紙が膨大な量、送られてきた。そのプレッシャーに負けてしまった、というところもあると思うし、木村さんが言われるように、民意や世論というものが最終的には支配する。日本人の問題は、自分たちを"被害者化"してしまっていること。そういう捉え方をしている限り、再び加害者の側に回る可能性がある。だから"終戦"という言い方は良くないし、それこそ"敗戦"のほうがよっぽどましだ」とコメント。

 「やはり伝え方が失敗しているということに尽きると思う。若者が知らないのは彼らの責任ではなく、彼らに教えてこなかった伝える側の決定的なミスがあったのではと考えている」と指摘し、「戦争番組が見られなくなった理由の一つは、当時を経験した人たちに話を聞いているからだと思う。人間は70年も経つと記憶が改変され、正確に話せなくなってしまう部分がある。昭和21年や22年に撮られた証言映像を見ると、リアリティがあってすごく面白い。特にNHKにはたくさん残っていると思うので、そういう映像を流した方がいい。加えて、戦争の愚かさを伝えるという意味では、なぜ我々国民がNHKに金を払わなければいけないのかということも伝えるべきだと思う。NHKも戦時中は誤った報道をしてしまった。その反省から、NHKは政府から独立した機関にしなくてはいけないということになった。いまだに国営放送だと勘違いしている人がいるが、戦争の愚かさに基づいているということだ」とした。

■堀潤氏「なぜ8月15日の一点張りで戦争を伝えるのか」


 ジャーナリストの堀潤氏は「国立の戦争博物館や研究施設が少なく、戦争そのものの加害性も含めて普遍的なファクトを知るという機会が少ない」と指摘。俳優の故・加藤武さんにインタビューした際、「総理も含め、戦争を知らない世代が政治家をやっているのはなんだかおっかないですね」と尋ねたところ、机をドンと叩いて「戦争を知らないって、おかしいよね。太平洋戦争の後もベトナム戦争、朝鮮戦争、イラク戦争、最近ではイスラム国って言うんだって?見ていないだけだ」と言われたエピソードを披露。「70年間以上私たちは平和でした、というのは大きな幻想で、日本からは米軍の飛行機も艦船も出ている。なぜ8月15日の一点張りで戦争を伝えるのか。そこを変えなければいけない」と主張した。

 さらに、戦前をリアルタイムで経験した人たちに「戦争を実感したのはいつですか?」と質問したところ、多くが「昭和20年」と答えたと明かし、中には「南方で兵隊さんが戦っているのは知っていたが、それが自分の人生とどう関係があるのかはよく分からなかったし、家族をどうやって養うか、自分の夢をどうやって実現させるのかで精一杯だった」「新聞をゆっくり読んでいる暇もなかった。会社や学校で政治の話をすると、"アカ"だというレッテルも貼られた」との証言を聞いたとして、

「今の僕らの感覚とあまり変わらないし、大衆社会というものはこういうものだという前提で汲み上げていかないといけない。戦前の主要メディアは朝日、読売、毎日、日本放送協会だったが、これらは戦後も同じなので、メディア自身も戦前と戦後の境界線が曖昧で、自己検証しないまま。元朝日新聞の従軍記者で、100歳を超えてもジャーナリスト活動を続けてこられた、むのたけじさんにお話を伺ったとき、"軍部は黙って見ていただけで、新聞が自分たちで検閲機関を作ったんだ。会社を守るために。現場の記者はなんとか差し込んでやろうと思って奮闘したのだが"、と話していた。やはり情報を生業にしている機関が矜持を持って立ち向かわなければ戦争は食い止められない」とした。


 その上で、あるべき報道の姿について、「あれだけ現場の映像をたくさん撮ってきたジャーナリストの安田純平さんがバッシングされ、パスポートを使えなくなっているのか。民主主義を担う一翼として、マスコミは沈黙することなく存在意義を示さなければ、N国党のような存在に揺さぶられて瓦解してしまう。戦争を伝える量も減っているが、選挙報道の量も減っている。権力構造を生んでいる市民社会の責任を考えれば、政治課題もちゃんと伝えようよと思う。僕がフリーランスになってやれるようになったことは、戦争が起こる前までの日常を伝えることだ。その中のちょっと揺らいだ感じ、それをまさに映画にしたのが『この世界の片隅に』だった。つまり、戦争は、他のテーマでも伝えられる」とした。

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