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【読書感想】時計じかけの熱血ポンちゃん

時計じかけの熱血ポンちゃん
作者: 山田詠美
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2015/05/29
メディア: 単行本
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内容紹介
日常には宝物が埋まっている! ご存知、熱血ポンちゃんシリーズ、最新刊! 深夜のラジオから流れる音楽。あの頃孤独を嚙みしめるミス・ロンリーだった私。そして今は……。ままならぬ人生を、少しでも楽しくしよう。恋愛、読書、映画、音楽から、水キムチの味わい方、「顔面相似形」の楽しみ方、ヤマダミー賞の効能まで、はからずもおもしろい日々のささやかなトピックスに熱くなれる、大人気エッセイ!

 僕にとって、山田詠美さんは「すごいとは思うけど、どうも苦手な作家」なのです。

 芥川賞の選評で、候補作を一刀両断しているのを読んで、「痛快!」とは思うのですが、山田さんの小説となると、内向的でウジウジしている自分が嫌になるというか、「ああ、山田詠美さんは、きっと、僕みたいな人間が嫌いだろうな……」とか、思えてきてしまうんですよね。

 もともと、押しが強い感じの人って、どうも苦手だし(リアルでの山田さんがどうかは、わかりませんが)

 でも、この「熱血ポンちゃん」シリーズは、これまでも「手元にあれば読む」くらいの付き合いではありました。

 僕とは波長が合わない人だと思っているのだけれど、だからこそ、山田さんのエッセイというのは、刺激になるというか、「こんな考え方もあるのだな」と興味深い、というか。

 これを読んでいると、芥川賞受賞当時、いわゆる「ビッチ」呼ばわりされて、「公序良俗に反する小説」などとバッシングされたことは、山田さんにとってけっこうトラウマになっているのだな、ということがわかります。

 そんなこと、気にするタマじゃないだろ、と思わせておいて、けっこう繊細なんだなあ、と。

 それにしても、山田さんが日常で引っかけてくるネタというのは、どれもすごく面白い。

 この<カレーだらけの33篇>(帯より)を読み終わって、へえ? と感じたのは、ある年代より上の人たちは、カレーライスとライスカレーを自分の定義に従って分けたがること(特に男性)。皆、その区分けに一家言あるようだ。しかし、結局、カレーライスは外のもの、ライスカレーはうちのもの、という共通項が導き出されるのだ。日本における、もっとも多岐にわたる展開を見ながら、それでいて同時に普遍性を獲得した偉大なるソウルフード、それがカレー!!(段々、大仰になって来て止められない)

 いま40代後半の僕は、「どっちも『カレーライス』で良いんじゃない?というか、『ライスカレー』って、どう違うの?」という感じなのですが、いるんですよねたしかに、「ライスカレー」にこだわる人。

 そしてそれは、たしかに男ばっかり。

 まあ、今の若者にとっては、「ライスカレー」は、ほとんど「死語」だと思うのですが。

 久し振りに会った夫の家族とも楽しい夜を過ごした。こちらに来ると、突然、関西弁になる夫の口調が不思議だ。そういや、長い休みで里帰りして帰って来たばかりの友人に会うと、皆、どこかしらなまっている。もう年十年も東京に住んでいる人もそうだ。指摘すると、誰もが少し恥し気になるのが、とてもチャーミングである。ふるさとで、地元の空気にたっぷり浸って、いっぱいその土地の言葉で喋って来たんだなあ、と微笑ましい気分になる。転校生だった私は、行く先々の方言にすり寄って苛められないように卑屈に過ごしたので(結果失敗し続けたが)故郷に帰って、のびのびと土地の言葉を口に出来る人が、ほんと、羨ましい。

 そんなふうだから、東京に住んでいながら何の屈託もなく方言を使い、むしろ、それを売りにしているような人を見ると、鈍感だな、と感じる。こういう人って、自分の地元に東京の人が来たりすると、気取ってるとか言うんだよね。いつも、方言に関して書いていて思うのだが、私の、馴染めなかった方言に対するルサンチマンって、すごいよね。標準語を使ったことに端を発する、周囲のひとい扱いを思い出すだけで、今でも殺意が湧いて来る。

 ああ、僕も「転勤族で、故郷を持たない人間」なので、これはよくわかります。

 転校した土地で、なんとか受け入れてもらおうと、そこの方言を真似してみるのだけれど、そう簡単にはいかず、かえって「ヘン」ということでバカにされ……ああいうのって、うまくやれないつらさと、別に使いたくもないのにその方言を使うことによって媚を売ってしまう自分の情けなさと、二重の痛みがあるのだよなあ……

 しかし、芥川賞のときの「怨念」もそうなのだけれど、山田詠美さんというのは、正しく「昔の感情を、そのままセーブして、持ち続けていられる人」なのだと思います。

 だからこそ、ずっと現役作家として、幅広い世界を描いていられるのだろうなあ。

 ちなみに、この本のなかで、いちばん笑ったのは、このくだりでした。

 前に、「婦人公論」だったか、無人島に流されるとしたら何を持って行くかというお決まりの質問を各界の著名人にしていた。この種の問いはいつでも興味深くて、へえ、この人がこんなことを、と首を傾げたり頷いたりしながら読み進めていた。そして、ある学者さんのところで吹き出しちゃったの。彼は、こう答えていた。

「iPadですね。ぼくのには○○万冊」(正確な数、失念)の蔵書が入っているので、一生退屈することないと思いますよ」

 あのー、無知ですいません。それって、充電しなくても良いんですか? そんなすごいものがあるなら、私も文明開化します! 教えて下さい。茂木健一郎さん!

 僕もその「無人島でもずっと使えるiPad」が欲しいです!

 でも、もしかしたら、将来的には、太陽電池でずっと動くiPadとか、出るかもしれないよね。

 ネットが届かないので、新しい本はインストールできないかもしれないけど……

 しかし、無人島で、ひたすらiPadで本を読んで暮らすというのも、なんだかシュールだな。

 「炎上しないこと最優先」の文章にはもう飽きた、という人は、このエッジの効いたエッセイ集を、一度お試しあれ。

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