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橋下徹「表現の不自由展が失敗した本当の理由」

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違う。

基準があいまいなまま、政治的要素の入った集会やイベントに大阪府や大阪市という公権力が協賛者・後援者として名前を連ねることを許すと、今度は公権力が、自分たちに都合のいい集会やイベントを後押しする危険も生じてくる。大阪府や大阪市に好かれれば、府・市の協賛・後援をとることができ、嫌われればとることができないという不平等も生じてくる。実際、大阪市は、市長選挙戦に伴ってそのようなことをやっていた。

では、大阪府や大阪市は、政治的要素の入ったあらゆる集会やイベントに名前を貸すことを一律に禁じるのではなく、全てに貸したらいいではないか、という意見もあるだろうが、大阪府や大阪市内での政治的要素を含む集会やイベントは無数にあり、府や市が申し出のあった全ての集会やイベントに協賛者・後援者として名前を貸すことは事実上不可能である。

このような考えから、大阪市設置の区民ホールにおいては、政治的要素が入ったとしても「全ての」集会(表現)活動に利用を許し、他方、政治的要素が入った集会・イベント(表現)活動には、大阪府・大阪市が協賛者や後援者として名前を貸すことを「一律」禁止としたのである。

政治的要素の入った表現行為については、一律に認めるか、一律に禁じるかの二者択一の判断。

これが、表現の「内容」によって個別判断するのではなく、プロセスや公平性によって判断する手続き的正義の考え方だ。

展示物の内容でその是非の判断をしてはならない

あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」に話を戻すと、政治的要素の入った「表現の不自由展・その後」のイベントにおいては、政治的要素の入ったあらゆる展示物を「全て」認めるか、政治的要素の入った展示物は「全て」禁じるかの二者択一で判断するしかなかった。展示物の内容でその是非の判断をしてはならない。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

全てを禁じるというなら、「表現の不自由展・その後」は中止。それはある意味、楽だし、役所が主催するイベントの本来のあり方だと思う。混乱を避けるというのが役所の本質的な役割なのだから。

しかし、もし、愛知県や名古屋市などの実行委員会や芸術監督である津田大介氏が、混乱を招いたとしてもこのイベントにあえてチャレンジする、というのであれば、政治的要素の入ったあらゆる展示物を「全て」認める方向でやるしかない。

ありとあらゆる政治的要素の入った作品を全て展示していく。「表現の不自由展」と銘打つ以上、至る所で猛バッシングを食らった、また食らうであろう作品、すなわち本来であれば日の目を見ない、表現の場が与えられないであろう作品を全て並べなければならない。

そしてこの際、重要なのは、あらゆる表現者にチャンスを平等・公平に与えたかというプロセスの部分であり、作品の取捨選択のプロセス、抽選方法等が厳格に行われたかどうかが一番のポイントとなる。表現の中身ではないのである。

(略)

(ここまでリード文を除き約2700字、メールマガジン全文は約8800字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.163(8月13日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【表現の不自由展(2)】見えにくいアウト・セーフのライン。政治的表現を「内容」で規制していいのか?》特集です。

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橋下 徹(はしもと・とおる)

元大阪市長・元大阪府知事

1969年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大阪弁護士会に弁護士登録。98年「橋下綜合法律事務所」を設立。TV番組などに出演して有名に。2008年大阪府知事に就任し、3年9カ月務める。11年12月、大阪市長。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)


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