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ロシア軍施設の爆発事故で最大200倍の放射線量? 当局が隠蔽か チェルノブイリ原発事故の悪夢が蘇る

共同通信社

チェルノブイリ原発事故の悪夢

[ロンドン発]白海に面したロシア北部アルハンゲリスク州の集落ニョノクサ近くにあるミサイル実験場で8日爆発が起き、少なくとも5人が死亡した事故で、開発中の「原子力巡航ミサイル」の実験中に爆発が起きたとの見方が強まっています。

約40キロメートル離れたセベロドビンスク市で一時的に通常の20~200倍の放射線量が確認されたと地元メディアで報じられましたが、すぐに削除されました。隠蔽とウソで取り返しのつかない被害を出した1986年のチェルノブイリ原発事故の悪夢が蘇っています。

事故が起きた夜、モスクワではテレビの画面が53分間も青くなって映らなくなり、嵐が来るので家の中に留まるようテロップが流されました。しかし、暴風雨は来ませんでした。

タス通信によると、ロシア国防省は「爆発は液体推進システムの実験を行っている時に起きた。いかなる有害物質も大気中に放出されておらず、環境放射線も正常値だ」と強調しました。コメルサント紙は「実験場近くの海域は閉鎖された。通常ミサイル燃料から有害物質が漏れたからだ」と報じました。

しかし、地元住民の間に不安が広がり、安定ヨウ素剤を買いに走る姿も見られたと伝えられています。安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素にさらされる直前や直後に服用すると、甲状腺への放射性ヨウ素の集積を減らし、甲状腺がんの発生予防を期待できます。

爆発したのは通常燃料だけなのか、それとも放射性物質も放出されたのか、事故の詳細が明らかにされないため、SNSに「チェルノブイリを思い出す」「私たちの近くで小さなフクシマのような事故が起きた。正確な情報を開示して」などの投稿が相次ぐなど、当局への不信感が広がっています。

ロシア「原子力巡航ミサイル」はファンタジー?

米国の核問題専門家でミドルベリー国際大学院モントレー校東アジア核拡散防止プログラムのジェフリー・ルイス所長は9日、ツイッターで次のような見方を示しました。

「8日の衛星写真は爆発と火災が起きたロシアのミサイル実験場近くに核燃料運搬船セレブリャンカがいるのをとらえている。この船の存在は原子力巡航ミサイルの実験と関係している可能性がある」

「私たちの仮説では事故は原子力巡航ミサイル9M730ブレベスニク(NATOコードネームはSSC-X-9 スカイフォール)に関係している。おそらく核燃料運搬船セレブリャンカは回収作業のためだろう」

9M730ブレベスニクは小型の原子炉を巡航ミサイルに埋め込んだ「原子力で推進する大陸間巡航ミサイル」で昨年3月、ウラジーミル・プーチン露大統領が年次教書演説で、米国のミサイル防衛(MD)網を突破するため開発と実戦配備を急ぐ新兵器の1つとして発表しています。

プーチン大統領は「9M730ブレベスニクは、核弾頭を搭載し、地球上の隅々まで無制限に飛んでいける航続距離、予測できない飛行経路、低空飛行でレーダーでとらえにくい巡航ミサイルは、すべてのミサイル迎撃網に対して無敵だ」と宣言。ユーチューブでも動画が公開(5分43秒辺りから)されています。

ルイス所長が原子力巡航ミサイルの実験中だったとみる根拠は次の3点です。

(1)昨年、北極海のノバヤゼムリャ島にあったミサイル発射実験施設が解体され、ニョノクサ近くの基地に移された。衛星写真からミサイルを格納するシェルターやノバヤゼムリャ島から移されたレール、青色のコンテナも確認できる。

(2)昨年夏、ノバヤゼムリャ島沖に墜落した原子力巡航ミサイルの回収作業に加わった核燃料運搬船セレブリャンカが今回も排他的水域内で確認されている。

(3)露国営原子力企業ロスアトムが「液体推進システムの同位体動力源のエンジニアリング・技術的なサポートをしていた5人が死亡した」と発表した。

米国でも1950~60年代にミサイルの原子力推進エンジンの開発が進められましたが、飛行経路の下にいる人に有害で、断念された経緯があります。このため、プーチン大統領の「原子力巡航ミサイル」はファンタジーに過ぎないという辛辣な見方もあります。

アメリカ・ロシア両国の核開発競争で「核なき時代」の後退

ドナルド・トランプ米大統領は今年2月、ロシアのミサイル配備について中距離核戦力(INF)全廃条約に違反しているとして離脱を通告。ロシアも履行を停止したため、8月に失効しました。

これで米露の核軍縮の枠組みは大陸間弾道ミサイル(ICBM)など戦略核弾頭の配備数や運搬手段を制限する新戦略兵器削減条約(新START)だけになりました。新STARTは21年に期限を迎えますが、延長されるかどうか懸念が大きく膨らんでいます。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、新STARTに基づいて核兵器の90%以上を保有する米露両国が戦略核を削減しているため、全体として核弾頭の数は減っています。しかし、そのスピードは10年前に比べて落ちてきています。

木村正人

米露両国とも運搬手段を含めて核兵器の近代化に取り組んでいます。プーチン大統領の核兵器などの近代化計画は原子力巡航ミサイルだけにとどまりません。

・マッハ10の空中発射弾道ミサイルKh-47M2キンジャール(射程2000キロメートル超)
・南極回りでも米大陸に到達できる大陸間弾道ミサイルRS-28サルマト(射程1万1000キロメートル超)
・大陸間の海中を進む戦略核魚雷カニヨン
・マッハ20超の極超音速滑空体アバンガルド
・原子力無人潜水艦ポセイドン
・レーザー兵器ペレスベット

プーチン大統領の理屈では米国のミサイル防衛網で「核の均衡」が崩れているため、ミサイル防衛網を無力化する原子力巡航ミサイルなど最先端の運搬手段開発は最重要課題ということになります。

しかし今回の事故でロシアの核兵器近代化プロジェクトが白日のもとにさらされたことをきっかけに米国の開発にも拍車がかかるのは必至でしょう。

バラク・オバマ前米大統領時代の「核なき世界」は大幅に後退し、世界は「協調」と「宥和」から「緊張」と「対立」の時代へと暗転しています。

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