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「宗教」と「カルト」の違いとは:信者への虐待、労働搾取がある団体は「カルト」。『隔離』して『コントロール』するその手口

ロナウド・ソアレスの携帯に、4年間全く音沙汰がなかった19歳の娘から“予期せぬ”メッセージが届いたのは2018年12月のことだ。「助けて、ここから出して」

カルト宗教の拠点で監禁・強制労働させられていた娘が、他メンバーの携帯電話でこっそり連絡してきたのだ。「逃げ出したい。ここではお父さんとも話させてくれないの」

© Pixabay

ソアレスの娘は2014年に母親と一緒に、ブラジリアの農場を拠点とする宗教団体「ラオディキア伝道アドベンチスト教会*(正式名: Igreja Adventista Remanescente de Laodiceia)」に入会していた。ソアレスはすぐに警察に届けを出すと、農場まで600キロの道のりを車で飛ばし、娘を取り返し、家に連れ帰った。

カルト団体による労働搾取についてはブラジル当局も取り締まりをすすめているが、どこまでが「宗教的慣習」でどこからが「現代の奴隷労働」にあたるのか議論が巻き起こっている。

「隔離」と「情報コントロール」で洗脳する手口

世界第5位の人口(約2億1000万)を抱えるブラジル。キリスト教の教派は数千近く存在し、聖書をあらゆる“好み”にあわせて解釈しており、独特の信仰もある。

しかし「カルト」と「正当な宗教」を分かつのは信仰の内容ではなく、信者に対する虐待があるか否かだ、と言うのは米ニュージャージー州の非営利組織「カルト教育機関(Cult Education Institute)」のディレクター、リック・アラン・ロスだ。

「カルト宗教で信者が奴隷状態になっている状況は、世界中に数多くあります。奇妙に思うかもしれませんが、それが事実です」

「すべては『隔離』と『コントロール』。(人々が)読むもの、見るもの、聞くものを支配すれば、考え方もコントロールできてしまいますから」

© Pixabay

同じくブラジルでは、自称“霊媒医”のジョアン・デシェーラ・ジ・ファリアが、12月に強姦および性的暴行の罪で起訴された。“神のジョン“と名乗るこの男は、2013年にそのヒーリング・メソッドが、米国の人気司会者オプラ・ウィンフリーのテレビ番組で取り上げられ、一躍有名になった。

以降、ゴイアス州アバジアニアにある彼の“治療施設”には、国内外から数千人もの人々が押し寄せるようになった。しかし今、数百人もの女性たちが、スピリチュアル的助言や心霊療法を受ける際に、彼から虐待を受けたと申し立てをしているのだ。

創設から20年以上経つサンパウロのフランコ・ダ・ホーシャにある宗教団体「レーマ・コミュニティー・福音派ミニストリー(正式名:Ministério Evangélico Comunidade Rhema)」では、信者は自身の恐怖心や羞恥心について口を割れと圧力をかけられる、と元信者は言う。

この教団は、米ノース・キャロライナ州の教会「ワード・オブ・フェイス・フェローシップ」に複数の若者を送り込んだこともある、とサンパウロの労働監察局は言う。送られた若者の1人ロドリゴ(仮名)は、祈りと勉学を求められたうえに、大理石工場でのキツい労働を強いられていた。

「これは人間がする仕事じゃないと兄に漏らした」という彼は、そのことでも罰を受けた。5年前、18歳の時に教団を離れたが、家族は今も教団に属しているため、本名は明かせないと言った。教団側は、人身取引および強制労働の容疑を否認しており、教団側弁護士は「連邦政府による捜査は、イエス様が言うところの聖書への"迫害”です」とメールで回答してきた。

コトを難しくするのは本人が被害者と認識していないこと

ブラジルのカルト宗教で奴隷になった人、そこから救出された人の数についてはほとんどデータがないのだが、元信者・警察・宗教専門家らによると、内部では強制労働が“はびこっている”という。

しかしこういった事態を立件する上で最大の障壁となるのが、カルト信者たちが自分を被害者と認識していないことにある。「カルトの“犯罪的事業”を阻止するうえで、一番の難しさはそこにあります」とミナス・ジェライス州の労働監察官マルセーロ・カンポスは言う。

ソアレスが娘を取り返してから数日後、警察が農場に行くと、二人の女性が監禁されていた。うち一人は救出したが、もう一人は、自分は自由の身だと言い張り、そこに残った。「明らかに怯えている風でしたが、いい年した大人が大勢の前でそう言うのですから、我々にできることはありませんでした」救出作戦を指揮した警官バンデル・ブラガは言う。

この件について、教団側の弁護士はコメントを拒否。「宗教が絡んでくると、『強制労働』と『自主的労働』を区別するのが難しいのです」と労働検察官のヘラルド・エメディアト・デ・ソウサは言う。

2018年、「ことばの翻訳キリスト教会(正式名:Igreja Crista Traduzindo o Verbo )」というカルト団体に、政府職員約200人を動員しての強制捜索が行われ、565人の信者らが教団関連の農場、工場、レストランで奴隷状態で働かされていることが明らかとなった。しかし労働監査官の報告書によると、被害者とされる人たちが誰一人として救出を願い出ていないのも事実。

しかし「リーダー層だけが私腹を肥やし、働く信者たちは貧しいままですから、“自主的”な労働とは言えません」と労働監査官は言う。また同報告書によると、教団の牧師は街中で貧しい人々(薬物依存症から回復中の人など)に共同生活を持ちかけ、信者になると所持品は“寄付”され、教団関連のビジネスで働くよう圧力をかけられるようだ。

また、表向きには無職で失業手当を受けとっている人が、教団事業で強制的に働かされているケースも67件あった。この詐欺手口により、ブラジル国内の社会保障制度に約24 万レアル(約660万円)の損失が出ているとのこと。

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カルトからの脱退、その後

ソアレスは今でも、カルト教団で何があったのか、娘とどう話したらいいかわからない。「娘はまだ“普通”の状態ではありませんが、あまり立ち入らないようにしています。今はただ裁判の結果を待ちます」

ロドリゴは子どもの頃に受けた虐待に、今でも怒りを感じている。自分の中の“悪魔”を吐き出すまで、みぞおちを殴られたりしたのだから。当時の彼にとって、それは周りの皆が経験する“普通”のことだった。

教団外の人たちに会って初めて、自分が信じる宗教は“虐待的”だと気づいたという。これは他の被害者からもよく聞かれる発言だ。両親のことは憎んでいない。むしろ彼らは被害者だと思っている。時間を巻き戻したいと思うこともあると言う。「今ある知識を持ってあそこに戻れたら、あいつらに思い知らせてやれるのに」

By Fabio Teixeira
Additional reporting by Ellen Wulfhorst
Courtesy of Reuters / Thomson Reuters Foundation / INSP.ngo

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