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どんなに炎上してもホリエモンが信頼される訳

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■「尖っているほうがかっこいい」は時代遅れだ

そういう人は、おそらく世間の人々の目には入ってきません。目立っている落合さん、堀江さん、猪子さんはイメージだけは尖っているけれども、実際には協調性があるのに、実績があるから目立ってしまうだけです。本当に素でも尖って、他人をばかにしているような人は、愛されないし、仕事ももらえていないはずです。

もうそろそろ「尖っているほうがかっこいい」という見方から離れ、「円熟」の効用を真剣に考えなくてはならない時期に来ています。尖っていて、華やかで、ぱっとその場で目を引くようなものが偉いというより、地味に見えるかもしれないけれど、本当に味わい深いもの、一生持っていけるような深い知恵とは何なのかと見直していくことで、多くの人が救われるのではないかと思います。

■「人間の徳」は高めていくことができる

ポジティブ心理学の創設者マーティン・セリグマンと、クリストファー・ピーターソンが提唱した「キャラクター・ストレングス・アンド・バーチューズ」という人間の徳の指標があります。

長い間、心理学では人間のポジティブな心理状態よりも、ネガティブな心理状態を対象にしてきました。生活に重大な影響を及ぼすからこそ、ネガティブな心理状態の研究が必要だったのです。

セリグマンらは、人格的強さや人間の徳という人間のよい面についても同様に基準を作り、研究する必要があると考えて、「キャラクター・ストレングス・アンド・バーチューズ」を提唱しました。

この基準は「DSM」と呼ばれる精神障害の診断と統計マニュアルに対照し、頭文字を取って「CSV」と呼ばれています。CSVによれば、人間には24種類の人格的強さ(勇敢であること、愛情があること、リーダーシップがとれること、創造性があること、思慮深いこと、審美眼があることなど)があるとされ、それらが6つの徳(勇気、人間性、知恵、正義、節度、超越性)に分類されています。

さまざまな経験を積み、積極的に「思い出す力」を高めることによって、このCSVも高めていくことができます。

■「破滅的なものが偉い」は嘘

クリエイティブな仕事をする人たちの中には、「破滅的なものが偉い」という思想が根強くありますが、それは昔のことです。文明的にも文化的にも発達の途中で、とにかく駆動力が必要だった時代には、尖ったものが必要だったでしょうが、物があふれて、何もかも飽和状態の今は逆に、円熟の思想こそ求められています。

当たり前なことですが、破滅したら、少なくとも幸せにはなれません。「破滅的な人格の人が描く小説が面白い。破滅的でないと芸術家にはなれない」というのは、噓なのです。

私は『論語』の中にある孔子の言葉がとても好きです。

「子曰く、吾十有五にして学に志す、三十にして立つ、四十にして惑わず、五十にして天命を知る、六十にして耳順(したが)う、七十にして心の欲する所に従えども、矩(のり)を踰(こ)えず」

特に興味を持つのは、最後のところです。「70歳では、思うままに生きても人の道から外れることはなくなった」という意味です。

70歳になってやりたい放題しても倫理に反しないようになったとは、すごいことです。「一体どのように年齢を重ねていくと、そんなふうになれるのか」と、私は人生の中で繰り返し考えてきました。

これは、経験・反省・学習の繰り返しによって脳の回路のバランスが、ちょうどワインが熟成するみたいに円熟するようになることだと私は理解しています。円熟は、欲求がなくなることではなくて、すべてがバランスよく育ったために、脳の中に特に突出した回路がなくなることです。

■しっかり「鏡」を見る人は徳が高まる

威張ったり、他人の意見を聞かないようになったりしてしまう人は、他人に自分を認めさせるために、自分から「私は偉いのだ」と激しくアピールして、かえって他人からうとまれてしまうところがあります。


茂木健一郎『ど忘れをチャンスに変える 思い出す力』(河出書房新社)

意欲を持ち、過去の成功体験にこだわらず、自分がどういう状況にいるのか、どういうふるまいをしているのか、周りはそれをどう思っているのかを鏡に映すように把握して、「こういう行動をするとこういう結果になるのだ」と、しっかりフィードバックすると、脳は、悪い結果につながった行動を今後は抑え気味にして、いい結果につながった行動は強めようという形で学習し、徳を高めていきます。

しっかり鏡を見ることができれば、「マイナス」は刈り込み、「プラス」を強めて円熟していくのですが、徳が高まっていかない人は、鏡をうまく見ることができていないのです。今の現実世界に対する意識と、過去の経験に対する意識とを広げていくことが、徳を高めることなのです。

■「円くなること」こそが個性を作ること

それぞれの人が自分で経験して、反省して、学びを続けて、円くなるのですが、円くなるとはまた、誰かと同じになってしまうことではありません。

何もかも受け入れて、にこにこして、穏やか。——そんなのは個性をなくすことだ、突出したものもなく、誰も彼も似たようなものになる、と思うかもしれませんが、本当は、円くなることこそが個性を作ることなのです。自分の中の記憶という宝物だけは、他の人が完全に同じものを持つことができません。

それを頻繁に思い出して、自分のやり方で長年耕すならば、あなたは誰とも違う、真の意味で個性的な人間になるのです。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『幸せとは、気づくことである』(プレジデント社)など著書多数。
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(脳科学者 茂木 健一郎)

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