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子どもを持つと幸福度が下がる日本社会の闇

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男性稼ぎ手モデルの限界

「仕事と家事育児の両立」の、仕事の面からも考えてみましょう。親ペナルティを無くすためには、かつての「男性稼ぎ手モデル」と相性が良かった日本的な働き方を改善する必要もあります。

大企業で出世しようと思うなら、配置転換・長時間労働・転勤を受け入れることが前提となります。どこで、どのくらい、どのような仕事をするかについて、会社の指示に従うことによって、たしかに会社はある程度雇用を安定させることができます。他方で、これは共働きの時代にそぐわない働き方だと思います。

例えば、今年19年6月に炎上したカネカの件のように、転勤を受け入れるのは大変です。夫婦のどちらかに転勤が命じられれば、片方の(たいていは女性の)キャリアプランが断絶しやすいのです。また、転勤の可能性があるというだけで、子どもをつくるかどうか、持ち家を買うかどうかの判断などに必要な、生活の長期的な見通しが立てづらいということもあるでしょう。

日本の正社員の、「色んな仕事を、いろんな場所で、時間の制限なく」遂行する働き方は、もともとは女性を職場から排除しようとして普及したものではありません。ただ、副作用として女性の職場での活躍を阻害しているのです。

親ペナルティには、あらゆる社会問題が絡んでいる

幸福度は簡単には比較できませんが、冒頭で述べたように独身でい続けたほうが幸せという調査結果はどこにもありません。

結婚して子どもがいないDinksは割合として少なく、世界的に見てもこのグループは一番の「マイノリティ」です。ただ、数は少ないけれど、子どもが生まれた人達よりは幸福度をキープできていると思います。しかしこれは短期的なものである可能性があります。将来的には、「子どもがいない」「寂しい」「老後はどうするか」という不安が勝ってくる可能性はあります。

結局「親ペナルティ」の問題は、仕事と家庭の両立のしづらさや、保育の支援制度の問題など、全ての社会課題が絡んでいます。ですから、それぞれを同時に少しずつ改善していくしかないのです。

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筒井 淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授
1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。
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(立命館大学教授 筒井 淳也 構成=梶塚美帆 写真=iStock.com)

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