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「表現の不自由展・その後」中止事件と「天皇の写真を燃やした」という誤解

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出展された作品について本来やるべきだったことは

 文中にある「右翼の攻撃を受け」云々というのは、1985年の富山県での事件で、全国の右翼団体が抗議に押し掛けるようなものだった。そういう事件についてある程度知識のある人にとっては有名な事件だ。

 今回の「表現の不自由展・その後」では、大浦さんの版画「遠近を抱えて」のうち何作品かを展示し、来年公開の映画の画像などを使った動画を会場で流していた。「遠近を抱えて」は、今ではネットで勝手にコピーされて作品の多くが簡単に見られる状態になっている。

 そしてこの作品に対してこれまでどんな紆余曲折があったかを書いた『皇室タブー』の大浦さんについて書いた章(『創』から収録したもの)を特別にヤフーニュース雑誌で公開することにした。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190806-00010000-tsukuru-soci

 美術家・大浦信行さんと天皇コラージュ事件

 本当は「表現の不自由展・その後」とは、こういう作品を展示し、作品についての解説もしたうえで、それら表現をめぐる状況について一緒に考え議論しようという企画だったと思う。それが短絡的な政治的文脈に落とし込まれたあげくに開催3日で中止というのは、残念というほかない。日韓関係がヒートアップしているといった背景はあるにしても、表現についてきちんと議論をかわすという風土そのものが日本社会に欠如していることを、今回の騒動は浮き彫りにしたと言えよう。

8月22日に中止事件を議論するシンポジウム開催

 今回の事件については、今この社会で表現がどんなふうに扱われているか考え、ぜひ「表現の不自由展・その後」の展示を再開させてほしい。そう望む人は今、どんどん広がっており、こういう声が拡大していけば再開は決して不可能ではないと言われつつある。むしろそうしなければ、今回の中止事件はあまりにも大きな、歴史的といってよい「傷あと」を後世に残すことになる。

 この問題について議論するために、私たちは8月22日、下記のようなシンポジウムを企画した。「表現の不自由展・その後」に出品した作家たちに集まってもらい、作品や出品の意図を語ると同時に、今回の事件について表現者としてどう考えるのか、意見表明してもらって議論したいと思う。当日の出演者・発言者はまだ交渉中で、出展者全員にまだ連絡が取れていないのだが、この記事を見て連絡くださればもちろん当日の発言・出演可能です。

緊急シンポ!「表現の不自由展・その後」中止事件を考える

8月22日(木)18時15分開場 18時30分開会(予定) 21時終了

会場:文京区民センター3階A会議室 

https://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/kumin/shukai/kumincenter.html

定員:470名 参加費:1000円

主催:8・22実行委員会〔『創』編集部/日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)/表現の自由を市民の手に全国ネットワーク/OurPlanet-TV/アジアプレス・インターナショナル/メディアフォーラム/アジア記者クラブ/他〕

 作品を出品していた人など当事者たちのほかに、金平茂紀さん(TVジャーナリスト)や香山リカさん(精神科医)など多くの人をまじえて議論を行う予定だ。

座席を確保したい人は下記より予約をしてほしい。

https://tinyurl.com/y3rzm8et

日本ペンクラブの声明、国際ペンも異例のコメント

 なお前回ヤフーニュースに書いたが、私の所属する日本ペンクラブも8月3日、まさに中止決定と同じタイミングで抗議声明を発した。以下に改めて全文を提示しよう。

《日本ペンクラブ声明―あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」の展示は続けられるべきである

 制作者が自由に創作し、受け手もまた自由に鑑賞する。同感であれ、反発であれ、創作と鑑賞のあいだに意思を疎通し合う空間がなければ、芸術の意義は失われ、社会の推進力たる自由の気風も萎縮させてしまう。

あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」で展示された「平和の少女像」その他に対し、河村たかし名古屋市長が「(展示の)即刻中止」を求め、菅義偉内閣官房長官らが同展への補助金交付差し止めを示唆するコメントを発している。

 行政の要人によるこうした発言は政治的圧力そのものであり、憲法21条2項が禁じている「検閲」にもつながるものであることは言うまでもない。また、それ以上に、人類誕生以降、人間を人間たらしめ、社会の拡充に寄与してきた芸術の意義に無理解な言動と言わざるを得ない。

 いま行政がやるべきは、作品を通じて創作者と鑑賞者が意思を疎通する機会を確保し、公共の場として育てていくことである。国内外ともに多事多難であればいっそう、短絡的な見方をこえて、多様な価値観を表現できる、あらたな公共性を築いていかなければならない。       

2019年8月3日

一般社団法人日本ペンクラブ 会長 吉岡 忍》
今回の事件を取り上げた国際ペンのホームページ。筆者撮影

 日本ペンクラブは国際ペンの日本支部にあたるのだが、この中止事件については国際ペンも関心を寄せ、ホームページに大きく取り上げた。この取り組みは異例のことと言ってよい。今やこの問題、国際的な事件になっているのだ。

https://pen-international.org/news/japan-aichi-prefecture-cancels-art-exhibition-focused-on-censorship

 既に「あいちトリエンナーレ2019」に出品していた韓国の作家が抗議の意味をこめて作品を自ら取り下げたり、韓国でも作家や表現者がコメントをしているようだ。

 言論・表現に関わる者全てに、この事件は大きな課題をつきつけた。まさに今は大事な局面だといえよう。8月22日にはぜひ多くの人が集まって議論を深めてほしいと思う。

なお拙著新刊『皇室タブー』は全国書店、ネット書店などで発売中だ。

『皇室タブー』創出版刊

定価:本体1500円+税 四六判 256ページ

ISBN 978-4-904795-58-3


※Yahoo!ニュースからの転載

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