■ 密猟・密輸、エサ不足も閉鎖の背景に
コモド島への観光客立ち入り禁止を打ち出した背景には種の保存とともに「密猟の防止」もある。
2019年3月にインドネシア警察は首都ジャカルタ、地方都市スラバヤ、世界的観光地バリ島で子供のコモドドラゴンを含む41頭を密売しようとしていた密輸グループを摘発、41頭を保護した。その後の捜査でこのグループはタイやベトナムの密輸業者と組んでコモドドラゴン1頭を5億ルピア(約390万円)で密輸する計画だったことがわかった。
こうした密猟による個体数の減少に加えて、コモドドラゴンのエサとなる鹿や猪、鳥類、爬虫類などの入手が困難になっていることも一因と指摘されている。
野生の鹿、猪、鳥類などが減少したことで、近年は国立公園管理者などがそうしたエサを他の場所で確保して提供しているが、それでも「エサ不足」は深刻で不用意にコモドドラゴンに近づいた観光客が襲われる事故も起きている。
1974年以来これまでに観光客など30人がコモドドラゴンに噛まれる事故があり、5人が死亡しているという。このため現地を訪れる観光客は現地のレンジャーとともに行動し、その指示に従うことが強く求められている。
■ 大統領は何らかの制限の必要性を支持
コモド国立公園を訪れる外国人観光客は主にバリ島から空路でフローレス島のラブアンバジョーに向かい、そこから船やスピードボートなどで数時間かけて到着する。コモド島、には宿泊施設がなく、観光客だけの単独行動は禁止されているほか、外国人観光客は15万ルピア(約1200円)の入園料が徴収される。
インドネシアの自然の豊かさを象徴する世界遺産の一つであるコモド国立公園だけに、ジョコ・ウィドド大統領も現地を視察した際に「コモドドラゴンの保護の観点から観光客に対する何らかの制限は必要」との立場を示している。
州政府などが計画している観光客の立ち入り禁止は今のところコモド島だけを対象としており、パダール島を挟んで東に隣接し、同じくコモドドラゴンが多く生息するリンチャ島への観光客の立ち入りは制限しないという。このため「コモドドラゴン観光」そのものが全面的に不可能になるわけではないことから「外国人観光客の理解も得られるのではないか」(州政府)として、残る地元住民との交渉が今後の焦点となるとしている。