大塚智彦(Pan Asia News 記者)
【まとめ】
・コモドドラゴン保護のためインドネシアで生息地の立入禁止。
・生息地閉鎖に観光業者や地元住民は強く反発。
・閉鎖の背景には密猟防止や餌不足も。
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インドネシアの東部、東ヌサテンガラ州にあるコモド国立公園はコモドドラゴンの生息地として世界中から観光客が押し寄せている。
こうした中、個体数が減少して絶滅の危機に直面しているコモドドラゴンの保護を目的に地元政府が生息地の一部島への観光客の立ち入り禁止を打ち出した。ところが、島の住民や観光業者から反対の声が上がり、行政が住民に集団移転や転業を促すなどの騒動に発展、コモドドラゴンを巡る論争が過熱している。
コモドドラゴンは体長2~3メートル、体重50~100キログラムの大型爬虫類有鱗目に分類される動物でその外観や生態から「生きた現代の恐竜」と称されている。しかし野生のコモドドラゴンはコモド国立公園内のコモド島、リンチャ島、パダール島などの限られた島にしか生息していない。
このため1991年に国連のUNESCO(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産・自然遺産に指定され、国際自然保護連合(IUCN)からは野生種が絶滅の危機にあるとする「危急種」にコモドドラゴンは指定されている。
その生息数は1981年には7213頭だったが、2014年には3093頭に減少。さらに2019年2月のインドネシア環境林業省の調査では2762頭まで減少が確認され、コモドドラゴンの保護の必要性が急務となっていた。
■ 2020年からのコモド島閉鎖方針に住民反発
こうした中、インドネシア政府や地元東ヌサテンガラ州政府などは、コモドドラゴンの保護を目的として1800頭と最も生息数が多い、コモド島への観光客の立ち入りを2020年1月から全面的に禁止し、観光地としては島を閉鎖する方針を2019年3月に打ちだした。
ところが観光資源に頼るコモド島の住民や現地観光業者から一斉に反対の声が上がり、州政府が対策に乗り出す事態に発展している。
こうした状況を受けて州政府はコモド島のコモドドラゴン生息環境保護のために島内の生息地域の定住する住民の
①強制立ち退き
②厳しい環境保護の条件下で居住の継続を認可する
③収入源確保のため立ち退き移転先を州政府が確保して順次移転
――の3案を提示して住民との交渉を進めている。
州政府のヨセフ・A・ナエソイ副知事は7月29日に地元テンポ誌に対し「コモド島の観光客に対する閉鎖を2020年から実施することはすでに最終決定している。問題は島の観光地区つまりコモドドラゴンの生息地区に居住している住民をどうするかである」と述べ、住民と今後も協議を続ける方針を示した。
生息地区に住む住民の大半は観光客を相手にした観光業で収入を得ており、観光客の立ち入り禁止となれば、生活苦に直面することは不可避となるため、移転を含めた対策が必要となっている。
州政府では同州内には住民を受け入れる移転先の候補が数多くあり、集団移転にも対応できる、として住民の早期移転を最優先で行いたい意向という。