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賃金の高い自治体は発展し、その逆は衰退した

最低賃金の格差、18年度から1円縮小 改善16年ぶり(朝日新聞)

 2019年度の最低賃金(時給)の改定額が9日、全都道府県で出そろった。最高は東京の1013円で、神奈川とともに初めて1千円を超え、最低額は790円で15県が並ぶ。東京と最低県の地域間の格差は223円で、18年度の224円から1円縮小する。金額差の改善は16年ぶり。

 厚生労働省の審議会は7月下旬、都道府県をA~Dのランクに分け、28~26円の引き上げ目安額を示し、これをもとに各地の審議会が改定額を議論してきた。

 引き上げ目安を上回る改定額を出したのは19県。700~800円台の地域が目立ち、東京との金額差をわずかに縮めることになった。厚労省は「最低賃金が高い都市部への人口流出を懸念した地方の実情が表れた」としている。18年度、最も低い鹿児島(761円)は目安の26円を3円上回る29円の引き上げで単独の最下位を脱出する。29円の引き上げ額は28円上げた東京などを超えて全国で最も高い。

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 さて「日本最低」だった鹿児島を筆頭に奇妙な横並び意識が現れたのか、2019年度の最低賃金を790円とする県が続出したようです。この結果、地域による最低賃金の差は16年ぶりに縮小されたとのこと。今から16年前と言いますと第一次小泉内閣の時代ですね。この歴代最悪の総理大臣の時代から日本は意図的な格差拡大へと舵を切ったわけですが、ようやく僅かに踏みとどまったところでしょうか。

 しかし、横並びチキンレース各県の最低賃金が790円、一方の東京は1013円です。まだまだ格差は大きく、地方在住者にとっての最高の努力は「上京する」に尽きる状況と言わざるを得ません。結局のところ最低賃金は、まさしく最低賃金で働く人だけに関わる話ではなく、「最低ではない賃金」を決める際の基準でもあります。最低賃金の低い地域は、その平均賃金もまた低いですから。

 同系列の店舗でバイトするにしても、都内の店舗と地方の店舗では、時給が全く違うのが当たり前です。正社員として働くにしても、勤務地により地域加算手当や、それに準じるもので結構な差がある会社も多いことでしょう。仕事は同じでも、住むところによって給与は大きく異なります。そしてこの格差は――働く人、本人の努力の埒外で生まれるのです。

 家賃は、確かに東京近郊と地方では差があります。一方で、公共交通機関が整い気候も安定した首都圏と、自動車が必須で自然災害に振り回されがちな地方とでは、当然ながら後者の方が生活コストは高く付きます。ましてや安売り店が激しい競争を繰り広げる首都圏と、そうでない地域とでは、いざ節約しようとしたときに有利なのがどちらであるか、比べるまでもないでしょう。

 賃金が上がると雇用が失われると、そう強弁して憚らない人もいます。一方で、東京の高い人件費を嫌って雇用が流出したという事例は、この格差が広がり続けた16年間の間で一度たりともないわけです。逆に地方の安い賃金を目当てに事業者の進出があったかと言えば、挙げられるのは苦し紛れの例外や失敗例ばかりでしょう。どれほど東京の人件費が他県以上に上がっても、雇用は東京に集中したのです。

 製造業は、概ねどこでも成り立ちます。だから自治体が莫大な補助金を献上して工場を誘致しても、吸われるだけ吸われて早期に撤退される事例が後を絶ちません。ただ、そうであるからこそ30年ばかり昔の、夢物語ではなく事実として製造業が強かった時代の日本は、東京以外の繁栄が成り立ったとも言えます。製造業は都会であることを必要としないからこそ、地方への展開があり得た、と。

 一方で、より遅く生まれた産業――典型的にはIT産業などは、製造業とは違って地域に縛られる存在です。IT化は地域要因を解消するかと問えば、結果は真逆なのです。IT化が進めば世界とは言わないまでも、日本中どこでも同じように仕事ができるようになるのだと、そうした思いつきを語る人は少なくありません。ところが奇妙なことに、IT系の産業ほど東京に集中しているのが実態ではないでしょうか。

 この理由はともかくとして、新しい産業ほど首都圏に固まっているわけです。地方経済が衰退し、日本全体の人口が減少に向かう中で、東京だけが発展を続けてきたのは、地域に縛られる=地方には移転できない産業の勃興に依るところも大きいと言えます。そこで行政が「日本全国」のためにできることは、果たして何があるのでしょう。東京ばかりが栄えても、日本全国でマイナスなら意味はありませんので。

 昔ながらの「都会に縛られない=移転可能な」産業である製造業へのノスタルジーを持ち続ける人もいますが、それは新興国との「下向きの」競争への道であり、90年代以降の日本が失敗してきた道でもあります。しかしIT産業が特定地域に集中する傾向は、必ずしも日本に限ったことではないようで、これが衰退する地域経済の起爆剤になる可能性は考えにくいところです。そして緩和策としては税金による分配ですが、これに背を向けたがるのが格差拡大を続けた16年でもあったと言えます。まぁ、そうそう都合の良い特効薬などありはしないでしょうけれど、16年前から良い方向に向かっていないのは確かです。

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