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残業大好き昭和上司が「残業するな」という不毛

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今年4月、「働き方改革関連法」の一部が施行され、残業時間に罰則付きの上限規制ができた。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「企業は長時間残業をする社員を監視していますが、よろこんでサービス残業をする“仕事大好き人間”は潜在的に多く、今後は企業が労基署に処罰されるようになる」という――。


※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kilhan

■「仕事大好き人間」がかける大迷惑の実態

今年4月、働き方改革関連法の一部が施行され(※)、大企業の残業時間の罰則付き上限規制と、年5日の有給休暇の時季指定付与が義務づけられた。

※:中小企業は2020年4月1日施行。

もし違反者が出れば、罰則が科されるうえ、経済的損失や社会的ダメージを受けるだけに企業各社は懸命の対策に追われている。対策を主導するのは企業の人事部だが、彼らが最も目を光らせている対象が「仕事大好き人間」だ。

仕事大好き人間にはポジティブな印象があるが、会社という空間には想像を絶するタイプも存在する。普通に仕事が好きでたまらない人はまだいいが、仕事を頼まれたら嫌とは言えない真面目で責任感が強い人もいる。さらに“お客さま命”で長時間労働も厭わないカルチャーに染まった人物・部門・部署もある。

そうした人たちに対して、国が決めた働き方改革関連法だからと「残業抑制」や「定時退社奨励」を伝えても、ひとごととしか思わないようだ。多数のクリエイターを抱えるゲームソフト会社の人事課長はこう語る。

■「不必要な残業をする人を会社から追い出すしかない」

「早く帰れ、と言ってもまず帰りません。なぜなら仕事が楽しくてしょうがないからです。逆に『仕事の期限が迫っているのに、会社から出て行けとは何事か』と、文句を言ってくる管理職もいます。あるいは早く帰ったら、自分のポジションが奪われてしまうのではないかと心配になる社員もいます。自分の地位をライバルに乗っ取られると不安になり、うつになった社員もいるぐらいですから」

こうなると当然、会社としては法的リスクに備えなければいけない。この人事課長は「本来なら長時間労働による健康悪化が創造力さえ奪うことを、時間をかけて丁寧に説明し、腹落ちさせる努力が必要ですが、もはや間に合いません。今は不必要な残業をする人を会社から追い出すなど、徹底した残業規制をするしかない」と嘆く。

1人も法違反者を出さないためには、社内の“残業大好き人間”をあぶりだす必要があるのだが、その効果的な手法に現場は頭を悩ませている。

■限度時間を超えて1人でも働かせると刑罰の対象

その困窮ぶりをリポートする前に、今回の法律の「上限規制」の内容を簡単におさらいしておこう。

残業時間の限度時間は原則として月45時間、年360時間。ただし、臨時的な特別の事情がある場合、労使協定を結べばそれ以上働かせることができるが、上限がある。

労使協定を結んだ場合の具体的な上限は……。

(1)年間の時間外労働は720時間以内
(2)休日労働を含んで、2カ月ないし6カ月平均は80時間以内
(3)休日労働を含んで単月は100時間未満
(4)原則の「月45時間」を超える時間外労働は年間6カ月まで

――という制限を設けている。限度時間を超えて1人でも働かせると刑罰の対象になる。

とくに厳しいのが(4)の「月45時間」が年6カ月しか使えないことだ。週2日の会社なら月の出勤日は22日。1日平均2時間しか残業できないことになる。

そうでなくても新年度の4月、株主総会時期の6月、半期決算の9月、年末、年度末決算の3月など会社によって繁忙月が必ずある。「月45時間」超で7カ月働いた社員が1人でもいれば、労基法違反となり、罰則の対象になる。

また(1)の年間の残業時間の上限が720時間だと、月の平均は60時間までとなる。60時間を超える人はどれだけいるのか。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stockstudioX

■10人に1人が「時間外労働の上限規制」違反予備軍

エン・ジャパンの「企業の『時間外労働の上限規制』実態調査」(2019年6月5日発表)によると、従業員数300~999人の企業では61~80時間が9%、81~100時間が1%の計10%。つまり、ひとつの会社に30~100人程度の法違反予備軍が存在することになる。

その人たちをどうやってあぶりだすのか。最初に思い浮かぶのは社員が申告した残業時間だが、これは当てにはならない。なぜならサービス残業をしている可能性があり、もし労働基準監督署にばれたらサービス残業を含めた残業時間の合計で摘発されるからだ。

建設関連業の人事部長は2つの方法で実際の残業時間を把握していると語る。

「ひとつはIDで管理している入館・退館記録です。入口付近には監視カメラをつけているので誰が何時に会社に来て、帰ったかを確認できます。もうひとつはパソコンの起動時のログイン・ログオフの記録です。昔はタイムカードがありましたが、退社記録を印字してから残業する人もいるので役に立ちません」

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