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川崎市のパブリックコメントへの意見

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 先日で締め切られましたが、私の提出した意見は次のとおりです。

 5000字の字数制限があるため、書き切れないものは多々あります。

 先般、ご照会した「正論」への寄稿も同じ程度の字数制限があり、すべてを言い尽くすことは困難です。

【以下、提出意見】

 条例でヘイトスピーチに対し、罰則を科すことは表現の自由を侵害するものとして反対である。
 こうしたことが全国の自治体に波及する可能性もあり、断じて容認できない。
 以下、弁護士の立場で反対理由を述べる。

言論に刑罰を科すことは国の解消法の趣旨にも反する違憲条例であること

 現在、特定の被害者がいない表現行為に対し、その内容そのものを規制し、罰則を与える法律はない。国の2016年5月に成立した「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、いわゆるヘイトスピーチ解消法にもは罰則はない。
この立法趣旨は、ヘイトスピーチは言論に過ぎず、特定の個人の人権を侵害するものではないことから、これに刑罰を科すことが表現の自由を保障する日本国憲法の価値に相容れないからである。

 そうした観点からみれば、条例でヘイトスピーチに罰則を科すことは、このヘイトスピーチ解消法の趣旨に反するものであり、違法である。地域によって異なる条例を制定してよいという趣旨とは到底、考えられない。

表現の自由を侵害する違憲条例であること

 それ以上に表現内容に罰則を科すのは表現の自由を直接、侵害するものとして端的に憲法違反である。

 「表現の自由に留意しつつ」となっているものの、この場合の「留意」とは所詮は、言ってみただけのレベルでしかなく、全く考慮していないことと同じである。

 表現行為に規制を加え、刑罰を科すことが許されないのは、その言論に止まらず、広範囲に萎縮効果を与えるからというのは常識ですらある。

 少なくとも起訴、有罪ということにならなくても、その前段階としての逮捕や捜索差押えなどの強制捜査を可能にしてしまう。起訴されなかったとしても、強制捜査が行われれば打撃ははかりしれない。言論に対する直接の弾圧となる。

 ここまでの内容であれば大丈夫だろうということは通用しない。こうした規制は徐々に対象が広がっていく。もともとが曖昧な概念であるにも関わらず、それはこれも差別だろ、ということで言葉狩りにもつながりかねない。

政治的意見とヘイトの区別も困難であること

 あからさまな人種、民族差別であるならばまだしもそれが政策としての主張であってもヘイトと評価されかねない。「移民は出て行け」という表現はアウトで、「移民政策を改め在留外国人には退去を求めるべき」という政策を訴えるのはセーフということになるのか。その理由の違いもある。「国民の仕事を奪うな」もあれば「習慣の違う外国人の受け入れ優遇策をやめよ」というのとでは違うのか。その動機さえ示さなければセーフとなるのか。

 朝鮮学校への補助金を巡っても川崎市の属する神奈川県自体が支出を止めているが、不当な補助金の支出をやめよという主張も、その動機が朝鮮人憎しだったらヘイトと評価されるのか、というようにこの問題は規制の対象か否かがその内容から判別できない。

段階を踏む、有識者の意見を聞くは、全く意味を持たないこと

 三段階(勧告、命令、告発)によること、有識者とされる人たちで構成する差別防止対策等審査会の意見を聞くということは手続論としても意味を持たない。

 しかし、1回目、2回目、3回目というのも要はヘイトスピーチを行ったという流れの中での判断となる。例えば1日目はこの程度なら大丈夫だろうと思ったら勧告を受けた、それを受けて表現を改めたが命令を受けた、それを受けて表現を改めたら命令違反として告発された、ということも想定される。これでは3段階を踏む意味はない。

 審査会に意見を聴くことに意味があるとすれば、市長の濫用行為を抑制するための手続保障ということになるが、その構成員である有識者がどのように選任されるのかという問題もさることながら立法目的がヘイトの抑止なのだから、有識者が勧告を見送るように発言すれば、それ自体がヘイトにお墨付きを与えることになりかねず、そうなると勢い勧告を進言することになりやすい。市長が諮問する以上、ヘイトに該当するという判断が先行することが前提とされている。要は、市長は自分の判断のみで行っていないという体裁に過ぎなくなる。

 また、市長は選挙によって選出されるが、その市長によって価値判断が異なるということもある。
 結局、ヘイトかどうかの区別が事前につかない、それが政治的言論に対し、萎縮効果をもたらすのである。

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