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表現の不自由展が中止という不自由

愛知県内で1日に開幕した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(津田大介芸術監督)の実行委員会は、3日、企画展「表現の不自由展・その後」を中止すると発表しました。

企画展では、慰安婦を表現した少女像などを展示していました。抗議の電話が殺到するなどしていて、津田氏などが内容の変更を含めた対応を検討していましたが、「撤去しなければガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というFAXなどがあり、「テロ予告や脅迫の電話もあり、これ以上エスカレートすると(来場者が)安心して楽しくご覧になることが難しいと危惧している」と、芸術祭の実行委員会会長を務める大村愛知県知事は、中止を決定し、その理由を述べています。

少女像や憲法9条をテーマにした俳句、天皇に関する作品など、各地の美術館から撤去させるなどした20数点を展示していました。河村名古屋市長が「日本国民の心を踏みにじる行為」などとして、展示の中止を求める抗議文を大村氏に提出しました。これに対して、大村知事は、表現の自由を保障する「憲法21条」に反して、「一連の発言は憲法違反の疑いがきわめて濃厚だ」と非難し、論争になっています。

その通りだと思います。各地の美術館から撤去された作品の展示については、いろいろな意見があると思います。それを素材に表現の自由について考えてもらう企画だったのだと思います。特に、河村氏は、国会議員の頃から、慰安婦問題が「事実でなかった可能性がある」と言っていた政治家です。1市民ならともかく、権力を持っている市長の立場で中止を求めることは、政治の介入になり、あってはならないことだと考えます。

津田氏は、「対応するスタッフの疲弊する姿を見て、継続は難しいとの知事の判断に同意した」、断腸の思いと話しています。「抗議の殺到で中止せざるを得なくなることも予想していた」としていて、そうした事態への対応が十分だったかは、検証する必要があると思います。

この中止について、日本ペンクラブ(吉岡忍会長)は、河村市長の発言を「憲法21条2項が禁じる検問にもつながる」と批判する声明を発表しました。声明は、「表現の不自由展・その後」を継続すべきだとした上で、「行政がやるべきは、作品を通じて制作者と鑑賞者が意思を疎通する機会を確保し、公共の場として育てていくことだ」としています。

これも、その通りだと思います。新聞労連や民放労連などでつくる「日本マスコミ文化情報労組会議」は、「行政が意に沿わない表現を排除すれば事実上の「検閲」に当り、社会から表現や言論の自由が失われる」と批判し、「多様な表現や意見に寛容な社会を取り戻す」としています。会場前では、「見たかったのに!!暴力で「表現の自由」を封殺するな!!」との横断幕を掲げた人たちが、抗議集会を開いたりしています。憲法や歴史学者など7人も、展示の再開を求めています。

昨日7日、愛知県警は、危害を予告するFAXを送ったとして、威力業務妨害の疑いで男1人を逮捕しました。展示の中止を巡る動きは、社会が「不自由で、息苦しく」なっていることを表しているのでは、ないでしょうか。この機会に表現の自由について議論を活発にし、表現を委縮させたり、展示を自粛したりすることがないようにしなければ、と思います。

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