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脅迫犯人の逮捕は朗報だが

 今回の「表現の不自由展」について、脅迫ファクスを送った男が逮捕されたとのことだ。愛知県警の機敏な対応で一安心だが、テロ予告も含めて、抗議の電話やファクスは他にも相次いだということだ。犯罪にならない範囲でのいやがらせも多かったようだ。警察が乗り出すためには、「威力業務妨害」といった犯罪要件を満たす必要がある。今回はファクスという、足のつきやすい道具を使ったことで逮捕できたわけだが、一罰百戒的な「見せしめ」としての効果を期待している面もありそうだ。

 展覧会というのは、一つの「意見表明の場」と見ることができる。意見にはいろいろあるから、自分の気には入らなくても、それは一つの意見だ。見て不愉快を感じるとしても、すべての人間の感性が同じではない。いろんな意見が交錯するとしても、気に入らなければ見なければいいので、その意見が大事だと思っている人の邪魔をしてはいけない。それが言論・表現の自由というものだ。

 考えてみると、この「表現の不自由」問題は、現代日本における時代思潮の変わり目を示す、かなり大事な問題のような気がする。だから私も興味があったので、結論を早く言えば、「たてまえとしての自由・平和・平等」が「飽きられてきた」ような気がするのだ。自分でものを考える人たちが、くたびれて来たのかもしれない。「自分が為すべきことを、誰か他人に決めてもらいたがっている」人が多くなっているのではないか。選挙での投票率の低下も、その現象の一つの指標なのかもしれない。

 そう思うと、とても不気味なのだが、「命令されて、一億一心で突撃することに喜びを感じてしまう日本人」のイメージが、亡霊のように立ち上がってくる。折から原爆忌があり、終戦記念日が来るのだが、それが「あやまちを繰り返さない」ための誓いだった筈だが、みんなが一斉に同じことをする「一億一心」に見えてしまう瞬間があるのだ。

 そんなのはたぶん私の妄想だと思うが、この暑さの中でも、熱に浮かされない冷静な心を取り戻したいと思っている。きょうは立秋だそうだが、秋の気配はまだ感じられない。昭和20年の8月も暑かった。天皇の放送があって、「戦争は天災ではなくて、誰かが止めると言えば終る」ものであることを知って驚いた。

 いろいろなことを見てきた86年間である。一億には一億の心があっていい。それぞれの人生を抱えて、味わい深く生きて行こう。ただし私については、戦争につながるものは、もう何も要らない。あれはもう充分だ。

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