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フランス、脱階層社会の試み 下

イメージ 出典:Flickre:woodleywonderworks

Ulala(ライター・ブロガー)

【まとめ】

・仏の障がい児への対応は「教育」ではなく「福祉」であった。

・2005年から、障害有無を問わず授業する「インクルーシブ教育」が開始された。

・「混ぜる」ことで、多様な他者に対する理解力が高まる。

【注:この記事には複数のリンク等が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47275でお読みください。】

性別を関係なく混ぜる、社会層関係なく混ぜるなど、フランスでは、さまざまな「混ぜる」が意識しされてきたが、日本に比べればかなり遅い出発ではあったが、それはまた、障がい児に対しても活動がなされている。

身体機能に障がいがある30代のフランス人男性と定期的に会話する機会に恵まれ、彼の視点から見る様々な話を聞いたが、その話の中で、フランスでは近年まで障がい児が通えるクラスが一般の学校内になかったと言う事実にびっくりしたものだ。というのも、現在で言う特別支援学級である障がい児を支援するクラスは、日本では1945年から学校内に存在していており、私自身は、特別支援学級が学校の中にあることが普通という環境で育ったからである。

フランス人男性はこう語る。

「僕が小学校の頃は、障がい者が学校に行くことは許されてなかったんだ。それでもって養護学校は遠くて行けなかったし。中学校からはやっと普通の学校に行けるようになった。その後、寮に入って遠くの障がい者の就職を支援するとこに行ったが、そこにいる人らは、大抵算数もできなくて、フランス語書くこともできなくて驚いたね。僕は学校に行けなくても両親が家庭教師をつけくれたから何とかなったけど、そうできなかった人たちが多いってことを知ったよ。」

そこで調べてみたら、フランスで学校内に障がい者を支援するクラスが設けられたのは、なんと1991年のことだと言う。(参照:平成22年度障害のある児童生徒の就学形態に関する国際比較調査報告書)日本が普通に教育すべき対象と捉えていたのと違い、フランスでは障がい児に対する対応は「福祉」と捉えられており、フランスでは学校教育体系の中に障がい児教育が位置するまでに、長い時間がかかったのである。

子供達が通っていた地元の小学校では、障がい児が在籍するクラスCLIS(La classe pour l’inclusion scolaire)は、ほんの6,7年前にできたばかりだ。しかし、そのクラスができた当時起こった出来事は、今でも鮮明に覚えている。

CLISを設置するかは、学校の規模によるので全ての学校に存在するわけでもなく、少し遠方から通うお子さんたちもいる。そのため、そういった子供たちを送り迎えする人もいるわけだ。子供を迎えに学校の外で待っていると、CLISの子供たちがニコニコしながら送迎の車の方に向かっていく光景がよく見られた。

そんなある日、事件が起こった。なんと、学校から出てくる障がいのある子供たちに対して怒鳴り声をあげる親が現れたのである。その親に対し、迎えにきていた運転手の女性が対抗すると、今度は女性を侮辱する言葉で応酬してきた。どうも、障がい児が在籍するクラスが学校の中にあることに反対する親の一人だったようだ。結局その日はなんとか収まりそのまま帰って行ったが、次の日、二人の上司を連れた運転手と学校の校長先生を交えた話し合いが持たれ、最終的には暴言をはいた親が訴えられると言う形で終わった。

ハッキリ言って、まず、障がい児が学校に来ることに暴言をはく理由がまったく理解できず、目の前に繰り広げられた光景に大きな衝撃を受けたものだ。分離が長らく続いたフランス社会には、いまだ障がいがある人々に対する差別があるのは事実なのだ。そんな状況の中、障がい者がこの社会の中で共存して生きていくためには、自分のことを理解してもらう必要がある。そうしなければ生きていけない。いかに他者とつながりをつけていくか、そのために自らの障がいをアピールすることも必要であり、学校内に存在し、誰もが身近に感じ、その状態が日常の一つと認識することが大切なのだろうと、あらためて思う。

現在では、インクルーシブ教育(障がいのある者とない者がともに学ぶことを通して、共生社会の実現に貢献しようという考え方)が2005年から始まり、障がい児用のクラスが学校内に設置されているだけではなく、障がいがある子供が、同世代の障がいがない仲間たちと隣同士で学習する取り組みも行われている。子供たちが通う中学校でもその取り組みは行われていて、各障がい児の能力にあわせたカリキュラムに沿って一部の授業を同じ教室で勉強している。一緒に生活していく上で発生する問題やその解決法をともに共有していることは子供たちから聞く話から時折伝わってくるが、その内容からも、分離されていた時代とはまた違う考え方を持つ世代が確実に育っていることが読み取れるのだ。

性別、宗教的、人種、移民、貧困層、特別な支援を必要とする人たちなど、世の中には普通に存在する。もちろん、メリットもデメリットもあることは間違ないのだが、共存するためにはお互いを知ることが必要であり、そのためには可能な限り分離しないで、身近にいることが重要になってくる。特に、いろんな世界を身近な存在として感じながら学校生活を送ることは、多様な背景を持つ他者に対する理解力を高めることにもつながる。それは円滑な人間関係が構築される環境を生み出す結果を生み出していくのだ。

多様な人々が混ざり合い、一見、混沌(こんとん)とした世界が広がっているようにも見える現代のフランスではあるが、そのフランスを通して、あたらめて「混ぜる」ことの大切さについて再認識させられるのである。

はこちら。全2回)

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