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それは目の前に迫る問題か? それとも頭の体操か? ~「AIと著作権」をめぐって

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「論究ジュリスト」という「ジュリスト」のスピンオフ的な季刊誌があって、長らく購読していながら、忙しい時はどうしても優先順位が落ちるものだから、ずっと積読にしてしまっていたのだが、ちょうど余裕も出てきた夏の時期にちょうどいいタイミングで届いた、ということもあって、珍しく開いてみた。

論究ジュリスト(2019年夏号)No.30「特集1 「自国第一主義」と国際秩序/特集2 震災・原発事故と不法行為法」(ジュリスト増刊)
出版社/メーカー: 有斐閣
発売日: 2019/08/07
メディア: ムック
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そしたら運のいいことに「AIと社会と法」という連載(第6回)のお題がちょうど「著作権」
先日の法律時報の特集記事に続き、実に旬なテーマだったので、ここで少しご紹介してみることにしたい。

宍戸常寿[司会]=大屋雄裕=小塚荘一郎=佐藤一郎=奥邨弘司=羽賀由利子「ATと社会と法-パラダイムシフトは起きるか?No6/著作権」*1

確認してみたら、この連載が始まったのは昨年春号から。
第1回から登場する宍戸教授、大屋教授、小塚教授、佐藤氏に、テーマに応じてゲストの先生方が入る、というのが定番の構成のようで、今回は自称”テック系著作権法研究者”の奥邨弘司・慶大教授と、先日の著作権法学会でも登壇された国際私法の羽賀由利子・金沢大准教授のお二人が加わる、という構成である。

そして、論じられている内容をざっと挙げていくと、以下のような感じになるだろうか*2

1「AIの学習用データに関する著作権問題」(139頁)
2「AI作成コンテンツに対する保護」(139頁~144頁)
 2-1)「AI作成コンテンツに著作物性を認める場合の問題」(141頁~142頁)
 2-2)「AIは著作者か?」(142~144頁)
3「AIによる著作権保護」(144頁、148~150頁)
4「AIによる著作権侵害」(144~147頁)
5「EU新著作権指令について」(147~152頁)
6「AIと著作権以外の知的財産法との関係」(152~154頁)

先日の法律時報の特集(著作権に関しては上野達弘教授、横山久芳教授が執筆)では、もっぱら上記「1」と「2」にフォーカスして議論が展開されていたように思われるが(以下リンクもご参照のこと)、今回の記事では、「1」のところは「平成30年著作権法改正で対応済み」*3ということであっさり片付けられており、もっぱら「2」に議論の中心が置かれていること、さらに進んでAIを著作権保護ツールとして用いる場合の問題点や、AIによる著作権侵害の可能性にまで議論が発展している、という点に特徴があるといえるだろう。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

「法律時報」の特集で掲載されていた各論文は、別所氏や平嶋教授の論文に象徴されるように、「AIが人間の手を離れて勝手に創作し始める」というところまで想定するのは過度な飛躍では?という意識の下で書かれていたように思われるし、どの論文も、基本的には「現行法の枠組みの中でどう整理し、解釈するか」というアプローチに貫かれたものだった。

これに対し、今回の記事では、「自律的に創作するAI」を念頭に置いた発言もあちこちに散見され*4、(好き嫌いは分かれるところだろうが)それが、参加者の著作権法のパラダイム転換の必要性を示唆するようなコメントにもつながっていて、なかなか興味深い。

例えば、

「表現が仮に似ていたとしても、似たところがあったから依拠しているという推認をするという扱い自体が、実は今後、再考を迫られるのではないかと感じました
「アイディアを持たずに、表現だけを高速で大量に生成する主体、機械が現れた。そうしますと、そこに保護すべき本質があるのかという問題になってきたように感じられて、実はアイディアと表現の関係が再検討を迫られているということなのかと思いました。」(以上、小塚141頁、強調筆者、以下同じ。)

「著作権=人間の知的成果、ということをあまり強調しすぎますと、近い将来、AIがどんどんコンテンツを生み出し、我々が普段接するコンテンツの多くがAI製という時代が来ると、著作権法は、『人間が作ったコンテンツです。珍しく貴重なものです』という具合に、国宝とか骨董品とかを保護するような法律になりかねないような気もします。それでいいのかどうか。そうではなくて、著作権法は、現在同様に、我々が日常接するコンテンツを保護する法律という位置付けを維持するのであれば、人工知能が作るものも完全には無視できないのではないか、というふうに思っております。」(奥邨143頁)

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