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学校が恐れる"わが子ファースト親"の異常行動 小・中・高を"保育園化"させる元凶

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 わが子に「失敗させたくない」と思い込む親が増えている。教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこ氏は「わが子が何か失敗すれば、そのまま負け組になってしまうと考える親たちは『もっとウチの子に対するケアをして』とささいなことでもクレームを入れるなどして教員を疲弊させている」という――。

写真=iStock.com/D76MasahiroIKEDA

学校が心底恐れる、保護者からの「朝の電話」実例集

 筆者は、私立の中高一貫校を中心に学校取材を長く続けている。そうした中で最近、小学校、中学校、高校の「保育園化」の傾向を痛切に感じている。しかもこれは、面倒見のよさを売りにする中高一貫校の人気ぶりと比例している。

 「面倒見のよさ」とは、1時間目の前に「0時間目」の授業をしたり、放課後に補習を実施したりして、生徒に学習習慣を身につけさせる指導を指す。この「面倒見のよさ」を曲解する保護者が増殖しているのだ。そのために生じている現象が「保育園化」である。

 いったい、どういうことか。先日、ある私立中学の教頭先生に聞いた話をいくつか紹介しよう。

 平日の朝は、どこの学校にも保護者から電話やメールで連絡がくるが、ある朝、次のような保護者の声があったそうだ。

【保護者からの電話その1】

 「中間試験の結果、ウチの子悪かったですよね? それで、毎日、補習されてるじゃないですか?(ウチの子が)もう、補習続きで行きたくないって言うんですよ……」

筆者解説:補習をすることで落ちこぼれを作らないというこの学校方針を気に入って子どもを入学させた保護者だが、考えが変わったらしい。

【保護者からの電話その2】

 「もうすぐ、校外学習があって、現地集合じゃないですか。ウチの子、1人で行けないんですけど、学校ではどう対応してくれるんですか?」

筆者解説:典型的な過保護の保護者。

【保護者からの電話その3】

 中3男子の父親から「担任はいるかい?」と言われ、電話に出た教頭先生が「あいにく現在、離席しています」と返答すると「校内には来てるのかい?」とさらに聞かれたので「どうかされましたか?」と言うと、「ウチの子が友達から悪口を言われた……らしいんだよね」と。

筆者解説:当事者である子どもの話はあまり聞かず、子ども同士のトラブルを知ってヒステリーを起こしている妻の話を鵜呑みして、一直線に学校へクレームを入れる保護者。

【保護者からの電話その4】

 「先生、聞いてくれます? ウチの子(中3女子)ったら、夜は10時には寝ちゃうので、ろくすっぽ勉強もしないし、成績は下がっちゃうし。なんとかしてください!」

筆者解説:わが子の成績のこと以外に興味がなく、教員に対して学校外でも働くことを強要する保護者。

【保護者からの電話その5~7】(同じ案件が3件)

 「ウチの子、朝起きないんですよ~」

筆者解説:子どもを起床させるのは学校の仕事だとでも思っている保護者。

【保護者からの電話その8~9】(同じ案件が2件)

 「体調不良で、本日、学校をお休みします」

筆者解説:欠席のお知らせ。これは問題ない。

モンスターペアレント以上の理不尽さ・非常識さ

 ほとんどの保護者は自分たちが家庭でやるべき「子育て」をしっかりやっているが、こうして学校を巻き込んだり、アウトソーシングしたりする親も少なくないのだ。モンスターペアレントの類はこれまでもしばしば問題になったが、上で紹介した事例は理不尽さ・非常識さのレベルが数段上という気がする。

写真=iStock.com/damircudic

 問題は朝の電話だけにとどまらない。保護者からの「信じられないクレーム」に多くの学校が頭を抱えている。2つ事例を挙げてみよう。

 ひとつは、ある中学校で起こった話だ。授業中に勝手に歌い続ける生徒がいるので、教員が注意したところ、その親が学校に猛抗議をしてきた。いわく「好きなことを自由にさせるのがわが家の教育方針! ウチの子には歌う自由と権利がある!」とのことで、担任の教員はほとほと困り果てた。

 別の中学校ではこういう話を聞いた。ある運動部に入った生徒の親から「目が弱いので、部活中のサングラスの着用許可のお願い」が入ったそうだ。もちろん、学校側は快諾。しかし、これには続きがあった。その親が「わが子だけが着用しているとイジメの対象になりかねないので、部活メンバー全員のサングラス着用」を要望してきたのだそうだ。

 前代未聞の要求に部活顧問は眉をひそめたが、部のキャプテンが「そんなことでイジメを行う人間は私たちの部にはいません」と“一喝”するとその親も黙ったそうだ。

わが子が転ぶ可能性を“クソ丁寧”に排除する親

 これは一件落着のケースだが、このようにわが子かわいさのあまり、学校を何かのサービス産業と勘違いしたかのような親が増えている。しかも、本人にそういう自覚がない。なぜ、こんな非常識な親が増えているのか。

 ある進学校の校長は筆者にその理由をこう推察してくれた。

 「セカンドチャンスを許さない日本社会においては『負け組』に陥ることはあってはならないことなので、親は『子どもの失敗』が必要以上に怖いのだと思います。従って、過保護・過干渉な親が増えてきているのではないでしょうか」

 筆者も、この「転ばぬ先の杖」とばかりに、まだ何も起こっていない段階から、わが子が転ぶ可能性を“クソ丁寧”に排除しようとする傾向が問題の温床になっていると感じる。なりふり構わぬ、わが子ファーストのメンタリティはちょっと異常だ。

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