- 2019年08月08日 10:24
英国大使が平壌からツイートする時代の「北朝鮮と観光」とは 『北朝鮮と観光』礒﨑敦仁・慶應義塾大学准教授インタビュー - 澤田克己 (毎日新聞記者、元ソウル支局長)
2/2金正恩氏は経済成長の起爆剤として観光に期待
礒﨑氏は、小学生の頃から日本国内のユースホステルに泊まる一人旅をし、15歳で初の海外一人旅をしたという元バックパッカーである。旅先で見たカジノに関心を持った揚げ句、ラスベガスで数週間のトレーニングを受けて日本カジノスクールという専門学校でバカラの実技も教えていたという。
そんな氏が政治研究という本業のかたわらに目を付けたのが、「北朝鮮の観光」だった。もちろん趣味が高じてというだけではない。政治に比べると、観光政策というのは資料集めが容易だということに気付いたのだという。
礒﨑氏は、朝鮮労働党中央委員会の機関紙で北朝鮮の公式見解を載せる『労働新聞』を毎日丹念に読み込んで、北朝鮮の論理を解明することに務めている。非常に大切だが、骨の折れる作業だ。しかも、疑問があっても追加の資料は簡単に入手できない。
それに比べると、観光に関する資料は豊富だ。北朝鮮は売り込む側だから、積極的に資料を出してくる。観光政策について聞きたいというインタビューなら、当局者も喜んで応じてくれる。日本人観光客の受け入れにしても30年前から続いているから資料は蓄積されてきており、その変化から読み取れるものが出てくる。
さらに、金正恩国務委員長は外国人観光客の誘致に熱意を見せており、大勢の軍人を工事に動員して日本海側に一大リゾート施設を建設してもいる。経済成長の起爆剤の一つとして観光に期待しているようなのだ。観光政策には、そんな金正恩氏の思惑もにじみ出てくるのである。
たかが観光と言うなかれ。なんでも極めれば奥は深いのである。そんなことを改めて考えさせられる書でもある。
参考までに付け加えておくと、 日本は北朝鮮に対して厳しい制裁を科しているが、渡航については「自粛勧告」である。国民の自由な移動を制限することはできないので、「禁止」ではない。アントニオ猪木氏や有田芳生氏のように国会議員も渡航を続けているし、今でも日本からのツアーはある。
ただし、平壌に日本大使館はないから一定のリスクがあることには注意が必要だ。帰着した日本の空港で北朝鮮旅行だったとばれると、現地で買った土産はすべて没収処分の憂き目にあう。
でも「禁断の旅行ガイド」として本書を手に取るだけなら、そんなリスクとは無縁である。
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