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社会進出した女性に求められているのは、思いやりや優しさによって世の中に貢献することです - 第95回坂東眞理子氏(前編)

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国民的大ベストセラー『女性の品格』の著者・坂東眞理子氏。官僚時代はさまざまなポストを歴任(統計局消費統計課長、総理府男女共同参画室長、内閣府初代男女共同参画局長など)。女性の社会進出を政策面で牽引し、埼玉県副知事、国際舞台では女性初の総領事(在豪州ブリスベン総領事)としても活躍した。現在、坂東氏は昭和女子大学でグローバル人材の育成に情熱を注いでいる。「男社会」から、ダイバーシティ、すなわち多様性が重視される共生社会へと大きく時代が変化する中、自身の経験を、次代を担う若い女性たちの糧とするためだ。第95回の賢人論。テーマは「人生100年時代の女性の生き方」。坂東氏の言葉は「真の正論」に宿るエネルギーに充ちていた。

取材・文/木村光一 撮影/公家勇人

権力志向、拝金志向から抜け出せなくなった女性たちに「お金じゃないよ、心だよ!」と言いたかった

みんなの介護 「男女機会均等法」が施行されたのが1986年。『女性の品格』はそのちょうど20年後に出版され、これまで330万部を超える大ロングセラーとなっています。そもそも、なぜその時期に普遍的な「女性の美学」を説いた著書を発表しようと思われたのでしょうか?

坂東 ITバブルのあと、世の中には「稼ぐが勝ち」「お金さえあれば良い」といった風潮が蔓延していました。広がる経済格差を背景に、多くの人が成功して権力を握って大金を手に入れようと躍起になり、第一線で働く女性たちもその例外ではありませんでした。

私が『女性の品格』を上梓したのは、男性の轍(わだち)を踏んで権力志向、拝金志向に追随しそうな女性たちに「お金じゃないよ、心だよ!」と言いたかったから。社会進出した女性に求められているのは男性のように生きることではなく、女性らしい思いやりや優しさによって世の中に貢献することだと伝えたかったんです。

みんなの介護 『女性の品格』はどのような読者から支持されたのでしょう?

坂東 出版社に寄せられた読者カードを見ると10歳から90歳まで、驚くほど幅広い年代の方に読んでいただけたことがわかりました。

いちばん印象に残っているのは、銀座へ出かけたとき、どうしても行き先がわからなくて通りすがりの方に道を尋ねたら、その方が偶然『女性の品格』の愛読者で「あの本、ぼろぼろになるまで読みました」と言ってくれたこと。そのとき「著者冥利につきる」とはこういうことを言うのだなと、心底嬉しく思いました。

みんなの介護 300万以上の読者の心を掴めたのはなぜだとお考えですか?

坂東 先ほど『女性の品格』が出版されたのは「男女機会均等法」施行の20年後だったという指摘がありましたが、ふり返ってみると、当時でも、まだ女性たちの側には戸惑いがあったように思います。

たしかに昔に比べれば女性の雇用機会は増えたものの、世の中は相変わらず男性中心。仕事と家庭の「両立支援」も掛け声ばかり。むしろ「女性の時代」「女性活躍」などと囃し立てられることで、かえって「これで良いのかしら?」「この先、どう働いて生きていけばいいの?」とますます不安を募らせていた。

おそらく『女性の品格』は、そんな女性たちにひとつの拠り所として受け入れられたのではないかと、そんなふうに思っています。

『女性の品格』の原点は、周囲に活力を与える活き活きした女性のイメージ

みんなの介護 男性読者の反応はどうだったのでしょう?

坂東 読者の大多数は女性だったと聞いています。男性読者は少なかったのですが、読んだ方は「この本に書かれている“品格”とは女性に限らず、人間全般に求められる美徳だ」といった好意的意見を寄せてくださいました。

ただ、その一方、「いやあ、本音を言うと品格ある女性とお付き合いはしたくないね」と言われた方も。なんでも、そういう女性と一緒にいると「肩が凝る」のだとか(笑)。

みんなの介護 それは意外です。『女性の品格』に書かれている「強く優しく美しく、そして賢く」という理想の女性像は「大和撫子」そのもの。てっきり、男性からも支持が高かったものと勝手に思っていました。

坂東 そういう受け止め方もどうやら日本的な感覚のようです。外国の方からは「古めかしい考え方だ」という反応もありましたから。「日本人の考える女性らしさは保守的だ」と。

みんなの介護 「古めかしい」とは、日本の社会に根強く残る「男尊女卑」を彷彿とさせるという意味でしょうか?

坂東 これは日本人も大いに誤解している点なのですが、武家社会がお手本としていた儒教にもとづく「男尊女卑」の考え方が一般にまで広まったのは明治以降。そもそも日本の伝統などではないんです。

狂言の「わわしい女房」、落語に出てくる江戸の長屋のおカミさんを思い浮かべてみてください。

元来、日本の女性は、とくに庶民の女性はとにかくパワフル。『女性の品格』の原点は、いわばそういったオリジナルの日本女性の姿であって「男尊女卑」の儒教文化と異なり、周囲に活力を与える、活き活きした女性のイメージだったんです。

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