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記念日を派手に祝うカップルほどすぐに別れる

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■相手は未定でも高級ホテルを1年前から予約

「あなたの中にはあの父親の邪悪な血が半分流れている。だからその血が目覚めないように、気をつけないといけない」

そんな母の呪文のようなことばに縛られたまま大学生活を過ごしていたのですが、ちょうどその頃、時代は「モノを贈る」というほうに行っていました。

大学院生の頃には、予備校講師をしていました。夜遅くまで勉強していた特訓クラスの女の子に、たまたま教務室にあったケーキを持っていってあげたら、「先生優しい」と言われて、「そうか」と気がつきました。

それに気づいてから、ちょっと楽になりました。

ケーキの差し入れとか、相手のことを考えて贈るちょっとしたプレゼントは、気持ちの自然な発露として悪くありません。愛情表現のキャパシティがより広がり、ちょっとしたあと押しになってくれると思えました。気づくのが遅すぎたところはありましたが。

ところがそれを何年か続けていくと、バレンタインにはチョコレートを贈らねばならず、クリスマスには高いプレゼントを用意しなくてはいけなくなるわけです。

当時、365日前からホテルが予約できたので、社会人の先輩たちは新宿のセンチュリーハイアット(現ハイアットリージェンシー東京)やヒルトンに、前年のクリスマス明けから予約を入れていました。相手なんかが決まってなくたって、とにかく来年のクリスマスのために夜景のきれいな部屋を押さえてあったのです。

こうなると、もう完全に、恋愛というシステムから逃れられなくなっていきました。

■昔の物語に贈り物をするシーンはなかった

五木寛之さんの小説『青春の門』は、1969年の「第1部 筑豊篇」の雑誌連載から始まった大河小説です。「第2部 自立篇」「第3部 放浪篇」「第4部 堕落篇」「第5部 望郷篇」「第6部 再起篇」「第7部 挑戦篇」「第8部 風雲篇」と続いていて、単行本は「第7部 挑戦篇」で止まったままのとき、2011年に第7部の文庫刊が出るにあたって、解説を書くという御役目が私にまわってきました。

出版社から「ぜひ上田さんにと五木先生がおっしゃってます」と言われて、実はまだ読んでおらず、映画も見ていなかったのですが、五木先生からのご指名も光栄なお話でもあり、第1部から全部読み通しました。

あの頃の恋愛エネルギーというのはものすごい。主人公の伊吹信介は、自分とは何者か、いったい何をなすべきかを問い続け、自分とは異なるもの、違和感を感じるものとの縁にひたすら飛び込み続け、そして性を追求していくのです。

そういえば、『青春の門』では、男女が一緒に飲んでセックスして、喫茶店でしきりと語り合ったりはしていますが、そこに贈り物をするという場面はまったくありません。

若者たちが、狭い下宿でひたすら抱き合っていた時代から、モノをやりとりする時代へ。私たちの社会は、たしかに一見豊かになったように見えるのですが、実際はどうなのか。

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