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74回目の原爆忌に祈りを込めて。

ここ最近、日本だけではなく世界中で落ち着かないさざ波が立っていて、少し落ち着いたと思ったら、またどこかで新しい波がより大きな脅威として生まれてくる・・・そんなことを繰り返しているように感じられる時だけに、今年は一段と「8月6日」の報が胸に染みた。

「広島は6日、被爆から74回目の「原爆の日」を迎えた。」
「松井一実市長は平和宣言で、自国第一主義の台頭で核廃絶の動きが停滞していると指摘。「一人ひとりが主張の違いを乗り越え『寛容』の心を持たねばならない」と訴えた。」(日本経済新聞2019年8月6日付夕刊・第1面)

「第二次大戦の”記憶”が風化した」というのは、自分が物心ついたときから言われていたことなのだけど、気づけばその後、1945年を起点として、その時点で過ぎていた時間の倍以上の時間が過ぎて行ってしまっているから、もはや「風化」どころか、「最初から記憶がない」人々が当たり前のように多数を占める世の中になってしまった。

自分も全く他人のことを言えた義理ではなく、例年ならこの時期は休暇前で慌ただしく過ごしていることも多かったから、次の日の朝刊で「そういえば昨日は原爆忌だった」ということに初めて気づくことも多かったし、そもそも休暇中で日本におらず、忘却の彼方・・・ということも。

3年前のリオ五輪の開会式でのエピソード*1とか、たまたま数年前に出張中の機内で↓を見て以来、どうしても終盤でモヤモヤして何度もリピートで見てしまったり・・・ということもあって、ようやく改めて意識するようになった*2というところだが、振り返れば反省すべきことの方がはるかに多い。

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物心がつき始めた頃に親の実家に行くと、「祖父が第二次大戦末期に呉の工廠で働いていて、8月6日の広島への原爆投下の瞬間の衝撃もそこで味わった。」という話を聞かされることが時々あったから、「この世界の片隅に」の中で展開されている世界は全く他人事ではないのだが、祖父自身は、その頃もその後も、戦争の記憶について多くを語ることはなかったし、つい先日亡くなった祖母からもついぞ話を聞くことができなかった。

・・・というか、「記憶を引き継ごう」という動機すら持たないまま、身近な”語り部”を失ってしまった、というのが現実で、そこだけはどんなに後悔してもしきれない。

自分は、中学・高校の多感な時期に湾岸派兵をめぐって日本がスポイルされていた状況を肌で感じ、冷戦終結で世界秩序が生々しく変わっている最中に周りの学生と議論を戦わせていた人間だから、多国間の外交関係にしても安全保障にしても、どちらかと言えば現実主義の方が先に来るところがあって、子供の頃は素朴に信じていた純粋な理想論や、押しつけがましい平和礼賛が苦手になった。
そして、それを口実に、どこか遠くの方からこの季節のあれこれを眺めていたところはある。

ただ、今の繁栄した日本の礎となった「記憶」が、「風化」を超えて完全に廃れる段階に差し掛かっている状況になると、「その後」はどうなるのだろう?、という、そこはかとない不安も湧いてくるわけで、それが昨今の”嫌な感じ”の世界情勢と相まって、再び自分を「原点」に立ち戻らせようとしているのかな、と思ったりもする。

あのリオ五輪から来年で4年。広島原爆忌は東京五輪の開催期間中に迎えることになるし、閉会式は奇しくも長崎原爆忌と重なる、ということで、「今度こそ黙祷を」という動きも出ているようである。

開催期間中の原爆展開催の動き*3などとも合わせ、世界中の人が注目し、世界中から人々が集まるタイミングで改めて戦争の悲惨さ、平和の尊さを伝えよう、と試みるのは本当に大事なことだし、そこはIOCが反対しようが何としてでも、と思うところがある一方で、様々な利害関係者がかかわる中でこれが単なるパフォーマンスに貶められないことを、今は心から願っている。

そして、来年の「75回目」という区切りが敗戦を真摯に振り返る事実上最後の機会だった、ということになってしまわないように、これからできることを探していこう、と思い始めたところである。

*1:リオ五輪開会式、原爆投下時間に合わせた『粋な演出』に日本人感動…平和への祈りが広がる - NAVER まとめ、当時のエントリーは2016年8月6日のメモ - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~参照。

*2:加えて、ここ数年、東南アジア諸国に出かける機会が多く、その際にそれぞれの地で、かの大戦の記憶に触れる機会も多かった、ということも背景にある。彼らの苦難の歴史の中では「日本」の存在など一瞬のものでしかなく、それよりも欧米列強に向けられた怒りの方がはるかに大きいのだけれど・・・。

*3:五輪時 東京で原爆展 核廃絶 機運高める 広島市方針 世界中の選手らへ発信 | ヒロシマ平和メディアセンターの記事参照。

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