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『ドラッグストア医薬品不正販売』 薬局報道は、どのような未来を描くか

大手ドラッグストアチェーン2社が、不正に医薬品を販売していたと朝日新聞が報じています。
『処方箋なしで医薬品を不正販売 ドラッグストア大手2社』

ツルハドラッグ小樽店については、同じ建物内にあるクリニックが休診の際、薬局を訪れた患者に対して、処方箋が必要である脳梗塞や糖尿病などの医薬品を販売していたとのことです。
不正は2004年から2014年まで続いていたとされ、朝日新聞は薬局内で共有されていた不正販売のマニュアルを入手したとして写真付きで報じています。

親会社のツルハホールディングスは、この報道を受けてコメントを発表し、
マニュアルの存在は確認できていないが、医療機関が長期間休診する際に事前に医師から指示を受け、休診明けに患者が医師から処方箋をもらうことを条件として販売したもの
と説明しています。
『2019 年7 月26日付朝日新聞社による報道について』

マニュアル文書の写真からは、薬局側がクリニックの医師とあらかじめ取り決めをしたうえ、医薬品を「先出し」していた様子が窺われます。

これは、薬局側から持ち掛けたのでしょうか、それとも医師が主導し、力関係のために断ることができない薬局側が、“しぶしぶ”応じていたのでしょうか。

『朝日新聞が入手した、ツルハドラッグ小樽店のマニュアル文書』

SNSでは、多くの薬剤師がこの件について議論しています。
「朝日新聞は、いつもこのタイミング(厚労省で報酬改定の議論が始まる時期)で薬局不祥事を報道する」
「薬局主導でこのようなハイリスクな行為をする理由がない」
「糾弾するのは簡単だが、患者が服薬を中断するのは危険。薬剤師による処方継続・リフィル処方箋(複数回利用できる処方箋)などの対応策を検討すべき」
といった意見がみられました。

【処方箋医薬品を処方箋なしで交付できるのは「大規模災害時」のみだが…】

医師が処方する『医療用医薬品』には、
処方箋医薬品 : 医師による処方を必須とする
処方箋医薬品以外の医薬品 : 医師の処方が原則だが、必要な場合には薬剤師が販売可能
の二つの分類があります。「処方箋医薬品」に分類される医薬品は、医師の診察を受け、処方箋によらなければ、薬剤師は患者に交付することができません(脳梗塞、糖尿病用薬は処方箋医薬品)。処方箋なしで患者に交付できるのは、大規模災害などで医師から処方を受けることが困難な場合に限ると規定されています。

「普段から服用している薬がなくなりそうだが、通院しているクリニックが休診している。薬だけもらうことはできないか」

と相談された際の、薬剤師側の模範解答は

『(休暇中の医師に連絡を取り、診察を依頼する訳にもいかず)休日診療所・救急医療を実施している医療機関を紹介し、受診して処方箋をもらってくるよう促す』

といったところです。

【朝日新聞のジャーナリズムは、どのような未来を描こうとしているのか】

ツルハドラッグの行為は、確かに違法です。
朝日新聞からの指摘を受けてツルハは保健所に連絡し、立ち入り検査を受けています。今後、業務停止等の処分を受ける可能性があるのでしょう。

さて、朝日新聞の報道は今後、どのように展開することになるでしょうか。またこのニュースから、私たちはどのような教訓を学ぶべきでしょうか。

来年の報酬改定に向けて、厚労省での議論は今後、活発化します。
その議論の中で、「朝日新聞が報道したように、薬局の不祥事が止まらない。調剤報酬は減額すべきではないか」との意見が提起され、薬剤師委員を除く全ての委員が同調する展開につながるのでしょうか(近年では、これは恒例の展開です)。

あるいは、朝日新聞はこの件についての調査を続け、医師がどのように関与していたか明らかにした上で、「医師は薬剤師に指示を与え、監督する立場にあった。医師の責任は重かった」と報じることになるのでしょうか。それとも「そんな続報を打つ訳がないだろう。報道した“意味”がないじゃないか」と考えるでしょうか。
今回の事案については、法律で禁止されている「無診察処方」に関する事案でもあるだろうと思います。報道記事では、言及はありませんでしたが。

担当する患者から、「手持ちの薬がなくなってしまったが、通っている病院が休診中だ。何とかしてもらえないか」と相談されることは珍しくありません。その度に私は、次のようにコメントしています。

『申し訳ない。私は薬剤師なので、〇〇さんが普段服用している薬を中断すべきではないことはよく分かっています。このような時、せめて数日分だけでも薬を提供すべきだし、それが可能になるよう速やかに制度を整えるべきだと思っています(現に、カナダの多くの州ではそれが可能です)。残念ながら、日本ではそういった方向に進む気配もなく、メディア報道も迷走しています。嘆かわしい状況だと思っています。→上記模範解答に続く』

実際のところ、服薬の継続を諦める方は少なくありません。

HPVワクチンの事例を挙げるまでもなく、メディア報道は事象をどのように切り取るか、またどのように論じるかで、世論や政策決定に大きな影響を及ぼしています。

朝日新聞に対し、何らかの働きかけ・圧力はあるのか?
何らかの忖度を伴って記事が作成されてはいないか?

などと詮索する気はありません。大手報道機関に相応しい報道をすべき、などと改めて批判されるものでもないでしょう。

今回、朝日新聞が報じた2件の不正のうち、このブログで触れた1件は2014年までの出来事、もう1件については、2年も前にすでに他メディアが報じた内容です。そのような事案を、あえて今回のような切り取り方で報じるのですから、担当記者のみならず、組織としても明確な意図・ビジョンを伴っているものと思います。

朝日新聞には、日本の主要な報道機関に相応しいジャーナリズムを提示して頂きたいと考えています。
今後の展開を注視しています。

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