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“表現の不自由展”中止は「テロに屈した悪しき前例」 主催者に求められた“物議の先”の戦略



 愛知県で開かれている芸術イベント「あいちトリエンナーレ」で、従軍慰安婦を想起させる少女像などを扱った企画展「表現の不自由展・その後」が中止となった。

 この企画展は、「表現の不自由展・その後」と銘打ち、各地の美術館で展示されながら抗議などで撤去された作品を集めたもの。実際に少女像を鑑賞したジャーナリストの綿井健陽氏は、「少女像は直接見に行って、隣に座ったり直接触ってみたりすることによって、非常に印象が変わると思う。こちら側が見るというより、少女像からこちらが見られている。日本社会が見られているような、そういった印象を受ける。今の自分が生きている日本の社会で、いったい何が拒まれているのか、拒否されているのかが非常によく分かる」と話す。



 また今回、「焼かれるべき絵」と題された展示も問題になった。昭和天皇とみられる肖像の下半分が燃え落ち、顔の部分も焼かれたような作品だ。この作品は、富山県の美術展で出品された作品への検閲事件を契機に生まれたものだという。

 それぞれの作品への反発は予め想定できたはずだが、なぜ今回の企画展に至ったのか。芸術監督を務めた津田大介氏は2日、「撤去された実物とともにその経緯を来場者が鑑賞することで、非常に議論が分かれる“表現の自由”という現代的な問題に対して、その状況に思いを馳せどこまでが許されるのか。そのことを議論するきっかけにしたい、その問題提起を行いたいということがこの展覧会の趣旨」と説明。また、殺到する抗議については「日本が自国の現在または過去の負の側面に言及する表現が安全に行えない社会となっていること。それをこうやって内外に示すことの意味をよくお考えいただき、自制的に振る舞っていただくことを期待している」とした。



 この作品を鑑賞して憤りを見せたのが、名古屋市の河村たかし市長。河村市長は展示中止などを求める抗議文を愛知県の大村秀章知事宛てに提出。脅迫もあり安全のため中止を決断した大村知事だが、きょう午前の会見では「河村さんは市長で、予算を出す権力者。公権力を行使される方、公権力を持った方が『この内容はいい。この内容は悪い』と言うのは、憲法21条にいう『検閲』に捉えられても仕方ない」と意見する場面もあった。



 これに対し、河村市長もきょうの会見で「表現の自由というのは憲法21条に書いてあるが、ご承知のように『絶対的に何をやってもいい自由』ではない。思想信条の自由はそう言われているが、表現の自由は一定の制約があるかと」「堂々と展示すると『名古屋と愛知県は認めたのか』と。国の補助金も入っている、国も韓国の主張を認めたのか、やっぱり従軍慰安婦ってあったのか。そういう風にみられるんじゃないか」と見解を述べた。

 今回の企画展の中止が“表現の自由”にどのような影響を与えるのか。AbemaTV『けやきヒルズ』は現代アートと社会の関係に精通する千葉大学教育学部の神野真吾准教授に話を聞いた。

 神野氏は、津田氏が「物議を醸すことに意味がある」などとした見解について、ハフポストの取材に対し次のように答えている。



 「現今の朝鮮半島と日本との関係を考えれば、『少女像』がアートの文脈ではなく政治の文脈で取り扱われることは誰でも想像できること。それを踏まえた上での『物議の醸し方』でないのなら、主催者側はあまりにも浅はか」

 また、公的な資金が使われていることに対する批判があることについて、「ふさわしくないとは思わない。反日を叫ぶ人たちには他社の価値を認めない不寛容さがあると言えるが、現代アートにおいて、その社会的価値は寛容性を醸成することに重きが置かれている」とした上で、展示を中止した対応に「不寛容な態度に完全に屈したことになる。このままで終われば、表現の自由をめぐる昨今の状況を鑑みるなら大変に残念であり恐ろしいこと。そしてそれは結局のところ、アーティストたちへの裏切りにもなる。扇情的内容で関心を引くような日本的なジャーナリスティックの文脈で遂行されてしまったのか?という忸怩たる思いが拭えない」と苦言を呈した。

 そうした中、表現の自由の下で作品に傷つく人もいたのではないか。『けやきヒルズ』の質問に神野氏は、「冷静に捉えられる環境が作られていなかった」と指摘する。

 「例えば、自分の肉親の写真が燃やされた時、その肉親が社会的に大きな影響を与える発言や行為をしていたとして、そういった文脈の中の一部として表せられることはあり得る。それを直接的な感情で受け取るのか、作品の一部を構成しているものとして見られるのかはとても重要。そのためには冷静に捉える感情が必要で、今回は少女像が平和の象徴として受け取られる可能性、向こう側にどういう意味を持つのかというところに到達する環境が作られないことは明らかだった。少女像の展示についてもう少し議論するべきだったのと同時に、展示したことによって引き起こされる議論をどうリードするのかという戦略までもセットとしてあるべきだったと思う」



 では、主催者側はどのような対応が求められていたのか。「ひとつは、展示する内容に関してチェックするということ。これは検閲ということではなく、何のためにこのセンセーショナルな作品を展示するのか、それがどのような議論を巻き起こしていくのかを考えた上で、きちんと企画すること。もうひとつは、一旦やると決めたからにはガソリンで火をつけるといった脅し、テロに簡単に屈しないこと。それに応じて変えるということは、単に1つの事例ではなくて、広範囲における悪しき前例を作ることになる。会期は長いので、展示をどのように継続するのか、当面見合わせるのかなどを議論することも、重要な選択肢としてあるべきだったと思う」とした。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

▶【映像】『表現の不自由展・その後』の様子

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