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TSUTAYAが公立図書館を運営することと貸出履歴の問題について(5)

いよいよTポイントカード特有の問題に進むが、その前に、簡単におさらいをしておこう。

佐賀県武雄市が、TSUTAYAで有名なCCC社に市立図書館の運営を委託する方向で検討に入ったという。報道によれば、貸出にはTポイントカードを使用する。これに対して、高木浩光氏らが懸念を表明している。

具体的にどのような業務委託を想定しているのか不明だから以下は想像だが、プライバシー保護法上問題の少ない方から並べると、次のとおりだ。

第一に、誰がいつ何を借りたかという情報(貸出履歴)が個人情報であることに争いはない。この情報がなければ貸出業務は不可能だから、図書館の運営主体に貸出履歴を保持することが許されることは間違いない。この運営主体は地方公共団体であっても民間事業者であっても差し支えないから、公立図書館の運営を丸ごと民間事業者に委託することも、プライバシー保護法上は許される。

この点について、もと図書館司書の方より、貸出履歴は返却後直ちに削除されるべきものとのご指摘があった。図書館学上の通説はその通りなのだろうが、貸出履歴の削除を義務づける法律が無い限り、削除しなくても、法的には問題ないといわざるを得ない。もし、「貸出履歴は個人の嗜好・志向、生き方そのもので、他者のもとに残しておくべきものではない」というだけの理由で貸出履歴の削除が法的に義務づけられるなら、TSUTAYAやAMAZONは業態自体が違法になってしまう。

貸出履歴の保持が認められるなら、それを利用した図書館内でのサービス(口コミやレコメンド)なども、法的には可能だ。

第二に、CCC特有の問題として、公立図書館で得た貸出履歴と、TSUTAYAでの貸出履歴を紐づけしてよいか、という問題がある。この点については異論もあろうが、利用者にオプトアウトの機会が保障されれば、紐づけは許されると考える。

ところで、この問題は、「公立図書館」と「TSUTAYA」という「営業所」こそ異なるが、運営主体はCCCで同一、という場合だ。では、営業所が異なるうえに、運営主体も異なる場合はどうか。CCCは、Tポイントの参加企業との間で、顧客情報を共同利用しているが、公立図書館における貸出履歴も、共有する顧客情報に含めてよいか。これが第三の問題であり、Tポイントカード特有の問題である。

T会員規約」(←なんで字が薄いんだ?)によると、T会員の「氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、電子メールアドレス等」と「ポイントプログラム参加企業における利用の履歴」等の個人情報は、「会員のライフスタイル分析」等の目的のため、「ポイントプログラム参加企業」との間で、「共同して利用」されるとある。したがって、CCCが運営受託する公立図書館において、Tポイントカードを使って本を借りれば、その貸出履歴は分析・統合され、Tポイントプログラム参加企業と共有されることになる。

これについて、利用者の事前かつ明示の承諾が必要なことについては、異論のないところだろう。貸出履歴の提供を望まない利用者には、公立図書館である以上は、Tポイントカード以外のカードによる貸出が認められなければならない。なお、現在の報道によれば、武雄市としてはTポイントカードを利用しても貸出履歴が外部に提供されることはないし、懸念を持つ利用者にはTポイントカード以外のカードを利用させるとしている。

逆に、利用者が明示の承諾を行えば、貸出履歴の他事業者との共有は許されてよいと考える。それは利用者に一定の便益を与えてくれるだろうし、「ポイントがたまるだけで十分」という利用者もいるだろう。

以上で、CCCが公立図書館の運営を受託する場合と貸出履歴の問題についての考察を終わる。繰り返すが、上記の設問はすべて、運営形態の想像に基づいている。この問題は、報道が先行しているが、記者会見から推定する限り、武雄市の実務者レベルが実際に想定しているのは、CCCが職員を派遣して管理業務を行う程度のものであり、CCC自身が貸出履歴を保持するとか、TSUTAYAの貸出履歴と統合するとか、まして他事業者と貸出履歴を統合するとかは、今のところ、念頭にない可能性がある。

しかし他方、単なる人材派遣業としてのみ図書館運営に関与する意図しかないなら、TSUTAYAを運営するCCCが参画する動機は薄い。少なくとも将来的には、本稿で検討したような貸出履歴の「活用」を企図しているのだと思う。

そうだとするなら、本件は、ネットワーク・データベース社会におけるライフログ流通・統合の功罪に関して、格好の教材を提供してくれたことになる。

なお、本稿は、以前のエントリ「ライフログとプライバシー問題の法的切り分け(1)(2)(3)(4)」を応用したものなので、興味のある方は、そちらもご覧下さい。

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