

手を替え品を替え、ありとあらゆる食品に忍び込む食品添加物。「保存料不使用」を売り文句にしている食品であっても、実は多種多様な添加物が使われている恐れがある。
保存料に警戒心を持っている消費者への対策として、抜け道のように使われているのが「日持向上剤」だ。日持向上剤とは、「保存料」のように「原材料名」欄に表示されるものではなく、食品メーカーの間で使われる“業界用語”だ。
食品ジャーナリストの郡司和夫さんが解説する。
「保存料は、長期間の保存を可能にするものです。これに対し、『日持向上剤』は短期間の保存を目的に、腐敗や食中毒を防ぐために使われています。とはいっても実際のところ、消費者にとっては保存料とほとんど意味は変わりません。保存料に嫌悪感を持つ消費者の“対策”のために、食品業界で区別されているだけです」
日持向上剤として代表的なのは、「pH調整剤」だ。食品の「原材料名」表示で見たことのある人も多いはずだ。コンビニのお弁当やおにぎり、サンドイッチなど、ほとんどの総菜に使われている。
食品評論家で、『コンビニ&スーパーの食品添加物は死も招く』(マガジンランド)などの著書がある小薮浩二郎さんの説明。
「pH調整剤は、複数の添加物をブレンドしたもので、食品のアルカリ性や酸性を適度に保ち、食品の味や品質、色調を最適化する目的で使用されます。食品によっては、弾力性を持たせるために使われることも。混ぜる添加物として使用できるのは、リン酸塩、炭酸塩、氷酢塩、アジピン酸、クエン酸など34種類。
よく使われているリン酸塩は、過剰摂取するとカルシウムの吸収を低下させ、その結果、骨粗しょう症や心筋梗塞のリスクを高めるとされます」
加工食品診断士協定・代表理事の安部司さんはこう話す。
「酢酸ナトリウムやグリシンには菌の増殖を抑える効果があり、セットでよく使われます。pH調整剤は添加物メーカーが独自のノウハウで複数の添加物をブレンドしていて、何を混ぜても一括表示になるため、添加物が何種類入っているのかわからないという問題点が指摘されています」
◆強い眠気を発するものも
消費者が調べようのない複数の添加物が一気に体に入る。その影響として、「腸内細菌に影響を及ぼす恐れがある」と郡司さんは言う。
「pH調整剤は食品の細菌を殺すので、大腸の善玉菌など体内でいい働きをする菌にも作用する可能性があるといわれています。また、ソルビン酸と違って、厚労省はpH調整剤の使用量の上限を定めていません。食品が傷みやすい夏場は、pH調整剤の使用量を増やすということも充分ありえる話ですが、メーカーの裁量次第のブラックボックス。健康面を配慮すれば、基準を設けるべきです」
pH調整剤に多用される「グリシン」は合成アミノ酸の一種。郡司さんは「合成アミノ酸」の安全性にも疑問を投げかける。
「1988年のアメリカで死亡事故が起きました。昭和電工が製造した合成アミノ酸『L-トリプトファン』を含む食品を摂取した38人が、原因不明の筋肉痛症候群で亡くなった。L-トリプトファンは人が生きていくために必要な必須アミノ酸で、病気の治療にも使われますが、簡単に手に入るサプリメントや健康食品に使われていたことにより、過剰摂取したことが問題視されている。
グリシンも合成アミノ酸の1つですが、添加物として摂取し続けていても絶対に体に悪影響を及ぼさないとは言い切れません」
このグリシンについて、「睡眠導入作用がある」と小薮さんは指摘する。
「グリシンには眠くなる作用があり、市販の睡眠サポートサプリメントにも使われています。しかし驚くのは、サプリメント1回分に含まれるグリシンの量が約3gの一方で、コンビニのお弁当やおにぎり、サンドイッチなどには3g以上のグリシンが含有されている。それくらいの量を使わないと、日持向上剤としての効果がないのです」
グリシンが添加された食品を食べたことによって、突然の強い眠気に襲われ、交通事故を起こす人もいるかもしれない。
さらにややこしいのは、日持向上剤である「pH調整剤」とさえ表示しないケースもあることだ。その代わりに「酸味料」だったり、「調味料(アミノ酸等)」の「等」に含ませたりして、限りなく消費者の目から隠す場合がある。どのように表示するか厳格なルールはなく、メーカー次第。そうなると、もう消費者にはお手上げだ。
そして、最も紛らわしい添加物といえば、「ビタミン」だろう。原材料名に、「ビタミンC」、「ビタミンB1」と書いてあるのを見て、健康によさそうだと勘違いしていないだろうか。「これらは栄養目的ではない」と安部さんは言う。
「ビタミンCは酸化防止剤、ビタミンB1は日持向上剤として使われています」
それらのビタミンは野菜や果物に含まれる天然のビタミンではなく、合成で作られたビタミンだ。小薮さんがその危険性を指摘する。
「天然のビタミンCは水溶性ですが、加工食品に入っているビタミンCは合成の脂溶性ビタミンの場合もあるのです。ビタミンが食品を守るように酸化することで、食品自体の酸化を防いでいます。酸化して変質したビタミンCの安全性は、まだ明確にわかっていません。
また、梅干しの保存などによく使われているビタミンB1とは、『ラウリル硫酸塩』のこと。豚肉や大豆に含まれる天然のビタミンB1には日持ち効果はありません。安全性が議論されている合成ビタミンを、さも天然の栄養分のように表記するというのは、到底納得できません」
※女性セブン2019年8月15日号