- 2019年08月05日 15:05
電話が怖い それでも「働く」をあきらめない
2/2就職支援のセオリーとしては、カウンセリングで悩みを整理したり、「コミュニケーションセミナー」で課題をやわらげていく、小集団のかかわりのなかで不安を解消し、履歴書作成や面接練習を経て、就職活動を続けていくことになる。
しかし、彼女には特技があった。それがアクセサリーを作ることだ。私はアクセサリーについて知見がないが、少なからず女性の意見を聞くと、一般的に流通する商品とそん色がないということだ。
就労支援の原点は、目の前の若者に合った「働く」をともに探す旅である。そして、彼女と職員が見つけたのが、フリマアプリを立ち上げ、彼女の商品を市場に出すというものだった。職員も彼女もやったことがないなかで、いろいろ試行錯誤をしながら同一商品を二点出した。
そして、それはすぐに売れた。彼女は追加で同じ商品を出すと、しばらくしてすべて売れた。そこから彼女はいくつかのアクセサリーを制作し、フリマアプリ上の自分の店舗に並べている。
先日、米国からの視察が育て上げネットにあった際、若者支援の現場を見学されていた方々が、彼女の商品を目にしたところ、その場で何点もの商品が購入され、彼女のもとには少なくないお金と、お客さまとのコミュニケーションが生まれた。
本日、彼女のアクセサリーは屋台に小さく並べられ、複数点が買われていった。偶然、私も彼女の商品が購入されている場面を見た。彼女はお金を受け取り、何かお客さまと会話を交わしていた。
就労支援の現場では、少しずつこのような「働く」の形を支援者と若者がともに探し、実現していく流れが出てきている。これに対して、予想通りの質問も多く受ける。
「それで安定して稼ぎ続けることはできるんですか」
いつも回答に困る。なぜなら、それはわからないからだ。安定収入につながることもあるかもしれないし、まったくうまくいかないかもしれない。そもそも本人が続けるかどうかもわからない。ただし、ひとつだけ言えるのは、彼女のようにチャレンジしてみると、「働く」に対する考え方が「雇われる」を越えていくこと、そして選択肢が生まれることだ。
アクセサリーが売れて、彼女に大きな変化があったと言う。それは、アルバイトをやってみたいと、実現に向けて自ら動き始めたことだ。
職員によると、好きだったアクセサリー作りは、「働く」の範囲ではないと他者からも、自らも考えており、雇われることができない自分に自信を失い、自尊心が傷ついていた。しかし、インターネットを通じて見知らぬ誰かが彼女のアクセサリーを希望した。それが彼女の自尊心を回復させ、失っていた自信を取り戻し、改めて前に進もうと思わせたのではないかと言う。
彼女には選択肢がある。雇われる以外の道も持っている。いま、彼女はアルバイトをするという目標に向かいながら、アクセサリーの製作販売を続けている。もう少し社会は「働く」ことを拡張して考え、それを支援の場に活かしていくことに寛容であってもいいのではないか。雇われることもいい、そして、そうでない「働く」もまたいいと思うのだ。



