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右派左派の不毛なイベントのつぶし合い

さて、慰安婦像(に酷似した像)の展示や、昭和天皇の写真を燃す(ように見える演出のある)映像を展示していた懸案のあいちトリエンナーレは、上記展示物を内包する企画展全体を中止するという結果に落ち着いたようです。以下、BuzzFeedからの転載。

3日間で終わった「表現の不自由展」、中止された展示内容とは
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/no-freedom-of-expression-exhibit

まず大前提として私自身は、かのイベントにおける当該展示自体に対しては、一切共感を持っていません。一方で、「表現の自由」の立場からはこういった芸術(と名乗る展示)も社会は許容するべきだという立場であり、今回、当該展示が中止になったことは非常に残念であると考えています。

今回のイベントに関しては、日韓の外交問題となっている慰安婦問題を象徴するかのような像が展示されたことは元より、特に昭和天皇の写真を燃やし、それを足踏みする行為があったことで、右派層の方々が相当不快感をあらわにしており、そちら方面からは「トンデモないイベントだ、中止しろ」の声で一色となりました。

ただね、個人的にはこういう「自分の気に入らない表現に対する攻撃」というのは、ホント切りがないと思うんですよね。思い起こされるのは2017年に発生した百田尚樹氏が一橋大学で行う予定となっていた講演会。同じ一橋学内で組織された「講演会中止を求める一橋生有志の会」による反対運動が巻き起こり、結果、開催中止となったニュースがありました。

一方で、その意趣返しとでも言いましょうか、翌年2018年京都府南丹市が開催を予定していた左派論客で、百田尚樹さんともよくケンカをしていらっしゃることで有名な香山リカさんの講演会が、外部からの圧力によって中止に追い込まれる出来事がありました。

百田尚樹氏の講演中止 ウラに何があったのか 一橋大の大学祭実行委の男子学生が“圧力”を語った
https://www.sankei.com/premium/news/170627/prm1706270001-n1.html
香山リカさんの講演会中止 妨害ほのめかす電話
https://www.asahi.com/articles/ASLCQ5FY0LCQPLZB01B.html

結局、こういうのって殴られたら殴り返すの応酬にしかならず、両陣営が表現の場、社会発信の場を失ってゆくだけで、すごく不毛だと思うんですけどね。「表現の自由」というのは、自分が好ましいと思う表現活動だけではなく、自分が不愉快であると感じる表現に対しても、そこに批判は向けたとしても、相手の表現行為そのものは保証するもの。基本的にはイデオロギー云々の話ではないはずなのですが、どうも右派/左派界隈では常にこの表現の自由というキーワードがイデオロギー戦争の「材料」として使われる傾向が否めません。

同様に実は、カジノ界隈でも最近似たようなことがありました。今年の6月に立教大学で予定されていたシンポジウム「ビジネスモデルとしての日本型IR」というイベントに関して、学内で大学院21世紀社会デザイン研究科所属でギャンブル依存症に苦しむ人も多いホームレス支援を長年行ってきた稲葉剛特任准教授が、「立教はカジノに魂を売るな」とするイベントに対する反対運動を起こしました。結果として立教大学側はイベントプログラムを見直しし、一部のセミナーを学外会場で開催するなどの措置に追い込まれたわけです。

このイベントの反対運動の先陣に立った稲葉剛特任准教授が、長らくホームレス問題にコミットされ、特に同氏が2017年に理事へと就任したNPO法人ビッグイシュー基金では、カジノ合法化を問題視するキャンペーンを打ってきたのも、私自身もカジノ業界側の専門家として知っています。ただ、その様な稲葉氏個人の社会活動やその専門性をもって、言論の自由、研究の自由が認められているハズの学内で行われている他の主体によるイベントを中止に追い込むような活動が果たして正当であるといえるのでしょうか。

また、上記稲葉氏のイベント反対運動を当初から追いかけ、いわゆる「火付け役」の役割を果たしたのが実は冒頭のあいちトリエンナーレの報道を取り扱ったネットニュース媒体BuzzFeedであります。BuzzFeedは、立教大学のカジノに関連するイベントに関しては当初の頃から反対派サイドにつき、これがあたかも社会問題であるかのような論調で数多くの記事を書き連ねて来ました。以下、一覧。

大学がカジノ推進のシンポジウム 「#立教はカジノに魂を売るな」と学内外から批判の声
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/rikkyo-casino
立教大学の国際カジノシンポ 豊島区が後援を取り消し「中立的な内容ではない」
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/toshimaku-kouen-torikeshi
立教大学がカジノ推進のシンポジウム共催を取り消し 内容も大幅変更
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/casino-kyosai-torikeshi
立教大学カジノ問題 文学部と社会学部の教授会が連名で総長に申し入れ テレ朝は記事全削除
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/rikkyo-kyoujukai-tvasahi

一方で今回のあいちトリエンナーレの展示に関しては、BuzzFeedは出展社サイドに寄ったイベント中止に反対する側の声を書き連ねてきているわけで、結局、メディアはメディアで「表現の自由」だとか「言論の自由」だとかの本質的な論議をすっ飛ばして、党派性に基づいてイベント開催の賛成/反対論を打っているだけであるのでしょう。

「平和の少女像」撤去の可能性も 県や実行委と調整へ 津田氏「批判する人にこそ見てほしい」
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/aichi-shoujyozou
「表現の不自由展」が中止に。平和資料館長「お金をもらったら言われた通りの表現しかダメなのか」
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/aichi-shoujyozo-2
中止発表された「少女像」展示の実行委が芸術祭側と対立し、抗議 法的措置も検討
https://www.buzzfeed.com/jp/kensukeseya/aichi-2

繰り返しとなりますが、「表現の自由」というのは、自分が好ましいと思う表現活動だけではなく、自分が不愉快であると感じる表現に対しても、そこに批判は向けたとしても、相手の表現行為そのものは保証するもの。党派性によって、常にコロコロと攻守が入れ替わるような状況自体が原則的にオカシイわけでありまして、この辺りは我々自身はもとより、それらを取り扱うメディア側のスタンスも含めて論議を深めて行きたいな、と思うところであります。

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「あいちトリエンナーレ2019」の記事一覧へ

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