このニュースには、よくわからないことが多い。「ガソリン缶を持って行く」などの脅迫をした犯人への捜索は、適正に行われたのだろうか。警察が協力して、当日の会場で持ち込み品の検査を厳重にするなどの対策は、考えられなかったのだろうか。テロの予告は、表現の自由という普遍的な価値への挑戦ではないか。それを野放しにしたのでは、「公安」を守るべき警察が役に立たなかったことになる。
今の日本で、どのようなものが「公表してはまずい」と思われているのか、私も興味があったから、会場が近くなら見に行きたいと思っていた。人間が批判の精神を持つというのは大切なことだ。情緒に流されて「進め一億、火の玉だ!」で進んだ果てにどうなったかは、育ち盛りの小学生の頭で考えても、よくわかったものだ。何かに興奮して単純な考え方しかしない人間が増えると、ろくなことがない。
この展覧会も、そんな批判精神に満ちた、すぐれた人たちが発想したものだろうと思う。テロの予告があったのなら、警察に相談して、警備を厳重にしてもらうことは出来なかったのだろうか。まさか「テロを予告されるような展示は止めなさい」とは言わなかったろうし、絶対にそんなことを言ってはならない。
問題は表現の自由を守ることであって、展示内容が刑法に触れるものでない限りは、無条件に保護されるべきなのだ。唯一の価値判断は、観客に任せればよい。
この問題で一つだけ良かったのは、これが世界に知れ渡るニュースになったことだ。なるべく早く、新しい機会を作って見せていただきたい。