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あなたの家電が知らぬ間にサイバー攻撃に加担!?5G時代に激増するサイバーリスク 総務省が異例の「ハッキング調査」 - 山田敏弘 (国際ジャーナリスト)

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5000億個の機器が危険なデバイスと化す日

総務省は来年4月から、新たに販売するIoT製品については、メーカー側に不正アクセスへの対策として初期設定のパスワードの変更を促すなどの機能を義務付ける。ただあくまで基本的な対策で、高度化するサイバー攻撃にすべて対処できるわけではない。また古くに製造された機器を使用し続ければ危険性は残り、ユーザーも機器類をすべて調べ買い替えるとも思えない。効果は未知数と言える。

そしてこの懸念を増幅させる「新時代」が到来する。日本でも20年からサービスがスタートする5G(第5世代移動通信システム)だ。5Gでは、通信速度は現在の4Gと比べて100倍、データ容量は1000倍にもなる。また今と比べものにならないくらいの多接続を可能にし、1平方キロあたり、100万台の機器を接続できる。

つまり、5Gの環境が整備されることがIoT機器を劇的に増加させる起爆剤となり、近い将来、私たちの身の回りではほとんどのモノがインターネットに接続される時代が来る。米シスコシステムズの予測によれば、30年までに、5000億個のIoT機器がネットワークに繋がれるという。

問題はIoT機器だけでない。IoTを大量に接続して管理するクラウドやサーバーなども狙われる可能性が高いと指摘されている。アカマイの中西氏は「今、IoTの機器だけではなく、サーバー側へも攻撃が向いている。IoT機器を操作する大本であるサーバーが狙われたら、一気に被害は広がる」と指摘する。

接続されるデバイスが増えれば、サイバー攻撃のリスクは比例して高まる。これまではPCやスマホにのみあった情報の在処(ありか)も増えることになる。例えば、腕時計や体に装着するIoT機器で健康管理をするケースは、今後さらに増えることになるが、そうした個人の情報が盗まれてしまう可能性もある。すべてが常時接続になると、利用者がインターネットに接続している自覚も乏しくなるし、外部からの攻撃に無頓着にもなりかねない。

欧州の元政府関係者は「今世界の情報機関は、IoT機器などから情報を拾っている。人の健康状態から経済状況、冷蔵庫の中から毎日のスケジュール、人に言えない秘密まで、すべて集めることができる。そういう情報を工作活動などに生かそうという動きが始まっている」と指摘する。

また、ネット上では、「SHODAN」などの世界中にあるセキュリティーの乏しいIoT機器を検索できるサービスが存在し、各地に設置されている監視カメラの映像などもチェックすることすらできる。パスワードなどをきちんと管理しておかなければ、容易に自分の家庭内の機器を見られるリスクは既に存在している。

政府はIoTを「第四次産業革命」の重要な要素と位置付けている。技術力を向上させるだけではなく、IoTへの攻撃の脅威から国民の生命・財産を守ることにも注力する必要がある。IoT機器に対するサイバー攻撃の実態に詳しい横浜国立大学大学院の吉岡克成准教授は、「今後は家電等に加えて、コネクテッドカーなどの自動車分野や、医療分野などにもIoT機器の活用が見込まれるが、それらの機器が攻撃された場合、人命に関わる事故が起きる可能性も否定できない。5G時代を迎え、利便性とともにセキュリティーに関する感度を真剣に高めるべき時期に来ている」と警鐘を鳴らす。

今回の総務省による調査や法改正だけでリスクが消えることはない。国、企業、個人がそれぞれ対策に取り組むことが求められる。

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