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郵便局のおとぎ噺

チリから帰り、急ぎ郵便貯金を引き出した。預けておくと何をされるやら。というのは冗談だが(こう断っておかないと本気にされかねないし)、かんぽ生命保険の不正は、「今年の夏は暑いし、怖いし」と、高齢者の時候の挨拶になっても不思議でないくらいの衝撃だった。

郵便局というか日本郵政は典型的な親方日の丸事業である。日の丸印として、上場した今でも政府の庇護下、指揮下にある。というのも、ゆうちょ銀行(銀行としての業務)、かんぽ生命保険(生命保険業務)、日本郵便(郵便業務、ネットワークとしての郵便局の活用)が一体となり、郵便局を活用している。

これらの事業拠点としての郵便局を支配しているのが日本郵政である。その日本郵政の株式の56.8%を政府が保有している。また、日本郵政は日本郵便の株式を100%保有している。先に「郵便局を支配しているのが日本郵政」と書いたのはこのことである。

さらに日本郵政はゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式の過半を保有している。日本郵政公社が民営化された当初、2017年9月までにゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式のすべてを市場に売却し、この2社の民営化を果たす予定だったものの、延期された。現在は民営化の具体的な目標が定められていない。

さらに言えば、日本郵政が保有しているゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式のすべてを市場に売却したとしても、郵便局とその従業員を使った金融商品の販売が続けられる予定である。このため、日本郵便が民営化されないかぎり(その株式が100%市場に売却されないかぎり)、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の完全な民営化はない。

今回のかんぽ生命保険の不正、不適切な契約に関して、日本郵便(その営業店である郵便局と、その職員)によって簡易保険契約(その他、提携した生命保険契約)が維持、管理、販売されていたことに注意を向けなければならない。昔の国営機関、郵便局に所属している従業員が、昔のままの、国家公務員のような顔をして契約者と接している。爺さん婆さんであれば、そして小銭さえあれば、郵便局からやって来た職員の言を信じたであろう。その言に嘘や不正が混じっているとは、普通は誰も思わないだろう。

今回の責任はどこにあるのか。販売担当の職員を抱えている日本郵便に責任の一端がある。販売を委託していたかんぽ生命にもある。

とはいえ、最大の責任は、日本郵便やかんぽ生命を子会社として抱える日本郵政そのものだろう。金融機関に対し、顧客主義と責任(7/20に書いたフィデューシャリー・デューティー)が強く打ち出される現在、日本郵政の経営陣は何を考え行動していたのか。それとも、「国営機関からの伝統を誇る我が職員は完全無欠だ」と、おとぎ噺の世界を想定していたのだろうか。職員は人の子、しっかりと販売担当に対する教育をし、チェックするのが当然の責務である。それでも不正を完全になくすことができないのだから。

もう1つ、行政の管轄が複雑なことも指摘すべきだろう。日本郵便に対する監督権は総務省にある。郵便事業を意識している。他方、銀行業務や保険業務は金融庁が監督する。2つの国の組織がにらみ合い、遠慮しあい、必要十分な監督が利かなかった。このため、今回の不正がポテンヒットとなったのだろうか。

思うに、今回の不正は、古い時代、日本の金融機関に見られかねない行為である。今は、こんな(意図するか、しないかはともかく)組織ぐるみと言われても仕方ないような大量の不正は生じえない。生じれば会社が潰れる。グループとしての日本郵政、顧客を向いた業務という意味で、日本の金融機関に周回遅れか2週遅れか・・。そんな印象を強くした。

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