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あいちトリエンナーレの慰安婦像騒動 表現の自由と特定のイデオロギーを並列したのは悪手だった【現場レポ】

「こんな不敬な映像を20分も流すのか!」

美術館に怒声が響く。

「お静かにお願いします」

「10億円の税金こんなことに使ってんのか!あぁん!」

「お静かにお願いします!!」

猛暑の折、ヒートアップしまくっているココは名古屋の中心部。

撮影:田野幸伸

8月1日に開幕した国内最大規模の芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」。多数の現代美術展の中で、一つのグループ展が賛否を呼んでいる。その催しは「表現の不自由展・その後」。

組織的検閲や忖度によって表現の機会を奪われてしまった作品を集め、当時いかにして「排除」されたのか、展示不許可になった理由とともに展示するという企画展なのだが、韓国の慰安婦像(平和の少女像)と、昭和天皇の肖像を燃やす表現が含まれる映像作品が展示されていたからさあ大変。
※「昭和天皇の写真」としていましたが、ご指摘をいただき「昭和天皇の肖像」とさせていただきました。以下本文中の「写真」を「肖像」に変更しています。

8月2日には名古屋市長の河村たかし氏も訪れ、慰安婦像の撤去を要請。多額の税金を使って、何やってんの!? という話である。

これは撤去される前にこの目で見ておかなければ! と、早朝の新幹線で名古屋に到着。うだるような暑さの中、会場へと向かった。

撮影:田野幸伸

会場は名古屋中心部の「栄駅」からすぐにある愛知芸術文化センター。昭和天皇の肖像を焼いた映像を流していると聞いていたので、会場をライトウィングな街宣車が包囲してたらどうしよう…と思っていたのだが、周囲は至って平和。セミの声が響いていた。

来場客に対する配慮が不自由

撮影:田野幸伸

10時開場の20分前くらいからチケット売り場に並び、10時20分くらいには入れた。2時間くらい待つのを覚悟していたのだが、Twitterでの盛り上がりと実際は違うらしい。

撮影:田野幸伸

展示会場の前には画像が拡散されていた「SNSアップ禁止」の注意書き。撮影はOKだけど会期中はソーシャルに上げないでね、とのこと。好意的に取ればネタバレ禁止、意地悪に取れば炎上リスクに日和ったな、というところ。記事に使うのもきっとダメだと思うのでここからはテキストのみで。

「表現の不自由展・その後」の会場に入ってすぐ、細い展示通路の壁にTVモニターがあり、そこで昭和天皇の肖像を焼くシーンが含まれる映像作品が上映されていた。

この作品が20分近くあるため、人が立ち止まって溜まっていく。細い道なので人が詰まる。「前にお進みください」という係員。「今見てるんだよ!」という来場客との小競り合いがスタート。

映像の中身の前にこの導線を考えた人は今すぐ始末書を書いてほしい。

まるで街頭テレビで力道山・木村組VSシャープ兄弟を見るような人だかり。そのころ生まれてなかったけど。映像を見ていた強面のお兄さんたちからは「不敬だ!」「こんなものに税金つかってるのか!」と怒声が上がり、再び係員と揉めはじめる。

それにしても狭い。通路を抜けると広い展示会場で、テレビなんてどこにでも置けるのに、なぜ入り口にした。前を通り過ぎるだけでじっくり見ないでほしいのかな、なんてうがった見方をされてもおかしくない。

映像作品自体は、反戦を訴えたもので、戦争の象徴として靖国神社や昭和天皇の肖像が出てくる。兵隊がたくさん死んで靖国に祀られ、戦火を表す炎の表現として、肖像を燃やすのはわからなくはない。

ただし、寿司屋で炙りサーモンするときのカセットバーナーで、昭和天皇の肖像を焼いていき、最後は燃え尽きて灰になった肖像を足で踏みつける表現は過激だ。

正直、ノンポリでお金以外に興味がない私には、「反戦」を訴える映像作品としてはそんなに無茶苦茶だとは思わなかった。…これ単体ならば。

表現の自由というより権力への抗議展

映像を見終わって奥に進むと、反米、反基地、反ヘイト、憲法9条、慰安婦のおばあさんの写真、慰安婦像、裁判になってる群馬県朝鮮人強制連行追悼碑のオブジェなどがズラリ。一番スペースを使っているのが朝鮮人強制連行追悼碑で、次が慰安婦関連。

「あっ…そういう人たちのアレなんだ…」

税金使ったイベントで特定の思想をプッシュするのは怒られるでしょそりゃ。よりによって韓国と関係最悪なこの時期に、この並べ方はクセが強すぎる。

表現の不自由をめぐる年表には美味しんぼの「福島の真実」が抗議で休載とか、原発表現で安倍政権がなんちゃらとか、甘く入ったスライダーがレフトスタンド最上段まで飛んでいく勢いを感じた。

展示作品の中には当初SNS拡散OKだったのか、作品の紹介パネルに「撮影写真・動画のSNS拡散推奨」と書かれていたものを白いテープで隠していたものもあった。

この展示でどんな議論を生みたかったのか

撮影:田野幸伸

あいちトリエンナーレ芸術監督の津田大介さんは、
「撤去・拒否された経緯とともに来場者が鑑賞することで、表現の自由を巡る状況に思いを馳せ、議論のきっかけにしたいということが展覧会の趣旨」

と声明の中で説明していたが、税金の使われ方の議論になることを予想しなかったのだろうか。

私はネットで怒っている人のように気分を害する事はなかったが、同じように習近平や金正恩の写真を燃やしたら彼の国ではブタ箱行きだろうし、そうならない日本はいい国だな、表現の自由大事だな、と思ったくらいだった。

なお、津田大介さんも抗議していたように、安倍総理の口にハイヒールを突っ込んでいる展示物は過去にもなかったとのことなので、デマツイートをRTした人は大いに反省していただきたい。


撮影:田野幸伸

ロビーで怖いお兄さんたちが運営の人にガンギレしてたけど、右も左も落ち着いていこう。

表現の自由でモザイクのない世の中へ

撮影:田野幸伸

会場を出ると、「世界コスプレサミット2019」が開かれており、広場には数百人どころではないものすごい数のコスプレイヤー。暑さのせいもあって布の面積が少ない少ない。お尻丸出しでしょそれ! なんて子も。

撮影:田野幸伸

名古屋まで来てよかった。表現の自由は素晴らしい。

チケットは事前に買っておこう

撮影:田野幸伸

あいちトリエンナーレは10月14日まで開催中。

チケット売り場が行列していたが、チケットをあらかじめ買ってきた人の受付はガラガラだったので、コンビニなどで先に買ってから来場することをオススメしたい。

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