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COBRAに見る著作権ビジネス、ホントのところ《第4回》



小寺メルマガ「金曜ランチボックス」の中の対談部分を無償公開しています。毎週金曜日発行のメルマガから抜粋して、翌週の火曜日ぐらいに公開していく予定です。

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□対談:Small Talk

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。

今月のお相手は、株式会社エイガアルライツの取締役プロデューサー、古瀬学さんにお願いしている。COBRAでおなじみの寺沢武一さんの作品の著作権マネージメントを手がけるほか、自らもソフトウェアベンダーを営むクリエイターである。

長期間愛される作品であり続けるためには、露出を続けなければならない。だが旧来のメディアの中に収まっているだけではそれはかなえられず、必ずなんらかの新しいメディアに対して、あるときは形すら変えながら露出していかなければならない。

キャラクタービジネスの特徴である、ひとつの許諾が次の利用を産むシステムをいかに回していくか。新しく作るとは違った、権利許諾でビジネスをするモデルのイマドキを伺う。

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COBRAに見る著作権ビジネス、ホントのところ《第4回》

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小寺 じゃちょっと話を戻して。物理メディアがだんだん出なくなっていくよ、って話があるわけですが。映画になれば映画になったで、当然Blu-rayやDVDは出ていくと思うんですよね。で、その中でも、物理メディアを売るというところは、やっぱり以前よりちっちゃくなっている?

古瀬 かなり大幅に小さくなっているって話は聞きます。ただ、それがイコール、ネット配信が膨らんでるということでもない。実際に見てる数でいうと移動してるでしょうけれども、ネット配信になった途端に単価がぐっと安くなりますから、収益でいうとぐっと減ってる。つまり、全体で言うと収益は減る方向に行ってる、というのは少なくとも現状だと思いますね。

小寺 露出の本数というか、観られた本数は変わらないけれども、収益率は悪くなってると。そのネットの配信もいろんなパターンがあって、アメリカだと多くはケーブルテレビで一個一個のペイ・パー・ビュー。ネットの配信の場合は、サブスクリプションサービス。

古瀬 はいはい。毎月固定でいくら、っていうね。

小寺 サブスクリプションサービスに含まれてしまうと、観られれば観られるほど一本単価の収益って薄まっていきますよね。その傾向は、日本にも入ってくるでしょうかね。

リンク先を見る古瀬 入ってこざるを得ないと思いますね。日本でもお客さん側はそれを待ってるし、自分もお客さん側としては非常にいいなと思うわけですよ。で、薄まるけれども、お客さんがコンテンツに使う時間は総量では増えるんじゃないか、っていうのが目論見ですよね。で、何よりもその方式になれば、これまで届かなかった人たちに届く、というのがすごく大きいんじゃないかな。

小寺 つまり接触率を上げていかないと、長い目で見れば広がらないので、いろんなことは許諾していこう、というところではあると。

ただ一方で、わりと古い体質の──僕はよく著作権利者側の団体の方とかといろんな会とかで一緒になったりするんですけど、そういった感じにあんまり見えないんですね。著作物をいじろうってことになると、とたんにすごく保守的になっちゃうんですよ。

古瀬 ああ、そうですよ。なぜなら、そんなことしなくても今なんとかなってるから。で、先進的な開放論者の人たちは「オープンにしていかないとこれからダメですよ」って言う。僕もそれは一定の支持もしてますけども、じゃあそうしたところで、我々のビジネスが悪くならないってあんた言えるの? っていうことに対して誰も答えられないですよね。

そう考えると、今むちゃくちゃ困ってるわけじゃないのに事態を動かして、僕らに何のメリットがあるの、ってことなんですよ。それはもう保守的になってしょうがないと思うんです。

小寺 なるほどね。それはやっぱりあれだな、コンテンツの業界によりけりですね。多分、アニメ・漫画業界は実はあまり困ってないのかもしれないですね。

古瀬 そうなんです、そうですね。

小寺 ただ、音楽業界はかなり今困ってるので、本当はもっと新しいビジネスを仕掛けていかなくちゃいけないぐらいまで来てるはずなんだけど、でもやっぱり……挑戦しにいかない傾向がどうも見られる。

古瀬さん、Appleの話はけっこう詳しいと思いますけど。ほら、自分が持ってる音楽をデータベースと付き合わせてクラウドから聴けるようにするiTunes Match? ああいうものも日本に入ってくると言われています。あれはアメリカで既にビジネスをやっていて、それが輸入って形で日本にきちゃうじゃないですか。

これまで日本は、そういうビジネスを積極的にやろうとしてなかったし、なんか著作権的な壁がありそうな感じがあって、誰も手を付けてなかった。そのへん、ビジネス的なトライアルをする側としては、リスクをどれぐらい負ってそこに挑んでいくか、新しい市場っていうのかな、ユーザー・エクスペリエンスを新しく開拓していくというところに関して、なぜ日本は保守的にならざるを得ないのか、どう思われますか?

古瀬 「なぜ日本は」。うーん、それは非常に難しいですよ。じゃ、向こうの人たちにはできたのか、ということなんだけど。ま、Appleができた理由は、音楽業界じゃないから(笑)、っていうのはあるんじゃないですかねえ。単に音楽が好きな人たちだから、ってことかな。だから、こうしなきゃいけないよ、ってことで……。「力のある部外者がやってくれた」ということなのかな? となんとなく思ってますけどね、iTunesに関して言うと。

小寺 あとは、著作権法の体系の違いがあるかもしんないですね。向こうはフェアユースがあって、ビジネス的に「こういう侵害をしないので大丈夫なはずだ」っていう枠があるので、ビジネスに乗り出しやすい、と。

古瀬 あー、でもiTunesに関して言うと、結局iTunesの勝ったポイントは、レコード会社を巻き込めたということじゃないですか。だからフェアユースというのは最初の、スタート地点の拒否感を下げるというところではうまく作用したかもしれないけど、結局そこをうまくごり押せたというか。結局「そうじゃないとダメだよ」というふうに思わせたということだと思うんですけどね。

小寺 結局はプレゼン力?

古瀬 プレゼン力って結局、お金に換算できた、ってことなんじゃないですか。

小寺 あ、なるほどなるほど。

古瀬 「これからこうなっていくけど、やんなかったらこうだよ、やればこうだよ」という、そういうことじゃないすかねえ、多分。

小寺 そういった意味では、日本では、コンテンツビジネスをがばっと変えていくような、プレゼン力がある人があんまりいないんじゃないかな、と。

古瀬 そうかもしれないですね。それこそ──クランチロールっていう会社があって、日本のアニメを向こうに配信してますけども、同じようなことを日本の会社がやってもよかったわけですよね。日本の会社が、日本のアニメをもっともっといいものをしていくためにやってもよかったんだろうけど、向こうのオタクの若者がそれをやっちゃって、今はそれなりのビジネスになっちゃった、っていう。

小寺 たとえばベンチャーがそれをやりたいとしたら、ファンディングの問題があるのかな、って気もしますね。そういうことをやるベンチャーに関して、誰もお金を出してくれない。

古瀬 そんなことないと思うんですけどね。アニメでしょ? で、「日本のアニメを海外に」っつったら、けっこうお金集まるんじゃないすか? や、無責任なこと言ってますけど(笑)。

小寺 (笑)。

古瀬 なんか変なネット系の、ソーシャルで何かやります、って言うよりも、よっぽど見えやすいと思うんだけどなあ。うーん、誰かこう、やる若者がいたら僕、参画したいんだけどな(笑)。

小寺 自分でやると言わないとこが(笑)。

■ソーシャルで儲けることの意味と是非


小寺 ま、お金の話をすると、一番最初にお話が出たように、ソーシャルのゲームのモデルというのが、今、ある意味すごく“オイシイ”ように見えるんだけど、問題も非常に大きいと思うんですよね。そういうところって、マンガ業界からすると、どういう風に見えてるんですかね。

古瀬 ええとですね……。あ、実は『コブラ』もひとつ、ソーシャルゲームとしてキャラクターを提供させてもらってます。で、いろんな問題があったりとか言われてることは知っていて、僕もスマホのアプリを出してる側からすると、「ビジネス的にちょっとあれ、どうなの?」ってところは、まあ正直に言って「ある」ので。

我々が持ってるプロパティをああいう形で出すということに対して、非常に我々も慎重に考えました。でも、やっぱり一番大きいのは、これを起点として多くの人、今まで知ってくれてなかった人たちに知ってもらえる。そういうチャンスだろう、ということで許諾しました。

ただ、みんながみんな、うちみたいにやってるか、って言うと、そうでもないと思います。ちょっと、グレーとまでは言わないけど、まだわかんないから。価値とか真価がわからないから、「出しません」っていうポリシーでやってらっしゃる作家さんとか、そういう事務所も多いと思います。ただ、常識的に考えれば、いろいろ言われてるところはだんだん健全化する方向に行くと思うので、これから増えていくとは思います。でもまあ、健全化すればするほど収益は落ちていくはずなので(笑)、「キャラクターが使われる」という状況は減っていくかもしれないですね。

小寺 なるほど。今問題になっているのは、『モバマス』とか、『ドリランド』とかのいわゆるガチャの問題ですね。あれって、そういうゲームの仕掛けですよ、仕組みですよ、ってフォーマットがあって、そこにコンテンツを型押ししてく、あてはめていくだけ、みたいな感じになりつつあるような気がするんですよね。

古瀬 ええ。そのほうが儲かる、って話ですからね。変に新しいことやるよりも。

小寺 それってある意味、パチンコのビジネスと同じじゃないかって気がします。

古瀬 や、そうですよ。我々著作権者側からすると、出し方としてはパチンコ業界と非常に近いですね。ほとんど同じようなゲームなんだけども、そこに新たな要素を加えるために我々のキャラクターを使っていただく、って意味で。

ただ物の作り手として、同じようなものばっかりで本当にいいの? とか、そういうのはもちろんありますけどね。実際には、すごく皆さんの工夫が──今景気がいいからこそいろんなトライアルをなされているみたいなので、だんだん新機軸とかも出てくるだろうし。プレーヤー、お客さんとの間のフェアな関係づくりというのがもっともっとできていくんじゃないかな、という風に思ってるし、そう期待してます。ガチャの問題というのはやっぱり、フェアじゃなさそうな感じがするからいろいろ問題が言われるわけであって、それがもっとフェアになってくれれば、まあいいんじゃないすかねえ。

小寺 『コブラ』ってパチンコは出したことあるんでしょうか?

古瀬 ありますよ。昔はですね、こういう著作権、キャラクターものとかをパチンコに出す、というのは、もうキャラクターとかの寿命が終わって、最後──つまり、他で使われなくてもいい、というときに出す、というのが業界的な常識だったんです。今はもうそんなことないですね。パチンコでいろんなものが出てる、それこそ『ウルトラマン』だって出るぐらいですから。むしろ、実入りは大きいので新たなリーチをもらって、新たな作品を作っていく、という風にする、ということですかね。

小寺 なるほどね。そういう風な見え方なのか。

古瀬 そう、そういう風に、我々としては使ってる、ということですね。だから、「おれの好きなキャラクターがパチンコになっちゃったよ……」とかそういう声もたまに聞くし、いくつかの問題が指摘されていることも理解しているんですけども、そうやって次の作品が作られてるんだよ、という風に思っていただけると嬉しいですね。



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