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不可解なIMF債発行の提言

 本日の日経新聞には、日経・CSISバーチャル・シンクタンクの政策提言というのが掲載されているのですが、ご覧になられたでしょうか?

 まあ、いろいろなことを提言されてはいるようですが‥どうも詰めが甘い、としかいいようのないものが目立つのです。

 その一つは、IMFが債券を発行して、必要な資金を市場などから調達できるようにしてはどうかとの提言なのですが、どう思われることでしょう?

 そもそも何故このようなことを提言したのか?

 「それはIMFが必要な財源を捻出することができないからよ。ユーロ危機を収束させるためには
膨大な資金が必要だけど‥欧州や日本ははっきりと資金拠出を表明しているけど、アメリカは全くお金を出さないようだし、新興国も態度をはっきりさせていない‥」

 確かに、そういう事情があるのは誰もが知っていることなのですが、でもちょっとばかりおかしいとは思わないのでしょうか?

 「IMFが助けてあげることができないと、誰が助けるの?」

 とは言っても‥

 「IMFは、困った国を助けるラストリゾートよ」

 ですから‥

 「そのラストリゾートがお金が足りないでは、IMFの役割が果たせない」

 それはそのとおりなのですが、しかし、IMFが加盟国の出資以外のお金に頼るようなことになれば、つまり債券を発行して資金調達をするようになれば、その債券を購入する人、つまりIMFにお金を貸す人が、ラストリゾートになるという変な結果になってしまうのです。

 というよりも、銀行も見放し、市場も見放し、誰もお金を融通してくれる状況にないときに、仮に
IMFを一枚かませることによって、国際収支に困難を来している国は必要な資金を調達することが
できるようになるのか?

 もちろん、そのときにはIMFという第三者が強力な保証人の役割を果たすことによって、一旦は銀行や市場から見放されたと思われた国も再び必要な資金を借り入れることができるようになるかもしれないのですが‥

 いずれにしても、そうやってIMFがしっかりとした自己資金というものを持たずに絶えず市場から
お金を調達せざるを得なくなれば‥もちろん、そのような資金は短期資金としてではなく、例えば、
償還期間が5年とか10年の中長期債を発行せざるを得ないのは当然だと思うのですが‥いずれにしてもそうやってIMFが資金を市場から調達することになれば、今度はIMF債の保有者が、IMFが融資する国の財政や経済に深い関心を持つようになるでしょう。

 そして、そうしたIMF債の保有者が、IMFが融資をしている先が全て財政内容がでたらめであり、
当該国の国民も余り勤勉な働き手ではなく、絶えずデモばかり繰り返し、またその国の政治家は
自分たちの都合ばかり述べ、お金を貸してくれた海外の銀行にさらに借金の棒引きを求めるようで
あれば、どう思うでしょう?

 仮にIMFが、今後ギリシャに対する支援のお金をIMF債を発行して調達するとしたら、当該IMF債を購入すべきかどうかと迷っている投資家は、ギリシャがいつの日にかIMFに対しお金を完済することができるのか、なんてことに大変深い関心を寄せると思うのです。

 でも、考えれば考えるほど、そう簡単なものではないな、と。だとすれば、IMFがギリシャに貸した
お金が返ってこない可能性もあるだろう、と。そのとき、自分が購入したIMF債の価値はどうなるのだろうか、と。

 そうなれば、IMF債は、格付け機関からトリプルAどころか、シングルAの格付けを付けてもらうことも不可能であるかも知れないのです。

 地上で最大の信用を誇る最後の砦のIMFが、格下げの対象になるなんて‥とほほ!

 そんなことになれば、もう笑うしかないのです。決してそんな事態を招いてはならない。だから、
IMFが必要な財源は、加盟国が力を合わせて苦しくても自力で捻出する他はないのです。

 「でも、そうは言ってもアメリカはお金を出すことができないと言っているし‥」

 どうしてもお金を出せないところは出せなくてもいいのです。しかし、IMFの投票権は、各国の出資金の額に応じて割り当てる仕組みになっているので、もしアメリカがこの先IMFに出資しないようであれば、それに応じてアメリカの投票権を低下させるだけのことなのです。

 「しかし、それはアメリカが承知しない‥」

 IMFというのはアメリカのためにあるのではないのです。世界経済が安定化するために世界の利益のために行動するのがIMFであるのです。

 今回の提言は、どうもアメリカの事情を配慮する余り、本質を忘れてしまった議論としか思えないのです。

 それにギリシャなどの問題は、何もギリシャがドル資金の調達に困っているという訳ではなく、単に域内のユーロの調達に困っているだけの話ですから、欧州中央銀行がその気になれば、どれだけでも対応は可能であるのです。

 もちろん、欧州中央銀行がユーロを無制限に発行するようなことになれば、近い将来インフレが発生することも懸念されはするのですが‥それにしても、ユーロ圏自体は、経常収支が構造的に赤字になるような体質でもない訳ですから、本来IMFに外貨の融通を頼ること自体が本当は筋違いなのです。

 その意味では、アメリカのいうようにユーロの問題は、もっと欧州自身がしっかり対応しなさいというのが適当であるのかもしれないのです。

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