- 2019年08月03日 07:16
ネトウヨも注視する番組を期待したい「news23」 - 室井實

花形のTVキャスターも大変な商売だと、つくづく思う。
小川彩佳、34歳。「結婚」を理由にテレビ朝日を退社したが、あろうことかライバル局・TBSの「news23」メインキャスターに就任した。
大抜擢にテレビ朝日は驚いたが、当のTBSのアナウンサー達も驚いた。他局の若い女子アナがメインとは、TBSのアナ達は無能呼ばわりされてしまう。
事実、TBSでは人気アナ達の昇格人事もあり、不満の声を一掃したという。
だが、当の小川自身は予想以上に大変そうである。
新聞のテレビ欄には、いつまで続くのか「小川彩佳」の名前まで載った。「NEWS」の番組タイトルも、小文字「news」に変えた。
むろん、スタジオセットもオープニング映像も変えた。新海誠のアニメーションが斬新だ。
たかだか深夜11時からのニュース番組だが、老舗番組だけに開始早々から視聴率まで云々されるのだ。
叩かれても気丈な小川アナ 明快な発言
〈地震特番で古巣のテレ朝「報道ステ」に〝勝利〟〉
スポーツ紙に一挙手一投足まで書かれる始末。小川は一躍、時の人になってしまった。
〈TBS「NEWS23」に前任者・雨宮塔子復活論〉
この記事は非情。スタートの視聴率が悪いから前任者を戻せなどと、並みの神経では書けない。
確かに、小川には嫉妬も多い。
「小川彩佳って、眼だけでなく顔もデカいな」
こういう心無い〝視聴者〟の書き込みまであるのだ。とはいえ、当の小川は気丈だ。視聴者の心無いツイッターも読んでいると言う。さらに、発言も明快。
──神奈川・保釈男の逃亡に、「そもそも覚せい剤、傷害など疑いのある男にも拘わらず、なぜ保釈したのか? 数人で出掛けながらなぜ取り逃がしたのか? 幾重にも重なる不手際に、強い疑問を感じます」
キャスターはMC(司会進行)をしていれば良いわけではない。ハッキリと発言するのは、好感。
テレビ朝日でさえ、政権に忖度しているという。だからハッキリ話す小川は「報道ステーション」から異動させられた。それでテレビ朝日を退社したと見るムキもある。
「委員の3分の1以上の要求があれば開かなければならない予算委員会を、政府はどうして開かないのでしょうか?イージスアショアの問題も、老後2000万円の問題も議論して欲しいですね。国会を軽視して真正面から向き合わないほうが、政権へのダメージは大きいと思いますが……」
そう話す小川。
コメンテーター星浩(元朝日新聞特別編集委員)への〝つなぎ〟が素晴らしい。
筑紫哲也のDNAが残る硬派な「最後の砦」に

もっとも、スポーツコーナーになり石井大裕アナが登場すると、ストレスが軽減されるのか、顔色が良い。笑みも見られる。34歳の普通の女子アナに戻る。
視聴率はキャスターだけの問題ではない。むしろ、プロデューサー以下スタッフの問題だろう。政権を忖度せず老舗の伝統を守り、辛口の特集をすれば視聴率は自然と上がる。
「『news23』といえば、リベラル色の強いTBSの中でも伝統的に硬派。筑紫哲也のDNAがまだ残っています。何故か骨抜きになった『報道ステーション』とは違いますね。同局の関口宏『サンデーモーニング』のように、ネット右翼も注視する番組になって欲しいものです」(放送担当記者)
「最後の砦23」の、小川彩佳とスタッフに期待するしかない。
室井實(むろいみのる)
フリーライター。1950年、栃木県生まれ。明治大学法学部卒。東京タイムズを経て徳間書店に入社。「アサヒ芸能」報道部、編集事業室室長、「Goods Press」編集長代理、スター・チャンネル広報部長(出向)、徳間に戻りマルチメディア企画開発、部長。ディレク・ティビー取締役宣伝部長(出向)。徳間に戻り執行役員宣伝部長を歴任。徳間書店退職後、東北新社広報室長。2011年に東北新社を退職し現在に至る。
- 文化通信特報版
- エンターテインメント業界を内側からウォッチ
特に、「月刊文化通信ジャーナル」は、映画を中心にした綜合エンターテインメント専門誌として55年の歴史を刻んでいる。特に映画系では唯一の業界専門誌として認知されている。
また、関連会社には株式会社文化通信エンターテインメントがある。文化通信社が培ったノウハウを生かしての新規事業や版権事業などを行なっている。文化通信社創立55周年の際はシンガーソングライター松山千春の自伝「足寄より」を「旅立ち〜足寄より」として映画化、さらに60周年では舞台化してきた。